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【閑話】ダニエル・グラニューの苦悩
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こんにちは、ダニエル・グラニューです。グラニュー男爵家の長男です。あっ知ってる?そうだよね。初日からロースト殿下に名前呼ばれた上に無茶振りされたからね……
えっと、一応家督を継ぐことにはなっているんだけど、今のところ学園で婚約者を探すのはちょっと難しそうだから、家を継げるかもちょっと怪しいかなぁ。
あの日、ロースト殿下にお声をかけられてから、僕の毎日は急変したんだ。殿下やベルビット様が僕を気にかけてくれることはとても嬉しいけど、うん。なんていうか。うん。僕、お嫁さん見つけられないかも。
……だって僕、あんなに怖いご令嬢方と人生を共にするなんて無理だよ!!!
殿下やベルビット様をね、遠くから眺めていた頃はね。見目麗しく権力のある方々は羨ましいなぁなんて思っていたんだよ僕も。かわいい女の子たちににキラキラした目で見て貰えるだなんて!って。
でもね、あの瞬間、僕は今までに感じた事がない殺気に動けなくなってしまったんだ。
それは忘れもしない、入学式の日。君も知ってると思うけど。キラキラと、それはもう良い笑顔でこっちを見た殿下がこう言い放ったんだ。
「ねぇ君、申し訳ないんだけど、ヴィーの面倒見てくれないかな?」
あの時の空気の凍りつき方と言ったら……あれだけ憎悪にまみれた視線に晒されて失神しなかった僕を褒めて欲しいよ!!!!
ご令嬢って生き物があんなに怖かっただなんて、僕知らなかったよ……助けてお爺様!
「親みを込めてダニエルと呼ばせていただこうかな。」
拝啓お爺様、僕はこの学校でうまくやっていける自信がありません。
その日の夕方。場所はなんかとっても豪華なお部屋!寮からちょっと離れたその場所は殿下の執務室なんだって!僕目眩がするよ。ねぇお爺様、一体何が起きてるの?
ベルビット様の令嬢避けとして1日を終えた僕。殿下の無茶振りに1日耐えたベルビット様。
殿下の執務室で何故か2人でお茶飲んでます。
僕より酷い顔してた従者は寮に先に帰したから、泣きつく相手も居ないんだ。僕の好きなお肉焼いといてね!って言ったけど、多分お父様とお爺様に報告書書いてるだろうから無理だろうな……。
「ダニエル」
ベルビット様まで僕のファーストネームを呼ぶようになってしまった。僕、やっぱり明日死ぬんじゃないかな。きっとご令嬢に撲殺されるんだ。
「その、なんだ。ローストが無茶を言ってすまない」
今思えば僕はあの時どうかしていたんだと思う。
多分、いや絶対あの時叫んでしまった事が今後の人生を変えてしまったんだ。
「そう思うなら巻き込まないでくださいよぉぉぉぉ!!!!」
「……申し訳ない」
「うわぁぁぁぁぁご令嬢怖いよぉぉぉぉぉぉ!!」
「……心から同感する」
「やぁ!随分楽しそうな話をしているね?」
突如現れた第二王子殿下!今日ずっと思ってたけどこの人なんなの?いつもどこからともなく沸いて出てくるんだよ!!怖いよぉぉ。
「沸いて出てくるって、虫みてぇだな!」
「あはは、心外だなぁ」
「ヒィッッ!!ご、ごめんなさぁぁぁい」
同じく沸いて出て来たオウフロア様が変なこと言うから、第二王子殿下が不機嫌になってしまわれたじゃないか!
って思ったけど、しまった声に出ていたみたいだ……冷静にならないと。
ていうか、ずっと思っていたんだけど、オウフロア様声大きいよね!!急に大きい声出されると心臓に悪いからなんか合図してほしいな!耳栓するからさ。
「同感だ、タークの声は大きすぎる」
「悪かったな!」
「ハッ!もしかして僕また声に出してました?」
「あぁ」
ウワァァァごめんなさぁぁいオウフロア様!お願いだから斬らないで!!!
