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つかの間の平穏

147 カリヤとビーグルのお茶会

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カリヤ視点

私、カリヤ・ベイベルツは学校の一角にて、ビーグル様とお茶会に呼んでおります。

 私がお金を出して使用人に用意してもらったお菓子と紅茶を楽しんでいる。

「相変わらずお前んとこのやつが選ぶ菓子は上手いよな」

「うふふ、そういってくださるとありがたいですわ」

 私は甘いものは好きなので、私に使える使用人達は自然と甘味に関する目が良くなっていきますのよ。

 甘味だけにこだわらず、うちのシェフの料理はとても美味しいので舌が肥えてしまっているんですの。

 食は生きる上においてとても重要なものですから満足いくものを選ばないといかない、というのが私のお父様の言葉でしてよ。

 ケーキもクッキーもミルクティーもどれもこれも我が家御用達なんですから、ある意味美味しくて当然だと思いますわ。

「で、なんで呼んだんだよ」

 なんで私とビーグル様がなんでお茶会をしているのかというと、私が決闘を仕掛けた永華さんを、その友人達のお話をするためですわ。

「あの子達の話ですわ。あの子達が台風の目のようだといわれているのは知っていますね?」

「あぁ、知ってんぜ。箱庭試験、俺が食堂で暴れたとき、カリヤとの決闘、一人行方知れずになったこと。表に出てないのだったら人身売買してた奴らと、ブレイブ家との衝突か」

 ビーグル様の言葉に頷く。

「いくらなんでも、あの子達は巻き込まれすぎだと思うのです」

「まあ、わからなくもねえがよ、大半はあいつらが首を突っ込んでる自業自得だろ?」

「ですが問題は箱庭試験で起きたという事故ですわ。何者かが細工したと言う話ですもの」

 犯人が捕まっているのならば心配することもないのですけれど……。

「しかも犯人は未だに捕まっていないと言う話だからな。先生達の事だ、放置なんてしねえだろうから、きちんと追いかけた上で逃げられたんだろうな。先生達から逃げ延びた侵入者か……」

 メルリス魔法学校の教師は魔導師として一流の方々であり、人によっては名誉と言われる王宮魔導師に選ばれたっておかしくない人がいます。

 警備員だってそうです、この学校の卒業生もいますし軍を引退して職を移られた人もおりますもの、簡単に逃げしてしまうとは思えませんわ。

「目撃者はヘルスティーナ先生と由宇太さんとの事です。あのお二人が取り逃がすなんて事、木っ端相手にするとは思えませんわ」

「とすっと相手は相応の実力者か逃げに特化した人物か……」

「でしょうね」

「でもよ。やった理由がわかんねえよな」

「一番の問題が犯行理由ですわよねえ」

 それがわからないと根本的な解決になりませんもの。

「あり得そうなのは貴族の三人か。あとローレスとミュー」

「あとはベイノットさんもなくはないかと、親が魔導警察らしいので。でもレーピオ様とララ様は違うと思いますわ」

「何でだ?お二人とも箱庭試験は別の箱庭で受けていたんですもの」

 あの二人がいる箱庭試験で似たようなことが起こっていたら考えもしましたけれど、起こってない以上は違うでしょう。

 ブラフと言う可能性も考えられますけどね。

「じゃあ、その二人を抜いた六人か。でもローレスおねえだろ。ゴタゴタは片付いたが魔法学校に侵入するメリットがねえからな。魔導警察や軍に捕まるようならヘルスティーナ先生が逃がすわけねえ」

「それはベイノットさんとミューさんにも言えますわ」

 あの二人は親が軍や魔導警察に所属しており、逮捕されたことなどで逆恨みされて子供である二人が狙われていると考えることができなくもないけれど、ビーグル様の言うとおり魔導警察や軍に捕えられた者がヘルスティーナ先生から逃げられるとは思えませんわ。

「それを言うなら平民のカルタと永華もじゃねえか」

「あの二人がなにかやった、と言えなくもありませんが、それでもヘルスティー先生が捕まえられないような人間が来るのならば魔法学校に来る前にことを起こすべきではないのですか?隙はいくらでもあるでしょう?」

