ものぐさ令嬢は帰りたい

中綿げにを

文字の大きさ
上 下
8 / 11

6話 ログボの時間は朝の4時

しおりを挟む
眠ったと思うじゃない?残念でした起きてます。
私としてももう寝たいのですけれど、スキルのことを思い出してしまいまして。

まぁ面倒なので布団からは出ませんけどもね。エリーナがサイドテーブルに手帳とペンを置いてくれたのよ!実家の部屋と同じスタイル。これで布団から出ずともメモが取れますわ~~!あの子なんだかんだ言って私が生活しやすい環境を整えてくれるのよね。私が落ち込んでいる時は塩対応だけれども。

それはおいといて。私のスキル「ものぐさの友合理主義」でしたわね。
ものぐさの友って一体どういうことですの?キフィ嬢も言っていたように「合理主義」自体は領地経営者や文官に多いスキルですが、「ものぐさの友」とは恐らく異なるものよね。同じものなら偉い人はみんな面倒くさがりさんってことになってしまうわ!でもどうなのかしら。そもそも世間で知られている合理主義スキルの読み方だけが浸透している可能性もなくはないわね。なんてったって保持者が文官や領主ですもの。あっ、お父様への手紙に聞いてみればよかったわね。

うーん……キフィ嬢には思い当たる節はないとは言ったけれど、確かに私は領地を適度に潤わすお手伝いを致しましたわ。この「適度に」というところが難しくて、当時は苦労致しましたわ~。下手に発展させ過ぎますと王家に目をつけられたり、神童と言って祀りあげられたりと、面倒なことになる予感しかしなかったのですものね。おかげで今尚、安定的にそこそこの収入が得られているそうですわ。

「……まさか、そのさじ加減を見極める能力が私のスキルだったり?」

だとしたらモブライフを送るにはうってつけでございますわね!
大変地味なスキルですが。

そういえば前世のゲームで、カルファは何事もなく魔法を使っていたからと安心していたけれど、精神健康診断ってどのようにやるのでしょうか。サイコパス判定を受ける事だけは避けたいわぁ。ま、あの神は原作通りに事が運ぶのをよしとしているから、そこは大丈夫でしょう。



あら、いやだわ。空が白んできておりますわ。
今から寝てしまったら確実に遅刻してしまいますわね……

「領地だったらジョゼットに乗って一走りしておりましたのに」

そう、ここは学園。愛馬のジョゼットはおりませんの。連れてきても良かったのですが、如何せん我が領地は遠く。厩も他家と共同でございます。慣れない土地でストレスを抱えられても困りますので領地へ置いてきてしまったのです。

どうしましょう~暇ですわぁ。

ーーコンコンコン

「エリーナでございます。朝のお支度に参りました」
「どうぞ~」

ちょうどいいタイミングでエリーナが入室してきました。エリーナったら今日はちょっと早いのね。

「お嬢様起きるの早すぎませんか」
「エリーナこそ」
「本日から授業が始まりますので、お嬢様を早めに起こさねばと思ったのですが……」
「何だか目が覚めてしまって」

流石に初日から徹夜したなんて言えないわ。

「起こす必要が無かったですね……と言いたいところですが、お嬢様」
「な、なぁに?」
「まさか一睡もしていない、ということはございませんよね?」
「え、えぇ!流石に少しは寝たわよ!」

流石エリーナ、鋭い子ね。ジト目でこちらを見ると態とらしく大きな溜息をつくエリーナ。
きっと寝てないのバレてますわね。でも何も言われないところを見るとお咎めはなさそうね!よかったわ。
ホッとしていると、エリーナがこちらをじっと見つめている。いつもならすぐに朝の支度で動き回るはずなのに。

「な、なに?」
「仮に、仮にお嬢様に監視がつけられるような事があっても、私が責任持ってお嬢様の面倒はみますのでご安心ください」
「どうしたの急に……」

もしかして精神健康診断が不安で寝られなかったと思われておりますの?

