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蛇令嬢
76 決闘
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決闘当日。
指定時刻の二時間前、永華はいつも放課後に戦闘訓練を行う森で素振りをしていた。
ブン、ブン、ブン__
汗を流しながら、一心不乱に木刀を振っていた。
「永華」
ララに声をかけられ、素振りをやめて振り替えるとタオルを差し出された
差し出されたタオルを礼と共に受け取り、汗が伝う額を拭う。
「そろそろやめたら?決闘の前に疲れちゃうわよ」
「ん~……わかってるんだけど、落ち着かなくってさあ。ソワソワするくらいなら素振りでもして落ち着こうと思ってさ」
元の世界において他の国と比べれば治安の良い日本で生まれ育った子供である、永華。いくら剣道等を習っていようとも、試合に慣れていようとも異世界での魔法を使った決闘ともなると落ち着かなくなってしまうのは仕方のないことだった。
幸いなのは木刀の持ち込みを許可されたことだ。真剣じゃないが、それでいいのかと聞かれてときは教師相手に“何言ってんだ、こいつ”と思ってしまった。
箱庭試験の時からいくらかランクダウンしてるが会場にも魔法がかかっており致命傷を負うと、その怪我が無かったことになり強制的に医務室に飛ばされるらしい。だから真剣を使おうが大丈夫なんだと。
魔法のコストの都合上、軽症は治さず放置だが、それも保険医が治してくれるらしい。
まぁ、箱庭試験と似た感じだと思ってくれれば良い。私もその認識だ。
「わかるけど、疲れてちゃできることもできないわよ。決闘まで、あと二時間なのよ」
「……そうなんだよねえ」
「お水いる?」
「いる」
丁度のどが渇いていたのでありがたい。勢いよく飲んでいるとララの後ろからミュー、ローレスがやってきた。
「貴女、寒くないの?」
「むしろ暑いくらいだよ」
「どれだけやってたのよ……」
いったい何時間、素振りをしていたのかわからないが長い間運動していたから体温が上がって汗が流れている。
「努力して汗が滴る永華ちゃん、セクシーだな……」
「しばくわよ、ローレス」
「しゅみましぇん。綺麗って言う意味言ったつもりでした……」
「はは、誉めてもなにもでないよ~」
出るとしたら、いつか和食を食べられる権利くらいかな?あとはレシピ。
ローレスいつかのメメみたいになってるのは置いといてだ。ローレスもミューも通常運転に見えてどこかソワソワしている。私が負ければミューやローレスにお鉢が回ってくるのだから当選と言えば当然だろう。
「そういえば、他は?」
ここにいるのは私とミュー、ローレス、ララのお四人だけで、ふと他の四人の行方が気になった。
「あぁ、篠野部とレーピオは図書館、メメはルールを覚えるって言ってベイノットはそれに付き合ってる感じ」
半々にわかれたのかなら気にすることもないかな?
「そういえば振ってた、その棒って何?前のとは違うよな」
ローレスが指摘したのは私が持っていた木刀だ。いま使っているのを買うまでは、バイスの町の近くの森で真っ直ぐで長くて太い枝を拾ってきて、それっぽい形にして柄になる部分にケガ防止に手持ちの糸を巻いて__って色々したものを使っていた。
正直、壊れやすいし本物の木刀よりも軽いから魔方陣使って強度上げたり重くしたりと工夫してた。
あぁ、でも魔方陣使ってからも打ち込みはしてなかったね。流石に何度も作り治す気はでなかったし、枝探しが難しかった。角材削ってってのもあるけど、角材に使うお金とか無かったし。
それとなく日之出の店主の、佐之助さんに聞いてみたところ売っていた。あそこ売ってるのは食材だけではなく、日本__ではなく極東の国由来のものはわりと何でも置いてるらしい。
「これ?木刀だよ。今まで使ってたのは自分でそれっぽくした木刀もどき的な……?」
「なんとなく言いたいことはわかった」
……まぁ、伝わったなら良いや。
