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異世界転移
13 遭遇
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深淵を覗きかけてきたはや数分ほど市場のざわめきをBGMに、ただただ一人でぼーっとしていた。
暇である、とてつもなく暇である。このままだとまた深淵を覗きそうだ、そうじゃなくても余計なこと考えそう。
「はあ、暇だなー」
暇すぎてあくびくが漏れてくる。朝早く起きたのもあるからだんだん眠たくなってきた。
__カツン、カツン__
いやに響く足音が聞こえた。少し気になって路地の置くになる曲がり角を覗き込むと真っ黒のマントを来た人が、眼前にいた。
「へあ!?」
「え!?」
不意打ちといってもいい永華の登場に相手が避けきれるわけもなく、眠気で判断能力が鈍っている永華が避けれるわけもなく、二人はぶつかることとなった。
「おわ!?」
「ちょっ!だ、大丈夫かい?」
相手は鍛えているのか、それとも体感がいいのか。二人がぶつかった瞬間吹き飛んで、地面にコロンと転がった。
「いあてて」
「すまない、考え事していた」
「あ、大丈夫、で……す」
永華に手を差し出したことにより見上げる形になり、かぶっていたフードの中が見えた。
その顔立ちは中性的で綺麗と評されるようなものだった。何より目を引いたのは、その頭に生えている黒い角と薄い髪の色と同じイヌ科の耳だった。
どことなく、見覚えのあるような……。
「ほんとに大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です!」
見覚えの正体を探ろうとしていたら集中していたらしい、青年の声により慌てて立ち上がる。
「こっちこそ、すみませんでした。お兄さんは……ダイジョブそうですね」
私を弾き飛ばしたんだし、ぶつかったくらいで怪我なんてしないか。
「ああ、君は……」
「ん?お兄さん?」
なぜか青年は永華を見つめ、黙り込んでしまう。不思議に思った永華は呼び掛けるも反応しない、無反応というよいはどこか動揺しているようで視線をあちこちにさ迷わせている。
そんな様子にやはりどこかぶつけて具合が悪くなったのだろうかと不安になる
「ええっと、お兄さん?やっぱ怪我とかしました?」
「え?あ、ああ、大丈夫だ。それはそうと君の名前は?」
流石に不信感がわいた。なんのために名前を聞いたんだろうか。
「そういうお兄さんは?」
「リコス、名字は……ファウスト。リコス・ファウストだ」
聞いたことはない、それ事態はおかしくないがなんで名字をいいよどんだ?
「……」
逃げるべきか。
退路を確認する。今も人は多いがかえって好都合、紛れ込んでしばえ見つからないかもしれない。
一歩、下がれば青年は警戒されていることに気がついたのか、慌てたようすで弁解し出した。
「あ、怪しいものじゃ……いや、十分怪しいか。えっと、どうしようか。なんか、フレイアに似てるから名前聞いただけなんだが。ん~……」
いや、フレイアって誰だよ。
一人心の中でツッコミをする、また一歩後ろに下がっていく。青年はその様子を見て頭を抱えた。
「あ~、怖がらせてすまない。実は君が……その、雰囲気というか……どことなく婚約者に似ていてきになったんだ」
「え、婚約者?」
あれ?もしかして私の方が疑われてる?確かに婚約者に似た知らない人物なら名前だって聞きたくなるか。
「ああ、しかも彼女は天涯孤独だから余計にね」
「そういう……なんか、自分の方もすみません」
「いや、僕が怪しかったのが悪いから。それで君、名前は何て言うんだい?」
「戌井永華です。あ、エイカ・イヌイの方がわかりやすいかな?」
こう言う場合ってどう名乗るのが正解なんだろうか。
「い、ぬい?」
「うん?戌井ですよ?」
この一瞬だけリコスはあり得ない、幽霊を見たとでも言いたげな表情をしていたが、永華はそれが見えていなかった。
「……そうかい」
少し暗い声でリコスが返事をするものの、不思議には思うが気には止めなかった。
「君、なんでここに一人でいるんだい?迷子かな?」
「お恥ずかしながら。でも連れが人に聞きに行くって行っちゃって、置いてきぼりくらったんです。ひどいですよねー」
「確認すべきか……」
青年が小さな声で呟く。それは周囲の喧騒に飲まれて、誰にも届かなかった。
「ん?リコスさん、どうかしました?」
「いや、僕もここにいよう。流石に君一人だけは心配だ」
「え、いいんです?」
「ああ、僕も暇だからね」
「やっりー」
これならお互い暇を潰せる、人を待つのにはちょうどいいだろう。
なにより永華は一人にならずにすむことに喜んでいた。
「買い出しかい?」
「居候してるところのお使いできました」
「そうなのかい。もしかしてここに来たのは始めて?」
「はい、昨日ですね」
リコスは壁を背もたれにして地面に座り込む。どうやら長い間この場にいることになると予想したいるらしい。永華も少し間を空けて、隣に腰を下ろした。
「昨日?そりゃ迷子にだってなるか」
「あはは、まあ。そういえば、リコスさんはなんで名字を言うのに戸惑ってたんですか?」
「ああ、実は婿にはいる予定でね。婚約者の姓を使っているんだ。でも、なんか慣れなくて」
「ほぉ~」
聞いてみれば随分と幸せな理由だった。なんだかこちらも幸せになってくる、自然と口角が上がった。
「その婚約者さんは私と似ているらしいけど、どんなん人なんです?」
「……そうだね、強いていうなら太陽のような人かな」
「太陽?」
「うん、君もそうだろう?」
