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3話 チュートリアルは飛ばすな
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第二王子殿下の手を取り立ち上がったモカ嬢は、恭しく一礼をすると、校舎の中へと入って行かれました。
貴族の礼には数段劣るものの、誠意の感じられるお辞儀でございました。
第二王子殿下はその背をやけに微笑ましげに眺めております。
やはり私が悪役令嬢として働かずともいい恋愛物語が出来上がるのではなくて?
さて、無事に最終のイベントをやり過ごした私は、先ほどのやりとりを見てらした方々と共に、大講堂へと向かいます。大講堂はオーディトリアムのような作りになっており、席は自由。演劇やコンサートを楽しめそうな良い空間でございます。
この後は入学式とオリエンテーション。
ゲーム上では第二王子殿下の新入生代表挨拶と在校生代表挨拶、新任教師紹介、学園長の挨拶を1タップで終わらせ、そしてチュートリアルが始まりますわ。
チュートリアルは主にアスームの説明。お助けキャラであるシナモン公爵家の双子が主導で説明を行いますの!
この双子はシスコンで、妹もこの学園に入学するはずでございます。シナモン妹もお助けキャラの1人で、シナモン公爵家にはログボやジュエル購入画面で大変お世話になりました。シナモン家の双子、略してシナモンズも攻略キャラではないながら人気でしたわね。
さて、そんなことを考えておりますと新入生代表挨拶が終わっておりました。
続く在校生代表挨拶。特に具体的なキャラは描かれておりませんでしたが一体どんな方なのでしょう?
颯爽と、それでいて優雅に登壇する方。第二王子殿下によく似たその見た目。
え、まさかそんなこと。いやいやいやいや。ちょっと待ってステイステイ。
「在校生代表挨拶を務めさせていただく、生徒会長であるアシディ・ピーベリーだ。弟の後に私まで出てきて、生徒諸君に緊張を強いていないか少しばかり不安だな」
でーーーすーーーわーーーよーーーねーーー!
登壇していたのはなんとこの国の第一王子殿下。美しくお優しい印象のロースト殿下とは異なって、アシディ殿下は美しくも親みやすく、それでいて厳しさも持ち合わせていらっしゃるような印象をお受けいたします。
これは自称神の操作なのか運営の裏設定なのか、果たしてどっちですの?いやでもアシディ殿下本人はゲームには1mmも出てこなかったわ。
出てくるのはロースト殿下の回想にのみ。ロースト殿下はその微笑みの裏で、どんな面においても優秀なアシディ殿下との差に苦しんでおられましたの。先ほどまでの印象ですとそんな風には全く見えませんでしたし、人間って不思議ですわよね。
そんなことを考えておりますと在校生代表挨拶も終わり、学園長挨拶。笑顔が素敵なおじいちゃんが登壇するや否や、
「大事なことは両殿下が言ってくれたから、ワシ言うこともうないんじゃけど」
と、ものの数分で挨拶を終わらせ、ついでに新任教師の紹介まで自ら行ってしまわれました。
なるほど1タップで終わったわけでございますわ。
さてお楽しみ!お待ちかね!オリエンテーションの時間でございますわ!
「はーいそれではこの後は生徒会プレゼンツ!新入生オリエンテーションの時間です!」
「今から15分後に始まるよ!15分間は休憩タイム!」
「在校生で準備がある者は控え室に向かうように」
登壇したシナモンズとアシディ殿下のアナウンスで大講堂内がざわめき出しました。
一度従者控え室にいるエリーナに会ってこようかしらと思ったけれどやめておきましょう。
「あの」
椅子の上で楽な姿勢をとったタイミングで斜め後ろから声をかけられた。
「いかがいたしました?」
「その襟元のビシュー、とっても素敵でございますわね!」
興奮した様子で話しかけてきたご令嬢の声は先ほど壇上から聞こえてきた話し方とよく似ていて。
などと言ってみましたが、私この顔よく知っております。
「え、えぇ、ありがとうございます。そちらの裾の刺繍、襟元の刺繍と合わせた柄になってますのね?シナモン様、でよろしかったかしら…」
「あぁ私ったら自己紹介もせずに!申し訳ございません。私、シナモン公爵家が長女キフィ・シナモンでございます!先程壇上に上がっていたのは私の兄です!よろしかったらお名前をお伺いしても?」
やはりシナモンズの妹さんでしたわ。課金するしかないと言うことですの?
