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恐るべき執着心
125 連絡手段
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あれから時間がたち、見張りが二度かわったところで捜索班のメンバーが集合地点にやってきた。
「ローレスもロンテ先輩もボロボロじゃないの。篠野部のほうは、大丈夫そうね」
「てかロンテ先輩、屋敷にいたのか?」
「馬車の件はカモフラージュだったんでしょうね」
「思ったよりも早かったね」
「あぁ、うん。ちょうど向かってた方向だったしね」
これからどうするかと言う話になった。
ロンテ先輩とローレスに配慮してリンデヒル商会を待つか、三人がいないことに気づかれて追手が来る前にできるだけ距離をつけるか。
その二択になった。
リンデヒル商会を待つ方法になると少し時間はかかるものの、転移魔法が使えるので距離は一気に稼げるし魔法学校にも帰れるだろう。
リンデヒル商会を待たない方向だと待つ方よりも早く行動できる分、追い付かれる可能性が低くなるが距離は稼げない。それに加え距離が距離なものだから
意見は二つに別れたが、ローシュテールをよく知るロンテ先輩の言葉によりリンデヒル商会を待たずに動くことになった。
「リンデヒル商会が来てる間に俺たちがいなくなってたんだ。ご禁制の薬のこともあるし、リンデヒル商会を怪しむだろう。接触しない方が安全だと思うよ」
「それ、商会ヤバイんじゃねえッスか?」
「薬のことは聞こうにも、ちゃんと聞けないだろう。父様に後ろめたいことをしている自覚があるのなら俺たちのこと、少なくとも俺の名前は出せないだろうし、いなくなったことを大々的に言えないだろう。無くなったものがあるから商会の荷台を改めるってのを建前にして荷物を見るだけで終わると思う。商会に被害はないんじゃないかな」
ロンテ先輩いわく、ローシュテールはアーネチカさんやレイスの二人が絡まなければ普段は比較的、理性的であり、迂闊な真似はしないのだそうだ。
つまりは地雷を踏まなければ外面の良いままと言うことだろう。
ロンテ先輩にしていることやレイス親子を追いかけていること、それに加えて外面のよさ、大分質の悪い話だ。
なるべく人の少ない、けれど危険性の無い道を情報共有しつつ進んでいくこと数時間。
戌井がまた人形をいじっていた。
「戌井、何してるんだ?」
「ん?これ?連絡手段だよ。ちょっと前に秘策って言ってたのがこれ。メメの傀儡魔法がかかってるんだけど、動きが連動するようになってるんだよね」
「動きが連動するのか?」
「そう。私がこの人形の左腕を動かしたらリンクされてる他の人形も左腕が動くの。他の人形と一心同体って感じ?」
なるほど、それで自分達が集合場所にいることを捜索班に知らせて、集合地点に来てもらったのか
「モールス信号みたいなものかな?あの動きをしたらこれ、この動きをしたらこれって感じに決めてあるんだ。数に限りがあるから各班に二つずつなんだけどね」
「十分だろ」
確か範囲の問題があると言っていたか。
そうだとしても、この時代で連絡用のものだとしたら十分の性能をしているだろう。
デメリットがあるとするのならば術者であるファーレンテインに何かあったとき魔法が途切れてつかえなくなること、それから人形を触るのに落ち着いた時間が必要なことだろうか。
あぁ、片手でいじるのは難しいから両手で触れる状態じゃないと連絡を取るのが難しいかもしれないな。
それから、いくらかしてアルマックが偵察のために透明になれる魔法の布と箒を使って上から追手が来ていないか確認することになった。
降りてきたアルマックから伝えられた情報はリンデヒル商会がとっくのとうに僕たちを追い越していたこと、それからリンデヒル商会は予定どおりの道を使っているはずなのに僕たちとあっていないこと。
「あれ?ルート的にどこかしらで合うはずだよね?」
「商会の方で何かあって道を変えたんじゃないかしら?」
「いや、でも見る限り俺たちが歩いてるところも、商会が通ってるところも、予定どおりの道のはずだぜ?」
「アタシの記憶が正しければ、道を間違えた覚えはないのだけれど……」
似たような道があった。
当事者でないものが聞いたらそれだけのことに思えるだろうが、この近くにある道は僕たちの歩いているところとは違って舗装されている道しかない。
今、僕たちが歩いているのは舗装はされていなくても、道の形になっていると言った感じのところだ。
舗装されている道と、されていない道、その二つ以外は獣道くらいしかない。
どちらかが、なにかが理由で決定的に間違えている。
目印の無い砂漠や草原ならいざ知らず、ちゃんとして道があって所々に目印になるようなものが点在している、この場でこんな状態になることがあるんだろうか。
「誰かコンパス持ってる?落として蓋割っちゃって、そのままなんだよね」
「アタシがもってるわ」
ララがそういって服のジャケットのポケットからコンパスを取り出す。