「え?いや、自分が太陽なんておこがましいですよ」
「ふふ、どうだろうね。君もフレイアも明るくて、元気で、よく笑う。太陽のような人だと思うけど?」
「そ、そうですか?太陽ってなんか恥ずかしいような……」
リコスの物言いはまるで普段の永華を知っているような、そんな言葉だった。始めてあったのになんでそんなことがいえるのか、リコスの言葉に照れている永華はそんなこと気づきもしない。
「フレイアさん?のこと大好きなんですね」
「ああ、何にかえても、何を失ってもいいと思えるほどに僕は彼女を愛してる」
「わあ、凄い大きく出た」
どうやらリコスさんはとても思いお方だったらしい、綺麗な笑顔でそう言い放った。
「まあね。フレイアがくれたものってたくさんあるんだ。家族も、美味しいものも、たくさん貰ったんだ」
「フレイアさん、凄いですね」
「そう、フレイアは凄いんだ」
リコスの表情はまるで恋する乙女のようで、見ているだけで恥ずかしくなってくるような、フレイアに対する愛情がわかるような、そういう甘い表情だった。
「ほあ~……」
なんかこっちが照れてくるな。
それから特段話す話題もなかった永華はリコスの惚気を聞くことになり、あったこともないフレイアに詳しくなっていった。
砂糖を吐きそうな惚気を聞くこと十分程度、リコスはふと顔を上げて市場の方を見た。
「そういえば君の連れはなだ来ないんだね。どこまでいってるんだろう」
「あ、確かに」
ブラックコーヒーが欲しいと思いつつ、どうしたんだろう、と市場の方を覗き込んだ。どこにも篠野部の姿は見えない、もしかすると誰に絡まれているんだろうか。
「君の連れってどんな子なの?」
「へ?篠野部?」
「篠野部というのかい?」
「はい。ん~、なんか、目が冷たいやつ。会話はするけど自分からは早々無いし、なんなら辛辣なこともある、正直苦手かな」
「……苦手なんだ。それならなんで一緒にいるの?」
「不本意とは言え二人揃って未知の土地に来ちゃって、流石に一人になるのは危ないってことで」
「君、僕が来てなきゃ一人だったじゃないか」
確かに、とわいえこれは仕方のかたの無いことだ。
「人混みに流されたら面倒だって置いてかれたんですよ」
「なるほどね。ちなみにどんなところが苦手なんだい?」
「……冷たい目が苦手、死んでるみたいで」
「死んでる、か」
「嫌なことを思い出すんですよ……」
脳裏によぎるのは真っ赤に染まった部屋と、死んだ四対の瞳。これを思い出す度に腹の部分がグルグルと気持ち悪くなっていく、あれから十年近くたった今でも悪夢に見るトラウマなのだ。
それを連想させてしまう篠野部の目はいつまでたっても苦手だった。
「そりゃ勝手に重ねてる私が悪いけど、でもダメなんです。だから、あんまり目を合わせないようにしてるんだけどそれでも苦手意識が消えなくて……」
「そういうことか」
ああ、自分が嫌になってくる。
自己嫌悪に飲まれる永華のまとう空気は重たく、暗いものとなっていた。
永華がカルタのことは苦手ではあるが嫌いではない。文武両道容姿端麗、だがそれを鼻にかけることはなく、わかりにくいが優しさと気遣いのできる人だと思っている。苦手ではあるが、尊敬できる人物だとも。
だからこそ、過去のトラウマに引きずられて彼を苦手に思う自分を嫌悪していた。
暇である、とてつもなく暇である。このままだとまた深淵を覗きそうだ、そうじゃなくても余計なこと考えそう。
「はあ、暇だなー」
暇すぎてあくびくが漏れてくる。朝早く起きたのもあるからだんだん眠たくなってきた。
__カツン、カツン__
いやに響く足音が聞こえた。少し気になって路地の置くになる曲がり角を覗き込むと真っ黒のマントを来た人が、眼前にいた。
「へあ!?」
「え!?」
不意打ちといってもいい永華の登場に相手が避けきれるわけもなく、眠気で判断能力が鈍っている永華が避けれるわけもなく、二人はぶつかることとなった。
「おわ!?」
「ちょっ!だ、大丈夫かい?」
相手は鍛えているのか、それとも体感がいいのか。二人がぶつかった瞬間吹き飛んで、地面にコロンと転がった。
「いあてて」
「すまない、考え事していた」
「あ、大丈夫、で……す」
永華に手を差し出したことにより見上げる形になり、かぶっていたフードの中が見えた。
その顔立ちは中性的で綺麗と評されるようなものだった。何より目を引いたのは、その頭に生えている黒い角と薄い髪の色と同じイヌ科の耳だった。
どことなく、見覚えのあるような……。
「ほんとに大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です!」
見覚えの正体を探ろうとしていたら集中していたらしい、青年の声により慌てて立ち上がる。
「こっちこそ、すみませんでした。お兄さんは……ダイジョブそうですね」
私を弾き飛ばしたんだし、ぶつかったくらいで怪我なんてしないか。
「ああ、君は……」
「ん?お兄さん?」
なぜか青年は永華を見つめ、黙り込んでしまう。不思議に思った永華は呼び掛けるも反応しない、無反応というよいはどこか動揺しているようで視線をあちこちにさ迷わせている。
そんな様子にやはりどこかぶつけて具合が悪くなったのだろうかと不安になる
「ええっと、お兄さん?やっぱ怪我とかしました?」
「え?あ、ああ、大丈夫だ。それはそうと君の名前は?」
流石に不信感がわいた。なんのために名前を聞いたんだろうか。
「そういうお兄さんは?」
「リコス、名字は……ファウスト。リコス・ファウストだ」
聞いたことはない、それ事態はおかしくないがなんで名字をいいよどんだ?