「私はリタプレッソ伯爵家三女のカルファ・リタプレッソでございます。自己紹介もせず、とおっしゃってましたけども、私一人で緊張してましたの。話しかけていただいてありがとう」
笑顔で返せばキフィ嬢の目は輝きました。
「えっ!あのリタプレッソ家の?!私も一人だったから嬉しくて声をかけてしまったのだけど……ますますもっとお話ししたくなりましたわ!あの、あの!隣の席に行ってもよろしくて?」
幸い私の両隣は空いている。どうぞと返せば競歩で隣に着席した彼女。
「ぶっちゃけ打算で近寄ったんだけど、あなたとは気が合いそう!」とあっけらかんと言う様が面白くて、私はこの世界のキフィが一瞬で好きになってしまった。
そこから私たちは色々とお話をし、オリエンテーションが始まる頃には互いに名前を呼びあう仲になっておりました。
「ではではでは!オリエンテーションを始めます!司会を務めさせていただくのは生徒会会計のセイロン・シナモンと!」
「同じく生徒会書記のカシア・シナモンと!」
「先程在校生挨拶を務めた生徒会会長のアシディ・ピーベリーだ。本当に俺いるのか?」
「「会長がいるだけで雰囲気が変わるんです~~!」」
かなり和気藹々とスタートしたオリエンテーション。各アスームの代表が活動内容の紹介をしていく。
騎士志望の方向けのものばかりと思っていたら、魔道具研究に農業体験、料理にお茶会など前世の部活紹介を思わせる内容のそれ。壇上で繰り広げられる寸劇や剣舞、魔道具による光の演出。
そのどれもが、私たち新入生の心を掴むのには十分な内容でしたわ。
「「人脈作りも兼ねられるしスキルも伸ばせるから入るとお得だよ!」」とシナモンズが締め括り。
チュートリアルであったような新入生を交えた実演は一切なく、オリエンテーションは幕を下ろした。
貴族の礼には数段劣るものの、誠意の感じられるお辞儀でございました。
第二王子殿下はその背をやけに微笑ましげに眺めております。
やはり私が悪役令嬢として働かずともいい恋愛物語が出来上がるのではなくて?
さて、無事に最終のイベントをやり過ごした私は、先ほどのやりとりを見てらした方々と共に、大講堂へと向かいます。大講堂はオーディトリアムのような作りになっており、席は自由。演劇やコンサートを楽しめそうな良い空間でございます。
この後は入学式とオリエンテーション。
ゲーム上では第二王子殿下の新入生代表挨拶と在校生代表挨拶、新任教師紹介、学園長の挨拶を1タップで終わらせ、そしてチュートリアルが始まりますわ。
チュートリアルは主にアスームの説明。お助けキャラであるシナモン公爵家の双子が主導で説明を行いますの!
この双子はシスコンで、妹もこの学園に入学するはずでございます。シナモン妹もお助けキャラの1人で、シナモン公爵家にはログボやジュエル購入画面で大変お世話になりました。シナモン家の双子、略してシナモンズも攻略キャラではないながら人気でしたわね。
さて、そんなことを考えておりますと新入生代表挨拶が終わっておりました。
続く在校生代表挨拶。特に具体的なキャラは描かれておりませんでしたが一体どんな方なのでしょう?
颯爽と、それでいて優雅に登壇する方。第二王子殿下によく似たその見た目。
え、まさかそんなこと。いやいやいやいや。ちょっと待ってステイステイ。
「在校生代表挨拶を務めさせていただく、生徒会長であるアシディ・ピーベリーだ。弟の後に私まで出てきて、生徒諸君に緊張を強いていないか少しばかり不安だな」
でーーーすーーーわーーーよーーーねーーー!
