苦手な人と共に異世界に呼ばれたらしいです。……これ、大丈夫?

猪瀬

文字の大きさ
上 下
143 / 234
つかの間の平穏

142 メメの疑問

しおりを挟む
メイメア視点

海の出、すなわち人魚である私は陸もの文化の違いに毎度毎度、疑問符を飛ばしては周囲の方々に聞いていました。

 事前に勉強していたとはいえ、未知の文化に触れるのは楽しいものです。

 海には服を着るなんて概念はありませんでした。

 あるとするのならば陸から流れてきた布切れを巻くだとか、布切れではなくて海藻を使ったりとか、貝をうまいこと繋げて陸で言う服の代わりにしたりだとか。

 そもそもの話、空を飛ぶとか言うよく分からないことだってしませんからね。

 私達人魚は海を泳ぎますから、そもそも私に関してはメルリス魔法学校にはいることが決定するまで空すら見たことありませんもの。

 二足歩行だって最初はうまく行きませんでしたわ。

 蟹の人魚である海の友達はアスロンテ軍学校に行くと言って一緒のタイミングで陸に上がりましたけれども最初の頃は横歩きしかしてませんでしたからね。

 元が蟹だったから歩くことになれているみたいで、歩くことは事態は出きるようでしたけれども座り込んで動けない私を笑いながら横歩きしている様は滑稽でしたわ。

 挙げ句よそ見、というか横歩きして私を笑いっていたせいで進行方向をきちんと確認できずに岩に躓いて盛大に転けてましたしね。

 大笑いしてやりましたわよ。

 まぁ、そのあと私もうまく歩けずに転けてしまいましたけれどもね。

「ドングリの背比べ……」

 私の話を聞いていたしのくん基カルくんがあきれた表情で私のことを見てきましたわ。

「ドングリの背比べ?」

 陸の諺なんでしょうけれども、学んだものの中に似たような単語はあった覚えはありませんわ。

 私の疑問の声にカルくんは眉をしかめたかと思えばため息をはいて、どこか納得したような表情に変わりました。

「そうか、海だから通じないのか」

 そうです。私人魚ですので陸のことは分からないことの方が多いのですわ。

「ドングリって分かるか?」

「茶色の木の実でしょう?」

「あれってほとんど大きさが変わらないだろ。ドングリが背比べしてもそこまで変わらない、やってることにほとんどさがないって意味だ」

 なるほど?

 ……確かにやっていることのさはありませんものね。

「五十歩百歩も似たような意味だな」

「五十歩と百歩では大きく違うのでは?」

 陸は似たような意味の言葉があって、とてもめんど__分かりにくいですわ。

「人間語だと音が同じなのに意味が違う言葉もありますわよね。「橋」とか「端」とか「箸」とか、ややこしくありませんの?」

「発音で分けてるから別に……。確かにたまに分からなくあることはあるしけれど」

「なぜ人族は自ら蕀の道を行くのです?」

「知らん」

「つれないですわ」

 人魚語は超音波だったりですから、人間語のようにはならないんですのよね。

 お人形さんは喋りませんしね。

 傀儡魔法をの練習を予て、二体の人形に最近覚えたワルツを踊らせる。

 この場には本を読んでいる最中のカルくんしかいません。

 他の人はお手洗いに行っていたり、購買に行っていたり、先生に呼び出されて職員室に行ったりしていて、この場にはいないんです。

「そういえば、しのくんとえーちゃんは、どれほどの付き合いなんですの?」

 いつの日だったかしら、ミミちゃんがえーちゃんに聞いていたときに話していた気もするけれど、不思議な二人の関係が気になって聞いてしまいました。

「……メルトポリアに来てからは一年と半年近く。メルトポリアに来る前を含めると、多分……一年と十ヶ月ぐらいなんじゃないか?」

 う~ん、二人の様子を見るに長年の知り合いだと思っていたのですが、違うようですね。

「まともに会話するようになったのはメルトポリアに来てからだな」

「あらま、少し以意外ですわ。てっきり長い付き合いなのかと思ってましたから」

「そうか」

 そっけないですわねえ。

 まあ、かれこれ半年近くの付き合いでカルくんのことはある程度知っているつもりですが、この冷たさには未だに慣れませんわね。

 一体どうして、誰も彼もにこんな冷たい、そっけない対応するのかしらね?

 気になるけれど、これは聞かない方がいいと私の勘が言っているので触れないことにするわ。

 私、知識欲は強い方だけれど、そこらへんの分別は出きる方ですの。

「同じ町の出身なんですか?」

「……さあ?」

「あら、私、人間はあまりすんでいるお場所を引っ越したりしない聞いたのですけれど」

「メルリス魔法学校に来る前に通ってた学校が同じだけだからな。僕は一度引っ越して、まだ戻ってきた感じだから、人によるだろ」

 つまり二度ほど、お引っ越しされていると言うことですわね?