「ヴィー、ダニエルにも防音魔法教えたら?」
「あっ大丈夫です第二王子殿下。耳栓って防音魔法の事なので」
僕がそう言うとベルビット様と第二王子殿下は顔を見合わせて頷いたんだけど、何?何なの?オウフロア様はなんかニヤニヤしてるし。えぇぇぇ嫌な予感しかしないよぉぉぉぉ。
「ところでダニエル、この書類なんだが」
「それ、僕に見せちゃっていいやつなんですかっていうか見たく無いです嫌な予感しかしないので!!!!!」
ベルビット様が徐ろに見せてきた書類。勢いよく目を逸らしたけど"機密"って文字見えたよ。これ学園のやつじゃないよね?やだよそんなの見たくないよ国家機密に触れて首が飛ぶとか嫌だよ!僕は家督を継いでこじんまりと生きていたいんだよ!お爺様のような暮らしが理想なの!だからね、僕ね、もうそろそろ帰りますね!!って勢いよく立ち上がったんだよ。でも、現実は無情だよね。
「まぁまぁ座りなって」
椅子の後ろに立ってたオウフロア様にね、肩を掴まれて椅子に座らせられました!!痛かった……力強い……脳筋怖いよぉぉぉぉ。魔法使ってもこの人達から逃げるのとか絶対無理じゃん?全力で逃げようと思ったのに脳筋め……「グッドラック!」って爽やかに言われても困るんだよぉぉぉ!
「で、ダニー」
なんかアダ名つけられたんですけど!!!もう本当に辞めてください僕のメンタルは風前の灯火だよ……
「この書類、チェックしてくれるかい?」
勿論やってくれるよね?って笑顔の圧力辞めてもらっても良いですか?それもう命令ですよね?王族の圧力怖いよ!第二王子殿下は知らないかもしれないけど、心から楽しそうにしてるのが余計にタチ悪いって言われてるんだからね!ベルビット様に!
ハァ~もう命令されたら見るしかないじゃないかぁ。僕は涙目になりながら書類に目を通したよ。帳簿だった。国税の帳簿だった。しかも毎期微妙にズレてる!!微妙にって言ってもまとまると結構な額だよね。そう!横領の証拠だね!!
「殿下ぁぁ収支の合わない書類なんか見せて何がしたいんですかぁぁぁ!」
ズレてる箇所と筆跡からして多分書類は途中で改ざんされてるっぽいし!!コレ書いてあるのよりももっと掠め盗られてるよね!も~~~~国の偉い人の不正の証拠見せて何がしたいんだよ第二王子殿下は!!
「へぇ、すげぇなダニエル」
「うん、やっぱりダニーはヴィーの良い腹心になれそうだね!」
「やはりそれが目的か」
流石にベルビット様だけだと殿下の執務補助の手が足りない、というか学業でベルビット様の胃がストレスで大変なことになっちゃうから、ストレス軽減しつつ一緒に仕事できそうな人材を探してたんだって!ベルビット様の胃を労わるなら第二王子殿下が無茶振りするのやめれば良いだけじゃないですか!っていうかそれにしても何で僕に目を付けたんだよ!!他にももっといたでしょ!?
「しっかし、爺さんの戯言も偶には役に立つんだな~」
「あぁ、タークのお爺様とグラニュー元男爵が呑み友達でよかったよ!」
オウフロア様にお礼を言ってる殿下、めちゃくちゃ良い話に纏めようとしてますけど!原因お爺様だったのぉぉぉぉ!予想外の裏切りなんですけどお爺様……えってことは待って、あのウチによく来てはお爺様とお酒飲んでたおじさんってもしかしてあの歴代最強と謳われた前騎士団長のコーディ・オウフロア様だったの???ただの気さくなおじさんだと思ってた……おじさんって呼んでたけど僕大丈夫かな。
「爺さんは喜んでたぞ?」
「アッそれなら良かったです」
「と、言う訳でおめでとうダニー!君は3年次に生徒会役員になるからね!」
パチン!と星が飛びそうなウインクをした第二王子殿下。ご機嫌にそう言われても僕は絶望的だよ……だって、だってさぁ。僕みたいなのが?殿下達と一緒に?仕事をする?もう完全に妬み僻みで虐められる気しかしないじゃないかぁぁぁ!
「ご令息方からも身を守らなきゃなんて嫌ですよぉぉぉぉぉ」
殿下がしれっと作っていた防音魔法のおかげでね、一連の会話は外に漏れることはなかったんだ。王族ってすごいね。僕、これからどうなるんだろう。ご令嬢から刺されるだけじゃなく、王家と繋がりが欲しいご令息にまで睨まれちゃうじゃないか。あーあ、貴族のともだち、欲しかったなぁ。遠い目をする僕にベルビット様は「色々と諦めろ、そしてよろしく頼む」と申し訳なさそうに言い、オウフロア様は「出世コースだなダニエル!」と笑いながら背中をバシバシ叩く。とっても痛かったから僕泣きそうになっちゃったよ。
まぁそんなこんなでご令嬢もご令息も恐怖しかないって感じでね。でもね、ご令嬢よりもご令息の僻みよりも怖いのは、実はロースト殿下の無茶振りなんだよね……。それを本当の意味で思い知るのはもう少し先のお話。機会があったらまたお話しするかもしれないけど、あんまり聞かない方がいいかもよ?