ララはコンパスをじっと見たかた思うと、その表情はジワジワと恐怖に染まっていく。
「……魔法学校の方向に向かっていたはずなのに、方角がずれてるわ」
一瞬にして空気が凍りついた。
「コンパス壊れてんじゃねえの?」
アルマックが頬をひきつらせながら、コンパスを取り出し方角を確認する。
「……俺のも壊れてるわ」
アルマックが持っているコンパスはララと同じ方角を指していた。
「流石に二つの同時に壊れるのは、ないわよね?」
レイが不安そうに言う。
二つ同時にコンパスが壊れるのは、流石にことができすぎている気がする。
だが、その二つが導きだした方角が真実なのだとしたら、僕たちは魔法学校に向かっているはずが大きく道を逸れていたことになる。
しかも、それも誰も気がついていない状態だった。
「父様の……」
揃いも揃って何が起こっているのか理解できず、沈黙が場を支配する中、ロンテ先輩が口を開いた。
「父様の得意な魔法が幻覚を見せるもの、だったはず」
仮に、それで僕らが道に迷ってしまったのだとしたら、もう僕らはローシュテールに見つかっていることになる。
それに気がついた僕の背中に冷たいものが這う。
「とにかく、方向を修正して進みましょう。箒に乗って、できるだけ急ぐの」
僕たちはララの意見に賛成し、それぞれが箒に乗ってできうる限りのスピードを出して魔法学校を目指して空を飛んでいく。
何も起こっていない現状が不気味でしかたがない。
もしかしたら僕たちが魔法の効果範囲内にいるだけで、ローシュテール本人には捕捉されていないのかもしれないが、それだって確信がない。
見つかっているのか、見つかっていないのか。
それが全くもってわからない、この状態は僕たちに大きくストレスを与えていた。
戌井は慌てつつも、別行動をしている二人に連絡をいれていた。
方角を修正して箒で飛ぶこと数十分、一時間も立っていない頃。
その状態に嫌気がさしたのか、みんなが黙っているなか戌井が口を開いた。
「何も起こんないね」
自分に言い聞かせるような、事態を確認するような物言いだった。
「幻覚は見せられてるかもしれないけどね」
虚勢だろうか、レイが戌井の言葉に強気の返事を返した。
ローレスが行方不明になってから__いや、ローレスの様子がおかしくなってかた、どこかで気を張っていることが多かった。
だから、多分、みんな安心したかったのかもしれない。
「ねえ、もしかして本当に私たちが迷った__」
__だけじゃないの?
戌井がそう言おうとしたところで、後方の重さが消えた。
慌てて振り向いた瞬間、戌井が居たはずの僕の後ろに、僕を見下ろすローシュテール・ブレイブが立っていた。
「ローレスもロンテ先輩もボロボロじゃないの。篠野部のほうは、大丈夫そうね」
「てかロンテ先輩、屋敷にいたのか?」
「馬車の件はカモフラージュだったんでしょうね」
「思ったよりも早かったね」
「あぁ、うん。ちょうど向かってた方向だったしね」
これからどうするかと言う話になった。
ロンテ先輩とローレスに配慮してリンデヒル商会を待つか、三人がいないことに気づかれて追手が来る前にできるだけ距離をつけるか。
その二択になった。
リンデヒル商会を待つ方法になると少し時間はかかるものの、転移魔法が使えるので距離は一気に稼げるし魔法学校にも帰れるだろう。
リンデヒル商会を待たない方向だと待つ方よりも早く行動できる分、追い付かれる可能性が低くなるが距離は稼げない。それに加え距離が距離なものだから
意見は二つに別れたが、ローシュテールをよく知るロンテ先輩の言葉によりリンデヒル商会を待たずに動くことになった。
「リンデヒル商会が来てる間に俺たちがいなくなってたんだ。ご禁制の薬のこともあるし、リンデヒル商会を怪しむだろう。接触しない方が安全だと思うよ」
「それ、商会ヤバイんじゃねえッスか?」
「薬のことは聞こうにも、ちゃんと聞けないだろう。父様に後ろめたいことをしている自覚があるのなら俺たちのこと、少なくとも俺の名前は出せないだろうし、いなくなったことを大々的に言えないだろう。無くなったものがあるから商会の荷台を改めるってのを建前にして荷物を見るだけで終わると思う。商会に被害はないんじゃないかな」
ロンテ先輩いわく、ローシュテールはアーネチカさんやレイスの二人が絡まなければ普段は比較的、理性的であり、迂闊な真似はしないのだそうだ。
つまりは地雷を踏まなければ外面の良いままと言うことだろう。
ロンテ先輩にしていることやレイス親子を追いかけていること、それに加えて外面のよさ、大分質の悪い話だ。
なるべく人の少ない、けれど危険性の無い道を情報共有しつつ進んでいくこと数時間。
戌井がまた人形をいじっていた。
「戌井、何してるんだ?」
「ん?これ?連絡手段だよ。ちょっと前に秘策って言ってたのがこれ。メメの傀儡魔法がかかってるんだけど、動きが連動するようになってるんだよね」
「動きが連動するのか?」
「そう。私がこの人形の左腕を動かしたらリンクされてる他の人形も左腕が動くの。他の人形と一心同体って感じ?」