 あの二人は貴族でもなんでもない平民、護衛なんてついてはおりませんし、いくらでも犯行のタイミングはあるでしょうからね。

「てことは消去法でメイメアが狙われてんのか?」

「海の三大貴族のうち一つ、その一人娘ですか」

 一番可能性があるでしょうね……。

「犯人はなんだと思う?」

「……人間至上主義者達、ですかね」

「獣人でも魔族でもやりかねんがな」

 この世には様々な種族がおります。

 人間、獣人、人魚、妖精、魔族、他にも色々といます。

 ここ、種族のサラダボウルと言われる王都アストロにいれば目にする機会は多いでしょう。

 殆どの方々が他種族の方々を受け入れるのですが、一部の人たちは違うのです。

 その一端が人間至上主義者、他にも獣人至上主義や魔族至上主義なんかもありまして、過去には至上主義が原因で戦争が起きたくらいです。

 やるとしたら比重的に多いだろう人間至上主義者でしょうかね。

 後ろ暗いことに手を出している者も多いと聞きますし、ヘルスティーナ先生も捕まえられないような人物を魔法学校に寄越すこともできるでしょう。

「海の三大貴族の娘に手を出し他となれば人魚と人間の戦争に発展しかねませんわ」

「戦争にならなくても人魚の領域関係の海洋貿易や漁ができなくなるかも知れねえ、王都はまだしも海側の端の村や町が大打撃だぜ」

「そこまでありうるのですか……」

 ビーグル様の言葉に冷や汗が流れる。

 海側とは反対は陸続きで別の国があるので貿易事態は問題ないかもしれませんが、関係悪化となれば周辺諸国が、どう対応してくるかも考えなければなりませんわね……。

「頭の痛い話ですわ……」

「まったくだぜ。こちとら世間話するのかと思ってここに来たのに、こんな重たい話になるとは思わなかったぜ」

「私もここまで大きな話になる可能性が出てくるとは思いませんでしたわ」

 ケーキを食べる。

 普段は美味しいと思うのに、今は人魚達との亀裂が出来上がる可能性があると頭の片隅にあるせいで味を感じなくなってしまいましたわ。

「これ、誰に言うべきだ?」

「でも、まだ可能性の話ですわ。他の誰だって、潔白の証明はできないんですもの。悪魔の証明ですわ」

「お前、それで一回大変なことになってるだろ」

「そ、それはそうですけれど……」

「確かに可能性の話だし、証拠もねえ状態で誰が信じるんだって感じだけどよ。なくもないんだから念には念をいれて誰かには注意を促してもらった方がいいんじゃねえか?」

「……誰が、信用できると思います?」

「ヘルスティーナ先生、あとザベル先生だろ?マーマリア先生も信用できるな」

 う~ん、確かヘルスティーナ先生は混血だと聞いたことがありますし至上主義者である可能性は極めて低いでしょうから話すのならばヘルスティーナ先生でしょうか……。

「話すのならばヘルスティーナ先生でしょうか」

「その方がいいだろ。あの人混血らしいし、至上主義者じゃねえはずだからな。それに、この学校で一番強いのはあの人だ」

「ですわね」

 けれども、本当に至上主義者が原因なのかしら。

「まあ、そこまで心配することでもねえだろ。基本的にアイツら固まりになって動いてるんだから暗殺なんて早々できねえはずだ。仮にやろうとしたって、この前みたいにコテンパンにして魔導警察に通報だろ」

「あぁ、少し前にララ様相手に差し向けられたのでしたっけ」

 確か町に出たときを狙われてけれど、いつもの八人で行動していたから暗殺者が魔法や剣術なんかでとっちめてしまったんですよね。

 下手な護衛よりも腕がいいかもしれませんわね。

「何もなかったら杞憂だったって喜べばいいんだよ」

「えぇ、そうですわね」

 本当に、なにも起こらなければ良いのですけれど……。
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