うんうん。そうだねぇ、ロースト殿下に気に入られて何かと粘着されてる聖女様たちには、頑張って生き延びて欲しいなぁ。
えっと、一応家督を継ぐことにはなっているんだけど、今のところ学園で婚約者を探すのはちょっと難しそうだから、家を継げるかもちょっと怪しいかなぁ。
あの日、ロースト殿下にお声をかけられてから、僕の毎日は急変したんだ。殿下やベルビット様が僕を気にかけてくれることはとても嬉しいけど、うん。なんていうか。うん。僕、お嫁さん見つけられないかも。
……だって僕、あんなに怖いご令嬢方と人生を共にするなんて無理だよ!!!
殿下やベルビット様をね、遠くから眺めていた頃はね。見目麗しく権力のある方々は羨ましいなぁなんて思っていたんだよ僕も。かわいい女の子たちににキラキラした目で見て貰えるだなんて!って。
でもね、あの瞬間、僕は今までに感じた事がない殺気に動けなくなってしまったんだ。
それは忘れもしない、入学式の日。君も知ってると思うけど。キラキラと、それはもう良い笑顔でこっちを見た殿下がこう言い放ったんだ。
「ねぇ君、申し訳ないんだけど、ヴィーの面倒見てくれないかな?」
あの時の空気の凍りつき方と言ったら……あれだけ憎悪にまみれた視線に晒されて失神しなかった僕を褒めて欲しいよ!!!!
ご令嬢って生き物があんなに怖かっただなんて、僕知らなかったよ……助けてお爺様!
「親みを込めてダニエルと呼ばせていただこうかな。」
拝啓お爺様、僕はこの学校でうまくやっていける自信がありません。
その日の夕方。場所はなんかとっても豪華なお部屋!寮からちょっと離れたその場所は殿下の執務室なんだって!僕目眩がするよ。ねぇお爺様、一体何が起きてるの?
ベルビット様の令嬢避けとして1日を終えた僕。殿下の無茶振りに1日耐えたベルビット様。
殿下の執務室で何故か2人でお茶飲んでます。
僕より酷い顔してた従者は寮に先に帰したから、泣きつく相手も居ないんだ。僕の好きなお肉焼いといてね!って言ったけど、多分お父様とお爺様に報告書書いてるだろうから無理だろうな……。
「ダニエル」
ベルビット様まで僕のファーストネームを呼ぶようになってしまった。僕、やっぱり明日死ぬんじゃないかな。きっとご令嬢に撲殺されるんだ。
「その、なんだ。ローストが無茶を言ってすまない」
今思えば僕はあの時どうかしていたんだと思う。
多分、いや絶対あの時叫んでしまった事が今後の人生を変えてしまったんだ。
「そう思うなら巻き込まないでくださいよぉぉぉぉ!!!!」
「……申し訳ない」
「うわぁぁぁぁぁご令嬢怖いよぉぉぉぉぉぉ!!」
「……心から同感する」
「やぁ!随分楽しそうな話をしているね?」
突如現れた第二王子殿下!今日ずっと思ってたけどこの人なんなの?いつもどこからともなく沸いて出てくるんだよ!!怖いよぉぉ。
「沸いて出てくるって、虫みてぇだな!」
「あはは、心外だなぁ」
「ヒィッッ!!ご、ごめんなさぁぁぁい」
同じく沸いて出て来たオウフロア様が変なこと言うから、第二王子殿下が不機嫌になってしまわれたじゃないか!
って思ったけど、しまった声に出ていたみたいだ……冷静にならないと。
ていうか、ずっと思っていたんだけど、オウフロア様声大きいよね!!急に大きい声出されると心臓に悪いからなんか合図してほしいな!耳栓するからさ。
「同感だ、タークの声は大きすぎる」
「悪かったな!」
「ハッ!もしかして僕また声に出してました?」
「あぁ」
ウワァァァごめんなさぁぁいオウフロア様!お願いだから斬らないで!!!