登壇していたのはなんとこの国の第一王子殿下。美しくお優しい印象のロースト殿下とは異なって、アシディ殿下は美しくも親みやすく、それでいて厳しさも持ち合わせていらっしゃるような印象をお受けいたします。
これは自称神の操作なのか運営の裏設定なのか、果たしてどっちですの?いやでもアシディ殿下本人はゲームには1mmも出てこなかったわ。
出てくるのはロースト殿下の回想にのみ。ロースト殿下はその微笑みの裏で、どんな面においても優秀なアシディ殿下との差に苦しんでおられましたの。先ほどまでの印象ですとそんな風には全く見えませんでしたし、人間って不思議ですわよね。
そんなことを考えておりますと在校生代表挨拶も終わり、学園長挨拶。笑顔が素敵なおじいちゃんが登壇するや否や、
「大事なことは両殿下が言ってくれたから、ワシ言うこともうないんじゃけど」
と、ものの数分で挨拶を終わらせ、ついでに新任教師の紹介まで自ら行ってしまわれました。
なるほど1タップで終わったわけでございますわ。
さてお楽しみ!お待ちかね!オリエンテーションの時間でございますわ!
「はーいそれではこの後は生徒会プレゼンツ!新入生オリエンテーションの時間です!」
「今から15分後に始まるよ!15分間は休憩タイム!」
「在校生で準備がある者は控え室に向かうように」
登壇したシナモンズとアシディ殿下のアナウンスで大講堂内がざわめき出しました。
一度従者控え室にいるエリーナに会ってこようかしらと思ったけれどやめておきましょう。
「あの」
椅子の上で楽な姿勢をとったタイミングで斜め後ろから声をかけられた。
「いかがいたしました?」
「その襟元のビシュー、とっても素敵でございますわね!」
興奮した様子で話しかけてきたご令嬢の声は先ほど壇上から聞こえてきた話し方とよく似ていて。
などと言ってみましたが、私この顔よく知っております。
「え、えぇ、ありがとうございます。そちらの裾の刺繍、襟元の刺繍と合わせた柄になってますのね?シナモン様、でよろしかったかしら…」
「あぁ私ったら自己紹介もせずに!申し訳ございません。私、シナモン公爵家が長女キフィ・シナモンでございます!先程壇上に上がっていたのは私の兄です!よろしかったらお名前をお伺いしても?」
やはりシナモンズの妹さんでしたわ。課金するしかないと言うことですの?
「私はリタプレッソ伯爵家三女のカルファ・リタプレッソでございます。自己紹介もせず、とおっしゃってましたけども、私一人で緊張してましたの。話しかけていただいてありがとう」
笑顔で返せばキフィ嬢の目は輝きました。
「えっ!あのリタプレッソ家の?!私も一人だったから嬉しくて声をかけてしまったのだけど……ますますもっとお話ししたくなりましたわ!あの、あの!隣の席に行ってもよろしくて?」
幸い私の両隣は空いている。どうぞと返せば競歩で隣に着席した彼女。
「ぶっちゃけ打算で近寄ったんだけど、あなたとは気が合いそう!」とあっけらかんと言う様が面白くて、私はこの世界のキフィが一瞬で好きになってしまった。
そこから私たちは色々とお話をし、オリエンテーションが始まる頃には互いに名前を呼びあう仲になっておりました。
「ではではでは!オリエンテーションを始めます!司会を務めさせていただくのは生徒会会計のセイロン・シナモンと!」
「同じく生徒会書記のカシア・シナモンと!」
「先程在校生挨拶を務めた生徒会会長のアシディ・ピーベリーだ。本当に俺いるのか?」
「「会長がいるだけで雰囲気が変わるんです~~!」」
かなり和気藹々とスタートしたオリエンテーション。各アスームの代表が活動内容の紹介をしていく。
騎士志望の方向けのものばかりと思っていたら、魔道具研究に農業体験、料理にお茶会など前世の部活紹介を思わせる内容のそれ。壇上で繰り広げられる寸劇や剣舞、魔道具による光の演出。
そのどれもが、私たち新入生の心を掴むのには十分な内容でしたわ。
「「人脈作りも兼ねられるしスキルも伸ばせるから入るとお得だよ!」」とシナモンズが締め括り。
チュートリアルであったような新入生を交えた実演は一切なく、オリエンテーションは幕を下ろした。
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