ママは男の娘

狐猫(キツネコ)

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 サキと一頻り話し終えると、私はスクーターの修理を再開した。

 機嫌の良くなったサキが「僕も手伝う!」と言ったおかげで、夕方前には終わる予定だった作業は大幅に遅れ、終わった頃には日はとっぷりと暮れていた。

 向こうに見える高層ビルには明かりが灯り、すっかり夜景と化していた。

 私は昼間に修理を終えた電化製品を、ジャンクさんから貰ったスクーターのカゴに乗せる。

 カゴはフロントとリアの両方に付いており、それなりの数を乗せられそうだ。

 といっても、今日はいつもより修理できた物が少ないので、対した数は乗っていない。

「さて、そろそろお暇しようかな?」

 洗面台の鏡の前で、化粧をしていたサキが立ち上がった。

 昨日はじめて会ったときのような、バッチリとしたメイクをしている。

「家に帰るのですか?」

「まさか。そう簡単に帰るくらいなら家出なんてしないよ」

 サキは、修理のときに出た廃材で遊んでいるぬーちゃんを抱きかかえる。

「また、適当な所にお邪魔するさ」

 サキは私に向かって手を振りながら、工場の外へと歩いていく。

「待ってください。街までお送りします」

「いいよ、別に。それにあなたはスクーターで行くんでしょ?」

 確かに。私は修理したスクーターの試運転も兼ねて、ジャンクさんのお店まで電化製品を売りに行くつもりであった。

「早く行きなよ。大丈夫、道は覚えているから」

 そう言って、再び歩きだすサキ。その肩越しにぬーちゃんが私に手を振ってきた。

「バイバ~イ」

 その姿に私は後ろ髪を引かれた。

 このまま送り出して良いのだろうか、と。

 そこで私は考えた。

 今、自分は何をするべきかと。
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