じーさんず & We are

Tro

文字の大きさ
上 下
5 / 44
#2 魔導師で章

#2.1 誓いの言葉

しおりを挟む

むかしむかし、あるところに、お爺さんとお爺さんとお爺さんがいました。

最初のお爺さんは、かつて魔王と呼ばれ、好き放題な人生を送ったと聞いていますが、今はただのジジイです。

その次のお爺さんは、名前をアッ君といいます。元・勇者ですが今はただの厄介者のジジイです。

その次のお爺さんは、かつて勇者と呼ばれ、果敢に魔王に挑んだようですが見事に敗れ、その後、悲惨な人生を送ったと聞いています。今はただのジジイです。

そのクソジジイ二人が私の眼の前で、いちゃついています。アッ君はそのクソジジイ二人を見物しています。そして私は誰かって? 私は魔王です。ですが今はクソジジイの二人が目障りです。

物覚えの悪い大魔王が、また目の前のジジイを誰だと疑っています。とても手の掛かるジジイです。おっと、ここは前回と同じ、魔王城、王の謁見する部屋です。

「お前は誰だ?」
「お前こそ、誰だ?」
「俺は、大魔王だ」
「魔王じゃないのか?」
「元・魔王だ。それより、お前こそ誰だ?」
「わしを忘れたのか? まあいい。わしこそは正真正銘の勇者だ!」
「勇者だと? ハハーン、なんだ、お前、三番目の敗者だな」

この三番目の敗者、このジジイも魔王が隠居したのを聞きつけ、その隙を突くべくやってきた、しょうもないジジイです。ですがその格好、全身白装束です。白い帽子に白いマスク、白衣に白いソックスと白いスニーカ。きっとパンツの色も白でしょう。

アッ君の言うところでは白魔法剣士らしく、白魔法と剣を武器に戦うそうです。しかし、全身白装束。これは、これだけでもかなり怪しいです。いくら白魔法の使い手だろうが、その『全身白』っていうのは通報ものです。勘弁してもらいたいわ~。

「勝負だ、魔王!」
「だから俺は、今は大魔王だって」
「問答無用!」
「その前に名前くらい名乗ったらどうだ?」
「問答無用!」
「じゃあ、シロちゃんでいいな?」
「問答無用!」

シロちゃんはいきなり、白魔法を使うようです。それも奥義中の奥義のアレのようです。

「健やかな時も~、病める時も~その命が尽きるまで~」
「おい、待て! それって」
「アイヤー」

シロちゃん、掛け声と共に何かしたようですが、その攻撃を受けたような大魔王が困っております。どう反応して良いのやらと落ち着きがありません。挙動不審の大魔王です。

「アイヤー」

シロちゃんは魔法を重ねがけしてきます。威力倍増、夢一杯です。その姿はどこぞの神父か牧師か、祈りに祈っています。出来れば自分自身に祈ってあげれば良いのでは、と思っています今日この頃です。

「ううう」

どうやらやっと大魔王に効果があったようです。これで両者とも思い残すことはないでしょう。これで終わってくれれば良いのですが、すっきり顔の大魔王です。

「どうも、肩のあたりが軽くなったような」
「嘘をつくなー。お前の様な邪悪な存在に、この聖なる魔法が効かぬ訳がない!」
「思い出したぞ。お前、前にも同じ様なことをしていたよな」
「何故効かぬ。本来ならイチコロのはずが」
「俺は虫か? そもそもお前なー、根本的に勘違いしているぞ」
「まだ、ボケてはおらんぞ」
「そうじゃなくて、俺って見た目通り、普通の人だろう。悪魔でも何でもないぞ」
「今更それを言うのか! 信じないぞ」
「シロちゃーん、いい加減、目、醒せや」
「信じるものかー、さてはお前、解脱したな」
「何とでも言え。とにかくお前の魔法は俺には効かん。それに何だ? あの呪文は」
「ここまで来て、はい、そうですかと言えるかー」
「どうでもいいから帰ってくれる? もう、用事は済んだでしょう?」