それはそうとだんだんと寒くなってきたな。
近くの木の枝に引っかけておいた上着を取って、袖を通す。
一旦寮に戻って、お風呂に入って少し休もう。二時間あるし、少しくらい休めるでしょう。
「一旦寮に戻るね。お風呂入りたいから」
「そう?お湯はってないわよ」
「別に良いよ。そこまでゆっくりしてる時間ないし」
早くお風呂に入ろう。
どうせ、また汗や土やらで汚れるだろうけどね。
時計の針は決闘の開始時刻の二分前を指し示していた。
最初はこれから始まることに対する恐怖や不安感から落ち着けずにいたが、ここまで来ると恐怖も不安も引っ込んでしまった。
会場の中、ステージので入り口で木刀を抱えて待っていると拡声器でも使ったかのような大きな声が聞こえてきた。魔法でやっていると生徒が言っていたが、この世界はちょっと魔法に頼りすぎな気がする。
「さあ、始まりますのは一年生と二年生の決闘!入学して二ヶ月程度しかたっていないヒヨコ、永華・戌井VS風魔法の天才と名高い最近荒れ気味のお嬢様、カリヤ・ベイベルツ!!!」
木刀を刀の要領で腰に下げ、ステージに出る。向かい側から令嬢があるいてくるのが見える。
私たちが姿を表すとただでさえうるさかった観客の歓声が倍以上になって思わず顔をしかめてしまう。
観客席には、たくさんの生徒と教師や教員がおり席がほとんど埋まっていた。
興味本位でキョロキョロと回りを見渡してみると、どうやら生徒主体でどちらが勝つか賭けが行われていた。
「いや、賭けて……」
この学校、名門の癖に治安が良いのか悪いのか全くわかんないな……。
賭けをしている生徒に呆れつつも中心地点に足を進めていく。
中心地点、少し手前で足を止める。
「切り刻まれる覚悟はありまして?」
「下克上、されても文句言わないでね?先輩」
両者位置につき杖を取り出し、いつでも魔方陣を使えるように左手に糸を握りこむ。
審判から決闘開始の合図が出るまで互いを睨み会うこと数秒、合図が出された。
「炎よ、彼の者を燃やし邪なる者を焼き払え!フレイム!」
先制を取ったのは永華__ではなくカリヤだった。
永華の魔法により作り出された三つの火球は勢いよくカリヤの元に飛んでいったはずだったが、見えない何かに二つに切られ的はずれな方向に飛んでいく。
その光景を見た瞬間、永華は察知する。見えない風の刃が自分に向かってきているのだと。
すぐにその場から飛び退けば余程ギリギリだったらしく、ジャケットの裾が少しだけ切られてしまった。
当たることのなかった刃は地面をえぐる。今の攻撃で退場させるき満々な攻撃力だった。
「一年生にしてはなかなかの良い動きをしますわね」
「お褒めにあずかりどうも……」
令嬢に誉められても嬉しくない……。
一応対策は練ってきたものの、その対策だった回数制限付きの爆弾見たなものだからなるべく使いたくない。
風魔法でも相殺できない魔法を使うか。
「太陽の恵、みっ!?」
詠唱をしようとしたところで風切り音が聞こえ慌てるも時既に遅し、何とか体をそらしほほを軽く切られた程度ですんだ。
「……」
「魔導師の弱点。その一、詠唱中は無防備になること。弱点をわざわざだしてくれているんですから、突かない手はないですわ」
ニチアサのキャラクターが変身中に攻撃された気分だ。文句も言いたくなったが、ド正論だったから口をつぐんだ。
切られた頬がヒリヒリと痛む。察するに風の刃とやらはずいぶんと切れ味が良いらしい、できることならこれ以上はうけたくない。
令嬢を睨み付け、風切り音に注意しながら考える。
風の刃は魔力で作られているものがから魔力探知でも使えばすぐに引っ掛かるだろう。だが、令嬢がそれを許してくれるだろうか……。
試しに魔力探知の魔法を詠唱を始めてみれば凄まじい風切り音がなって、見えない刃がとんできた。それを使うなと忠告された気分だ。いや、忠告と言うよりも脅迫?ともかく腕と足に三ヶ所、裂傷が出来上がっている。
「いった……」
傷口から血が滴り落ちていくのが見える。