なるほど、それで自分達が集合場所にいることを捜索班に知らせて、集合地点に来てもらったのか
「モールス信号みたいなものかな?あの動きをしたらこれ、この動きをしたらこれって感じに決めてあるんだ。数に限りがあるから各班に二つずつなんだけどね」
「十分だろ」
確か範囲の問題があると言っていたか。
そうだとしても、この時代で連絡用のものだとしたら十分の性能をしているだろう。
デメリットがあるとするのならば術者であるファーレンテインに何かあったとき魔法が途切れてつかえなくなること、それから人形を触るのに落ち着いた時間が必要なことだろうか。
あぁ、片手でいじるのは難しいから両手で触れる状態じゃないと連絡を取るのが難しいかもしれないな。
それから、いくらかしてアルマックが偵察のために透明になれる魔法の布と箒を使って上から追手が来ていないか確認することになった。
降りてきたアルマックから伝えられた情報はリンデヒル商会がとっくのとうに僕たちを追い越していたこと、それからリンデヒル商会は予定どおりの道を使っているはずなのに僕たちとあっていないこと。
「あれ?ルート的にどこかしらで合うはずだよね?」
「商会の方で何かあって道を変えたんじゃないかしら?」
「いや、でも見る限り俺たちが歩いてるところも、商会が通ってるところも、予定どおりの道のはずだぜ?」
「アタシの記憶が正しければ、道を間違えた覚えはないのだけれど……」
似たような道があった。
当事者でないものが聞いたらそれだけのことに思えるだろうが、この近くにある道は僕たちの歩いているところとは違って舗装されている道しかない。
今、僕たちが歩いているのは舗装はされていなくても、道の形になっていると言った感じのところだ。
舗装されている道と、されていない道、その二つ以外は獣道くらいしかない。
どちらかが、なにかが理由で決定的に間違えている。
目印の無い砂漠や草原ならいざ知らず、ちゃんとして道があって所々に目印になるようなものが点在している、この場でこんな状態になることがあるんだろうか。
「誰かコンパス持ってる?落として蓋割っちゃって、そのままなんだよね」
「アタシがもってるわ」
ララがそういって服のジャケットのポケットからコンパスを取り出す。
ララはコンパスをじっと見たかた思うと、その表情はジワジワと恐怖に染まっていく。
「……魔法学校の方向に向かっていたはずなのに、方角がずれてるわ」
一瞬にして空気が凍りついた。
「コンパス壊れてんじゃねえの?」
アルマックが頬をひきつらせながら、コンパスを取り出し方角を確認する。
「……俺のも壊れてるわ」
アルマックが持っているコンパスはララと同じ方角を指していた。
「流石に二つの同時に壊れるのは、ないわよね?」
レイが不安そうに言う。
二つ同時にコンパスが壊れるのは、流石にことができすぎている気がする。
だが、その二つが導きだした方角が真実なのだとしたら、僕たちは魔法学校に向かっているはずが大きく道を逸れていたことになる。
しかも、それも誰も気がついていない状態だった。
「父様の……」
揃いも揃って何が起こっているのか理解できず、沈黙が場を支配する中、ロンテ先輩が口を開いた。
「父様の得意な魔法が幻覚を見せるもの、だったはず」
仮に、それで僕らが道に迷ってしまったのだとしたら、もう僕らはローシュテールに見つかっていることになる。
それに気がついた僕の背中に冷たいものが這う。
「とにかく、方向を修正して進みましょう。箒に乗って、できるだけ急ぐの」
僕たちはララの意見に賛成し、それぞれが箒に乗ってできうる限りのスピードを出して魔法学校を目指して空を飛んでいく。
何も起こっていない現状が不気味でしかたがない。
もしかしたら僕たちが魔法の効果範囲内にいるだけで、ローシュテール本人には捕捉されていないのかもしれないが、それだって確信がない。
見つかっているのか、見つかっていないのか。
それが全くもってわからない、この状態は僕たちに大きくストレスを与えていた。
戌井は慌てつつも、別行動をしている二人に連絡をいれていた。
方角を修正して箒で飛ぶこと数十分、一時間も立っていない頃。
その状態に嫌気がさしたのか、みんなが黙っているなか戌井が口を開いた。
「何も起こんないね」
自分に言い聞かせるような、事態を確認するような物言いだった。
「幻覚は見せられてるかもしれないけどね」
虚勢だろうか、レイが戌井の言葉に強気の返事を返した。
ローレスが行方不明になってから__いや、ローレスの様子がおかしくなってかた、どこかで気を張っていることが多かった。
だから、多分、みんな安心したかったのかもしれない。
「ねえ、もしかして本当に私たちが迷った__」
__だけじゃないの?
戌井がそう言おうとしたところで、後方の重さが消えた。
慌てて振り向いた瞬間、戌井が居たはずの僕の後ろに、僕を見下ろすローシュテール・ブレイブが立っていた。
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