「ヴィー、ダニエルにも防音魔法教えたら?」
「あっ大丈夫です第二王子殿下。耳栓って防音魔法の事なので」
僕がそう言うとベルビット様と第二王子殿下は顔を見合わせて頷いたんだけど、何?何なの?オウフロア様はなんかニヤニヤしてるし。えぇぇぇ嫌な予感しかしないよぉぉぉぉ。
「ところでダニエル、この書類なんだが」
「それ、僕に見せちゃっていいやつなんですかっていうか見たく無いです嫌な予感しかしないので!!!!!」
ベルビット様が徐ろに見せてきた書類。勢いよく目を逸らしたけど"機密"って文字見えたよ。これ学園のやつじゃないよね?やだよそんなの見たくないよ国家機密に触れて首が飛ぶとか嫌だよ!僕は家督を継いでこじんまりと生きていたいんだよ!お爺様のような暮らしが理想なの!だからね、僕ね、もうそろそろ帰りますね!!って勢いよく立ち上がったんだよ。でも、現実は無情だよね。
「まぁまぁ座りなって」
椅子の後ろに立ってたオウフロア様にね、肩を掴まれて椅子に座らせられました!!痛かった……力強い……脳筋怖いよぉぉぉぉ。魔法使ってもこの人達から逃げるのとか絶対無理じゃん?全力で逃げようと思ったのに脳筋め……「グッドラック!」って爽やかに言われても困るんだよぉぉぉ!
「で、ダニー」
なんかアダ名つけられたんですけど!!!もう本当に辞めてください僕のメンタルは風前の灯火だよ……
「この書類、チェックしてくれるかい?」
勿論やってくれるよね?って笑顔の圧力辞めてもらっても良いですか?それもう命令ですよね?王族の圧力怖いよ!第二王子殿下は知らないかもしれないけど、心から楽しそうにしてるのが余計にタチ悪いって言われてるんだからね!ベルビット様に!
ハァ~もう命令されたら見るしかないじゃないかぁ。僕は涙目になりながら書類に目を通したよ。帳簿だった。国税の帳簿だった。しかも毎期微妙にズレてる!!微妙にって言ってもまとまると結構な額だよね。そう!横領の証拠だね!!
「殿下ぁぁ収支の合わない書類なんか見せて何がしたいんですかぁぁぁ!」
ズレてる箇所と筆跡からして多分書類は途中で改ざんされてるっぽいし!!コレ書いてあるのよりももっと掠め盗られてるよね!も~~~~国の偉い人の不正の証拠見せて何がしたいんだよ第二王子殿下は!!
「へぇ、すげぇなダニエル」
「うん、やっぱりダニーはヴィーの良い腹心になれそうだね!」
「やはりそれが目的か」
流石にベルビット様だけだと殿下の執務補助の手が足りない、というか学業でベルビット様の胃がストレスで大変なことになっちゃうから、ストレス軽減しつつ一緒に仕事できそうな人材を探してたんだって!ベルビット様の胃を労わるなら第二王子殿下が無茶振りするのやめれば良いだけじゃないですか!っていうかそれにしても何で僕に目を付けたんだよ!!他にももっといたでしょ!?
「しっかし、爺さんの戯言も偶には役に立つんだな~」
「あぁ、タークのお爺様とグラニュー元男爵が呑み友達でよかったよ!」
オウフロア様にお礼を言ってる殿下、めちゃくちゃ良い話に纏めようとしてますけど!原因お爺様だったのぉぉぉぉ!予想外の裏切りなんですけどお爺様……えってことは待って、あのウチによく来てはお爺様とお酒飲んでたおじさんってもしかしてあの歴代最強と謳われた前騎士団長のコーディ・オウフロア様だったの???ただの気さくなおじさんだと思ってた……おじさんって呼んでたけど僕大丈夫かな。
「爺さんは喜んでたぞ?」
「アッそれなら良かったです」
「と、言う訳でおめでとうダニー!君は3年次に生徒会役員になるからね!」
パチン!と星が飛びそうなウインクをした第二王子殿下。ご機嫌にそう言われても僕は絶望的だよ……だって、だってさぁ。僕みたいなのが?殿下達と一緒に?仕事をする?もう完全に妬み僻みで虐められる気しかしないじゃないかぁぁぁ!
「ご令息方からも身を守らなきゃなんて嫌ですよぉぉぉぉぉ」
殿下がしれっと作っていた防音魔法のおかげでね、一連の会話は外に漏れることはなかったんだ。王族ってすごいね。僕、これからどうなるんだろう。ご令嬢から刺されるだけじゃなく、王家と繋がりが欲しいご令息にまで睨まれちゃうじゃないか。あーあ、貴族のともだち、欲しかったなぁ。遠い目をする僕にベルビット様は「色々と諦めろ、そしてよろしく頼む」と申し訳なさそうに言い、オウフロア様は「出世コースだなダニエル!」と笑いながら背中をバシバシ叩く。とっても痛かったから僕泣きそうになっちゃったよ。
まぁそんなこんなでご令嬢もご令息も恐怖しかないって感じでね。でもね、ご令嬢よりもご令息の僻みよりも怖いのは、実はロースト殿下の無茶振りなんだよね……。それを本当の意味で思い知るのはもう少し先のお話。機会があったらまたお話しするかもしれないけど、あんまり聞かない方がいいかもよ?
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