「戻ったんですの?」

「一時親戚に預けられてたんでな」

「あぁ、そういうことなんですのね。でも、それお引っ越しでいいのかしら?」

「さあな、元々住んでたところよりも遠いところに年単位で暮らしてたから似たようなものだろ」

 むう、確かにそれもそうですわね。

「人魚は大きな危険が迫ると元々住んでいた町を捨てて別の場所に移動するんですの」

「それ、費用とか馬鹿にならないだろ……」

「誰だってシャチやサメの群れには教われたくありませんもの。仕方ありませんわ」

「シャチに、サメ……」

 本を読みながらでもきちんと話を聞いてくれていたカルくんは頬をひきつらせ、私の言葉を反芻している。

 本から仕入れたのか、それとも誰かに聞いたのかカルくんの様子からして獲物を見つけたときのシャチやサメがどんなものなのか知っているみたいですわ。

 シャチはイルカ白グマ、時にはイルカやクジラや人魚すらも獲物にしてしまう、まさしく海のギャングですし、何が酷いって獲物を使って遊んでしまうことなんですよね。

 サメもサメで凶暴だし、鼻が良いから少しでも血を流してしまえば、だいぶん遠いところからでも嗅ぎ付けてくるんですもの。

 シャチも遠慮願いたいですけれども、サメも大概ですわね。

「見つけたときの恐怖足るや……」

「人魚の方が強いと言うわけではないんだな」

「水中呼吸ができる、そして魔法が使えるだとか武術に長けた人間が海にいてシャチの勝てますの?」

「それは……前提条件が違う気もするけど、多分無理なんじゃないか?」

「前提条件といいましても、水中呼吸ができる状態であればお呼びのうまさ程度では?それなら箒でも使ってしまえばよろしいのです」

「それもそうか……」

「あとは個人的に達磨ザメとか怖いですわね」

 私怨をこぼしてよいのなら言いますけれども、一度ちょっとだけ噛られたときから達磨ザメとか私大っ嫌いですわ。

「達磨……あぁ、丸く噛ってくる奴」

「そうですわ」

 海のこと、知らない人も多いというのにカルくんと話すのは知識が豊富で話がつまらなくて楽で楽しくていいですわ。

 ……人もあまりいませんし、少し前々から気になっていることを聞いてみますか。

「しのくんは、私が傀儡魔法が得意だと言っても嫌そうな顔しませんでしたよね。なんでですの?」

 傀儡魔法、その名の通り生き物でなくても生き物でも条件付きで操れるようになってしまう魔法。

 その性質もあり、犯罪に使われやすい魔法である。

 まあ、私の場合は幼心に人形が動いたらいいなと思って習得したものですから、入らぬ下心とかないんですけれども。

「最初は気にしている余裕がなかったからだな」

「確かに、あの時は模造品のワイバーンに襲われていましたものね」

「あぁ、君が人形意外に魔法を使う気がないのは普段の様子からわかることだ。それに、傀儡魔法にかからない自信があったしな」

「うふふ、確かにしのくんは精神的に強そうですものね」

 傀儡魔法を生き物にかける条件の一つに、精神的に屈服させると言うものがあります。

「他のやつらは頭から抜けていたんじゃないのか?」

「かもしれませんわねえ」

 箱庭試験でのことを考えればおかしくもありませんけれども、知ったときにひきつった顔をしなかったのは嬉しかったですわ。

 知らせなければいいという話なんですけれども、得意魔法だから有事の際はとっさに出てしまうんですよねえ。

 それに、傀儡魔法が世間から嫌われぎみだと知ったのは陸に上がってからでしたからね。

 海に傀儡魔法はありませんでしたし、たまたま船が座礁でもしたのか流れてきた魔導書に書かれてたものを習得しましたから。

 海で傀儡魔法とか、条件がクリアできる気がしませんから。

 人魚は精神に作用する魔法にたいして、とても強い体制を持っていることが一般的ですもの。

「篠野部~、メメ~、キャラメルポップコーン食べる?」

「あら、ありがたくいただきますわ」

 皆さんが戻ってきましたわ。

 さっきカルくんにした質問を皆さんにしてみたいと思いますけれど、カルくんの回答で満足しましたからやめてきますわ。

 知っても知らなくても、私が変わることはないもの。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私、のんびり暮らしたいんです!

クロウ
ファンタジー
神様の手違いで死んだ少女は、異世界のとある村で転生した。 神様から貰ったスキルで今世はのんびりと過ごすんだ! しかし番を探しに訪れた第2王子に、番認定をされて……。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

騎士団長のお抱え薬師

衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。 聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。 後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。 なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。 そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。 場所は隣国。 しかもハノンの隣。 迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。 大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。 イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。

死亡フラグだらけの悪役令嬢〜魔王の胃袋を掴めば回避できるって本当ですか?

きゃる
ファンタジー
 侯爵令嬢ヴィオネッタは、幼い日に自分が乙女ゲームの悪役令嬢であることに気がついた。死亡フラグを避けようと悪役令嬢に似つかわしくなくぽっちゃりしたものの、17歳のある日ゲームの通り断罪されてしまう。 「僕は醜い盗人を妃にするつもりはない。この婚約を破棄し、お前を魔の森に追放とする!」  盗人ってなんですか?  全く覚えがないのに、なぜ?  無実だと訴える彼女を、心優しいヒロインが救う……と、思ったら⁉︎ 「ふふ、せっかく醜く太ったのに、無駄になったわね。豚は豚らしく這いつくばっていればいいのよ。ゲームの世界に転生したのは、貴女だけではないわ」  かくしてぽっちゃり令嬢はヒロインの罠にはまり、家族からも見捨てられた。さらには魔界に迷い込み、魔王の前へ。「最期に言い残すことは?」「私、お役に立てます!」  魔界の食事は最悪で、控えめに言ってかなりマズい。お城の中もほこりっぽくて、気づけば激ヤセ。あとは料理と掃除を頑張って、生き残るだけ。  多くの魔族を味方につけたヴィオネッタは、魔王の心(胃袋?)もつかめるか? バッドエンドを回避して、満腹エンドにたどり着ける?  くせのある魔族や魔界の食材に大奮闘。  腹黒ヒロインと冷酷王子に大慌て。  元悪役令嬢の逆転なるか⁉︎ ※レシピ付き

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

処理中です...