「お嬢様時々様子がおかしいですから、念の為にと思って」
「エリーナ、あなたほんとそういう所よ」
「……いつも通りで安心いたしました」

全くそう思っていないような口ぶりで彼女はそう言いましたわ。でも私、見てしまったの!
エリーナの口元に笑みが浮かんでいたのを!やだ、本当に心配してくれてたのね。ホッとして笑みが溢れるなんて、エリーナも可愛いところあるじゃない。私の顔は自然と綻んでおりましたわ。

「ニヤニヤしていないで早く御顔を洗って下さいませ」

次の瞬間にはいつも通りのエリーナだったけど、私は大満足。ニコニコと朝の支度を終わらせました。

「あぁ、そうでした。お嬢様」
「なぁに?」
「こちら、今朝早くお嬢様宛に届いていたものなのですが……」

身支度を整えた後、そう言って渡されたのは小さな箱。パールグレーの紙箱に青いリボンがかけられた箱は見覚えのあるものでございました。まさか、いやまさかね……

「送り主不明ですが害があるものではございませんでした」
「何が入っているのかしら?」

不思議に思いつつ空けると、そこに入っていたのはなんと、刺繍が施されたクッションに乗った小さなジュエル。
このコーヒー豆のようなジュエル、見覚えしかございませんわ。
そう、ログインボーナス!!!!まさかのログインボーナスでございますわ!
私も貰えますの?一体何故???
ジュエルをよく見れど何も分かりませんわね。もしかして箱の方に何か……

「あぁ!!!」
「如何致しましたかお嬢様」
「これ!きっとキフィ様からだわ!クッションの刺繍と制服の刺繍、模様が同じなのよ」
「同じ模様だからと言って決めつけるのは早計では?」
「それに、彼女のスキルは鉱物錬成よ!きっと彼女のサプライズに違いないわ!何か御礼しなければね!」
「……でしたらこちらの茶葉で如何でしょう」

エリーナはイマイチ納得がいかないようでしたが、お礼の相談にはきちんと乗ってくれましたわ。
確かに茶葉ならそのままお茶会も出来ますものね。モカ嬢を誘って3人でお茶会も良さそうですわね!

「エリーナ」
「トモニーさんにお好きなお菓子をお聞きしておきます」
「助かるわ。それと、念の為モカ嬢の好みのお菓子も聞いておいて貰えるかしら?」
「かしこまりました」

侍女が有能過ぎて有難い限りですわ。もう少しだけ笑顔を見せてくれたら完璧なのだけど。
さて、初日!本日のイベントは確かターキッシュ・オウフロア様との出会いイベントでしたっけ?
休み時間までは気を抜いても良さそうね!
深夜テンションも相まって、私は元気よく学び舎へと向かいます。
今日はどんな1日になるのかしら。楽しみだわ~~!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

前世では番だったかもしれないけど…

吉野 那生
恋愛
彼を初めて見た瞬間、雷に打たれたような気がした。 頭の中に流れ込んでくる前世の記憶。 ——なぜ、今まで忘れていたのだろう? 『ノール!』 そう呼びかけた私に、彼は冷たい眼差しを向けた。 * 「始まりの聖女」のアカリとノールが、誰もが宝玉を抱いて生まれてくる世界に生まれ変わり、また出会うお話です。 「始まりの聖女」をお読みになられてから、こちらをお読みいただく事をオススメします。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

【完結】彼女は2回目の令嬢を辞めたい。

恋愛
公爵令嬢シーナは、前世が社長令嬢だったことを18歳の誕生パーティーで思い出す。 「そんな…また令嬢なんて、無理!」 社長令嬢としての煩わしさから解放されたと思ったら今度は公爵令嬢…シーナは絶望した。 シーナはなんとか令嬢から脱却したい。 目指すのはモブ!!平民として穏やかに暮らすの!! そんなある日、平民の青年ジェーンと出会い、シーナは一目惚れをする。 ※設定ゆるいです ※三話で完結です ※色々すっ飛ばして終わります

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

処理中です...