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再会した幼馴染が殺し屋になっていて、僕の命が狙われています。
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テスト返却、当日から放課後の襲撃が始まっていた。例の如く、人気のない場所に差し掛かると黒装束にみと纏った桔平に襲われるが、毎回どこに潜んでいるのか分からない瀬戸が間に入ってガードしてくれる。
振り下ろされるダガーを銃で受け止められると、ひらりと桔平の身体は瀬戸の背後を取った。鮮やかな身のこなしに呆けて見入ってしまったが、桔平の視線が向けられると急いで走り出した。
「おー、凄いじゃん。ついに俺の背後取れるようになったのかー」
弟子の成長を褒めるような瀬戸の口振りに、桔平の表情が苦々しく歪む。そのまま手をついて、蹴りを喰らわせようとするが、ひらりとかわされてしまった。
小さく舌打ちした桔平がダガーを握り直し、ワイヤーを使って瀬戸の動きを封じる。足首に巻きついて「あらら」苦笑いしながら、ワイヤーに視線を向けると、桔平がワイヤーを巻いて瀬戸との距離を一気につめた。
「うんうん、いい手を使う。けど、甘いよ。最上」
ニッと不敵に笑う瀬戸に気付いてワイヤーを止めるが、靴底に仕込まれていたナイフで足首のワイヤーを切っていた。SPの靴って特殊で色々と仕込まれているのだろうか? 遠くに隠れて、見物していた伊織は凄いと興奮していた。
「はいはい。見たい気持ちは分かるけど、お前は早く逃げなさいねー」
伊織が隠れている事に気付いていた瀬戸が、ヘラヘラと笑いながら手で追い払うしぐさをする。伊織の方が足は速いが、ワイヤーを使われてしまったら勝ち目はない。
もう少しだけ見ていたい気もするが、邪魔する事は出来ないと、さっさと退散することにした。十字路に差し掛かった時「「止まれ!」」と桔平と瀬戸の声が重なる。
え? 振り返ると、二人が慌てた様子で駆け寄ってくる。意味が分からず立ち尽くしていると、十字路の道を塞ぐように車が止まっていて、中から数人の男が出てきて伊織の口を塞ぎ車の中へと押し込んできた。
突然の出来事に反応できず、されるがままに車の座席に放り込まれる。
ドアが閉まる寸前、瀬戸が拳銃を構えて発砲するが、防弾ガラスなのか割れる事はなかった。
(なにこれ、誘拐?)
伊織の受け止めた男が「騒ぐなよ、駒井の坊ちゃん」とナイフを突きつけてくる。ヒタヒタと触れる冷たいナイフの感触に、ゾクリと背筋が凍りついた。
駒井の坊ちゃんと言っていた。桔平の所属している殺し屋組織なのか、それとも身代金目的の誘拐犯なのか判別はつかない。
ただ下手に騒ぐと命が危ない事だけは分かる。恐怖で汗が止まらず、呼吸が荒くなって身体が震えた。
「そんなに怖がらなくてもいい。お父さんが要求の呑んでくれれば、ちゃーんと返してやるからな」
「生きて返してあげるよ。もっとも、綺麗な状態で返せるか分からないけどね」
下卑た声にビクリと奮わせる。内臓をとられたりするのではないか? 指を切り落とされたりするのではないか? 様々な恐怖を抱えながら、ワンボックスカーは人気のない港の倉庫へと向かったのだった。
振り下ろされるダガーを銃で受け止められると、ひらりと桔平の身体は瀬戸の背後を取った。鮮やかな身のこなしに呆けて見入ってしまったが、桔平の視線が向けられると急いで走り出した。
「おー、凄いじゃん。ついに俺の背後取れるようになったのかー」
弟子の成長を褒めるような瀬戸の口振りに、桔平の表情が苦々しく歪む。そのまま手をついて、蹴りを喰らわせようとするが、ひらりとかわされてしまった。
小さく舌打ちした桔平がダガーを握り直し、ワイヤーを使って瀬戸の動きを封じる。足首に巻きついて「あらら」苦笑いしながら、ワイヤーに視線を向けると、桔平がワイヤーを巻いて瀬戸との距離を一気につめた。
「うんうん、いい手を使う。けど、甘いよ。最上」
ニッと不敵に笑う瀬戸に気付いてワイヤーを止めるが、靴底に仕込まれていたナイフで足首のワイヤーを切っていた。SPの靴って特殊で色々と仕込まれているのだろうか? 遠くに隠れて、見物していた伊織は凄いと興奮していた。
「はいはい。見たい気持ちは分かるけど、お前は早く逃げなさいねー」
伊織が隠れている事に気付いていた瀬戸が、ヘラヘラと笑いながら手で追い払うしぐさをする。伊織の方が足は速いが、ワイヤーを使われてしまったら勝ち目はない。
もう少しだけ見ていたい気もするが、邪魔する事は出来ないと、さっさと退散することにした。十字路に差し掛かった時「「止まれ!」」と桔平と瀬戸の声が重なる。
え? 振り返ると、二人が慌てた様子で駆け寄ってくる。意味が分からず立ち尽くしていると、十字路の道を塞ぐように車が止まっていて、中から数人の男が出てきて伊織の口を塞ぎ車の中へと押し込んできた。
突然の出来事に反応できず、されるがままに車の座席に放り込まれる。
ドアが閉まる寸前、瀬戸が拳銃を構えて発砲するが、防弾ガラスなのか割れる事はなかった。
(なにこれ、誘拐?)
伊織の受け止めた男が「騒ぐなよ、駒井の坊ちゃん」とナイフを突きつけてくる。ヒタヒタと触れる冷たいナイフの感触に、ゾクリと背筋が凍りついた。
駒井の坊ちゃんと言っていた。桔平の所属している殺し屋組織なのか、それとも身代金目的の誘拐犯なのか判別はつかない。
ただ下手に騒ぐと命が危ない事だけは分かる。恐怖で汗が止まらず、呼吸が荒くなって身体が震えた。
「そんなに怖がらなくてもいい。お父さんが要求の呑んでくれれば、ちゃーんと返してやるからな」
「生きて返してあげるよ。もっとも、綺麗な状態で返せるか分からないけどね」
下卑た声にビクリと奮わせる。内臓をとられたりするのではないか? 指を切り落とされたりするのではないか? 様々な恐怖を抱えながら、ワンボックスカーは人気のない港の倉庫へと向かったのだった。
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