……あやっぱり魔力探知なんてさせてくれないか。
これ、どうしようかな。対策使っても良いけどあとに残しておきたいんだよね。
指定時刻の二時間前、永華はいつも放課後に戦闘訓練を行う森で素振りをしていた。
ブン、ブン、ブン__
汗を流しながら、一心不乱に木刀を振っていた。
「永華」
ララに声をかけられ、素振りをやめて振り替えるとタオルを差し出された
差し出されたタオルを礼と共に受け取り、汗が伝う額を拭う。
「そろそろやめたら?決闘の前に疲れちゃうわよ」
「ん~……わかってるんだけど、落ち着かなくってさあ。ソワソワするくらいなら素振りでもして落ち着こうと思ってさ」
元の世界において他の国と比べれば治安の良い日本で生まれ育った子供である、永華。いくら剣道等を習っていようとも、試合に慣れていようとも異世界での魔法を使った決闘ともなると落ち着かなくなってしまうのは仕方のないことだった。
幸いなのは木刀の持ち込みを許可されたことだ。真剣じゃないが、それでいいのかと聞かれてときは教師相手に“何言ってんだ、こいつ”と思ってしまった。
箱庭試験の時からいくらかランクダウンしてるが会場にも魔法がかかっており致命傷を負うと、その怪我が無かったことになり強制的に医務室に飛ばされるらしい。だから真剣を使おうが大丈夫なんだと。
魔法のコストの都合上、軽症は治さず放置だが、それも保険医が治してくれるらしい。
まぁ、箱庭試験と似た感じだと思ってくれれば良い。私もその認識だ。
「わかるけど、疲れてちゃできることもできないわよ。決闘まで、あと二時間なのよ」
「……そうなんだよねえ」
「お水いる?」
「いる」
丁度のどが渇いていたのでありがたい。勢いよく飲んでいるとララの後ろからミュー、ローレスがやってきた。
「貴女、寒くないの?」
「むしろ暑いくらいだよ」
「どれだけやってたのよ……」
いったい何時間、素振りをしていたのかわからないが長い間運動していたから体温が上がって汗が流れている。
「努力して汗が滴る永華ちゃん、セクシーだな……」
「しばくわよ、ローレス」
「しゅみましぇん。綺麗って言う意味言ったつもりでした……」
「はは、誉めてもなにもでないよ~」
出るとしたら、いつか和食を食べられる権利くらいかな?あとはレシピ。
ローレスいつかのメメみたいになってるのは置いといてだ。ローレスもミューも通常運転に見えてどこかソワソワしている。私が負ければミューやローレスにお鉢が回ってくるのだから当選と言えば当然だろう。
「そういえば、他は?」
ここにいるのは私とミュー、ローレス、ララのお四人だけで、ふと他の四人の行方が気になった。
「あぁ、篠野部とレーピオは図書館、メメはルールを覚えるって言ってベイノットはそれに付き合ってる感じ」
半々にわかれたのかなら気にすることもないかな?
「そういえば振ってた、その棒って何?前のとは違うよな」
ローレスが指摘したのは私が持っていた木刀だ。いま使っているのを買うまでは、バイスの町の近くの森で真っ直ぐで長くて太い枝を拾ってきて、それっぽい形にして柄になる部分にケガ防止に手持ちの糸を巻いて__って色々したものを使っていた。
正直、壊れやすいし本物の木刀よりも軽いから魔方陣使って強度上げたり重くしたりと工夫してた。
あぁ、でも魔方陣使ってからも打ち込みはしてなかったね。流石に何度も作り治す気はでなかったし、枝探しが難しかった。角材削ってってのもあるけど、角材に使うお金とか無かったし。
それとなく日之出の店主の、佐之助さんに聞いてみたところ売っていた。あそこ売ってるのは食材だけではなく、日本__ではなく極東の国由来のものはわりと何でも置いてるらしい。
「これ?木刀だよ。今まで使ってたのは自分でそれっぽくした木刀もどき的な……?」
「なんとなく言いたいことはわかった」
……まぁ、伝わったなら良いや。
それはそうとだんだんと寒くなってきたな。
近くの木の枝に引っかけておいた上着を取って、袖を通す。