シロちゃんが急に私を見つめてきます。でも私はただの見物人、あなたの宿敵は目の前に居ますよ、見えていないのですか? 気色悪いから止めてください。訴えますよ。

「おい、魔王」

シロちゃんが大魔王を指差しておきながら私を呼んでいるようです。なんというバッチイ行為なのでしょうか、不潔です。

「だから、大魔王だって」
「そこの、後ろにいるのが魔王か?」
「うん? そうだが」
「なら、そっちが相手じゃ。こんな枯れたジジイなぞ用はない。それに、あっちの方が禍禍《まがまが》しい顔をしておる。さすがに魔王だけのことはあるようじゃな」
「え! それ、言っちゃう、かな」

シロちゃんが大魔王を押し退けて私の前に来やがったです。おー怖。

「おい、魔王。大魔王とは勝負にならん。わしと勝負しろ」
「お断りします」
「問答無用!」
「キャーーー、エッチー」

シロちゃんが何やら呪文のようなものを唱えています。その術中にハマった私は……元気です。

「アイヤー」

シロちゃんが魔法を発動しました。しかしシロちゃんの様子がおかしいです。何か、そう、お酒に酔ったような、ヘベレケ状態です。ちょっとシロちゃんの視覚を覗いてみましょう。

シロちゃんの目の前に、すごく可愛い女性が見えます、見えます。重要なので二度言いました。あ、それは私です。まあ、恥ずかしい。

私の周りに光がぼんやりと光り輝いてきました。これは、後光というのでしょうか。とても神聖な感じがします。それに見とれるシロちゃんです。気持ち悪いです。

おっと、私の後ろから女神様のような方がお出ましになられました。なんと神々しいのでしょうか。その方は優雅に、シロちゃんに手を差し伸べています。どんな人でも救済される、そのお心遣い、私にも分かります。その女神様の手を取ろうとシロちゃんが近寄ってきました。嫌! 来ないで!

ああ、私の気持ちが女神様に通じたのでしょうか。女神様はその手でシロちゃんの頬を、ブチます。ブチブチブチブチブチブチブチ。連打です、超高速連打です、クリティカルヒットです。

これでシロちゃんはノックアウトです。遥か彼方まで吹き飛んでいきました。しかしその顔は『幸せ』そのものです。良い冥土の土産が出来ました、良かったですね。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

ゴブリンに棍棒で頭を殴られた蛇モンスターは前世の記憶を取り戻す。すぐ死ぬのも癪なので頑張ってたら何か大変な事になったっぽい

竹井ゴールド
ファンタジー
ゴブリンに攻撃された哀れな蛇モンスターのこのオレは、ダメージのショックで蛇生辰巳だった時の前世の記憶を取り戻す。 あれ、オレ、いつ死んだんだ? 別にトラックにひかれてないんだけど? 普通に眠っただけだよな? ってか、モンスターに転生って? それも蛇って。 オレ、前世で何にも悪い事してないでしょ。 そもそも高校生だったんだから。 断固やり直しを要求するっ! モンスターに転生するにしても、せめて悪魔とか魔神といった人型にしてくれよな〜。 蛇って。 あ〜あ、テンションがダダ下がりなんだけど〜。 ってか、さっきからこのゴブリン、攻撃しやがって。 オレは何もしてないだろうが。 とりあえずおまえは倒すぞ。 ってな感じで、すぐに死ぬのも癪だから頑張ったら、どんどん大変な事になっていき・・・

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

治癒術師が前衛なのはマズいですか?

れもんぱん
ファンタジー
〜追放されたレベル241の唯我独尊治癒術師は、仲間とともに「最強」のギルドをゼロから目指します〜 公開の頻度は気分です。

《鍵》から始まる《餞》までの物語

一花カナウ
大衆娯楽
【あなたを求める場所にお連れしましょう】 小箱に入っていたのは鍵と一枚のメモ。 鍵は必ず何処かへと導いてくれる。その行き先は―― #novelber 2021参加作品のまとめ。Twitter、カクヨム、ノベルアップ+でも掲載中。

処理中です...