一旦寮に戻って、お風呂に入って少し休もう。二時間あるし、少しくらい休めるでしょう。
「一旦寮に戻るね。お風呂入りたいから」
「そう?お湯はってないわよ」
「別に良いよ。そこまでゆっくりしてる時間ないし」
早くお風呂に入ろう。
どうせ、また汗や土やらで汚れるだろうけどね。
時計の針は決闘の開始時刻の二分前を指し示していた。
最初はこれから始まることに対する恐怖や不安感から落ち着けずにいたが、ここまで来ると恐怖も不安も引っ込んでしまった。
会場の中、ステージので入り口で木刀を抱えて待っていると拡声器でも使ったかのような大きな声が聞こえてきた。魔法でやっていると生徒が言っていたが、この世界はちょっと魔法に頼りすぎな気がする。
「さあ、始まりますのは一年生と二年生の決闘!入学して二ヶ月程度しかたっていないヒヨコ、永華・戌井VS風魔法の天才と名高い最近荒れ気味のお嬢様、カリヤ・ベイベルツ!!!」
木刀を刀の要領で腰に下げ、ステージに出る。向かい側から令嬢があるいてくるのが見える。
私たちが姿を表すとただでさえうるさかった観客の歓声が倍以上になって思わず顔をしかめてしまう。
観客席には、たくさんの生徒と教師や教員がおり席がほとんど埋まっていた。
興味本位でキョロキョロと回りを見渡してみると、どうやら生徒主体でどちらが勝つか賭けが行われていた。
「いや、賭けて……」
この学校、名門の癖に治安が良いのか悪いのか全くわかんないな……。
賭けをしている生徒に呆れつつも中心地点に足を進めていく。
中心地点、少し手前で足を止める。
「切り刻まれる覚悟はありまして?」
「下克上、されても文句言わないでね?先輩」
両者位置につき杖を取り出し、いつでも魔方陣を使えるように左手に糸を握りこむ。
審判から決闘開始の合図が出るまで互いを睨み会うこと数秒、合図が出された。
「炎よ、彼の者を燃やし邪なる者を焼き払え!フレイム!」
先制を取ったのは永華__ではなくカリヤだった。
永華の魔法により作り出された三つの火球は勢いよくカリヤの元に飛んでいったはずだったが、見えない何かに二つに切られ的はずれな方向に飛んでいく。
その光景を見た瞬間、永華は察知する。見えない風の刃が自分に向かってきているのだと。
すぐにその場から飛び退けば余程ギリギリだったらしく、ジャケットの裾が少しだけ切られてしまった。
当たることのなかった刃は地面をえぐる。今の攻撃で退場させるき満々な攻撃力だった。
「一年生にしてはなかなかの良い動きをしますわね」
「お褒めにあずかりどうも……」
令嬢に誉められても嬉しくない……。
一応対策は練ってきたものの、その対策だった回数制限付きの爆弾見たなものだからなるべく使いたくない。
風魔法でも相殺できない魔法を使うか。
「太陽の恵、みっ!?」
詠唱をしようとしたところで風切り音が聞こえ慌てるも時既に遅し、何とか体をそらしほほを軽く切られた程度ですんだ。
「……」
「魔導師の弱点。その一、詠唱中は無防備になること。弱点をわざわざだしてくれているんですから、突かない手はないですわ」
ニチアサのキャラクターが変身中に攻撃された気分だ。文句も言いたくなったが、ド正論だったから口をつぐんだ。
切られた頬がヒリヒリと痛む。察するに風の刃とやらはずいぶんと切れ味が良いらしい、できることならこれ以上はうけたくない。
令嬢を睨み付け、風切り音に注意しながら考える。
風の刃は魔力で作られているものがから魔力探知でも使えばすぐに引っ掛かるだろう。だが、令嬢がそれを許してくれるだろうか……。
試しに魔力探知の魔法を詠唱を始めてみれば凄まじい風切り音がなって、見えない刃がとんできた。それを使うなと忠告された気分だ。いや、忠告と言うよりも脅迫?ともかく腕と足に三ヶ所、裂傷が出来上がっている。
「いった……」
傷口から血が滴り落ちていくのが見える。
……あやっぱり魔力探知なんてさせてくれないか。
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