「……」
逃げるべきか。
退路を確認する。今も人は多いがかえって好都合、紛れ込んでしばえ見つからないかもしれない。
一歩、下がれば青年は警戒されていることに気がついたのか、慌てたようすで弁解し出した。
「あ、怪しいものじゃ……いや、十分怪しいか。えっと、どうしようか。なんか、フレイアに似てるから名前聞いただけなんだが。ん~……」
いや、フレイアって誰だよ。
一人心の中でツッコミをする、また一歩後ろに下がっていく。青年はその様子を見て頭を抱えた。
「あ~、怖がらせてすまない。実は君が……その、雰囲気というか……どことなく婚約者に似ていてきになったんだ」
「え、婚約者?」
あれ?もしかして私の方が疑われてる?確かに婚約者に似た知らない人物なら名前だって聞きたくなるか。
「ああ、しかも彼女は天涯孤独だから余計にね」
「そういう……なんか、自分の方もすみません」
「いや、僕が怪しかったのが悪いから。それで君、名前は何て言うんだい?」
「戌井永華です。あ、エイカ・イヌイの方がわかりやすいかな?」
こう言う場合ってどう名乗るのが正解なんだろうか。
「い、ぬい?」
「うん?戌井ですよ?」
この一瞬だけリコスはあり得ない、幽霊を見たとでも言いたげな表情をしていたが、永華はそれが見えていなかった。
「……そうかい」
少し暗い声でリコスが返事をするものの、不思議には思うが気には止めなかった。
「君、なんでここに一人でいるんだい?迷子かな?」
「お恥ずかしながら。でも連れが人に聞きに行くって行っちゃって、置いてきぼりくらったんです。ひどいですよねー」
「確認すべきか……」
青年が小さな声で呟く。それは周囲の喧騒に飲まれて、誰にも届かなかった。
「ん?リコスさん、どうかしました?」
「いや、僕もここにいよう。流石に君一人だけは心配だ」
「え、いいんです?」
「ああ、僕も暇だからね」
「やっりー」
これならお互い暇を潰せる、人を待つのにはちょうどいいだろう。
なにより永華は一人にならずにすむことに喜んでいた。
「買い出しかい?」
「居候してるところのお使いできました」
「そうなのかい。もしかしてここに来たのは始めて?」
「はい、昨日ですね」
リコスは壁を背もたれにして地面に座り込む。どうやら長い間この場にいることになると予想したいるらしい。永華も少し間を空けて、隣に腰を下ろした。
「昨日?そりゃ迷子にだってなるか」
「あはは、まあ。そういえば、リコスさんはなんで名字を言うのに戸惑ってたんですか?」
「ああ、実は婿にはいる予定でね。婚約者の姓を使っているんだ。でも、なんか慣れなくて」
「ほぉ~」
聞いてみれば随分と幸せな理由だった。なんだかこちらも幸せになってくる、自然と口角が上がった。
「その婚約者さんは私と似ているらしいけど、どんなん人なんです?」
「……そうだね、強いていうなら太陽のような人かな」
「太陽?」
「うん、君もそうだろう?」
「え?いや、自分が太陽なんておこがましいですよ」
「ふふ、どうだろうね。君もフレイアも明るくて、元気で、よく笑う。太陽のような人だと思うけど?」
「そ、そうですか?太陽ってなんか恥ずかしいような……」
リコスの物言いはまるで普段の永華を知っているような、そんな言葉だった。始めてあったのになんでそんなことがいえるのか、リコスの言葉に照れている永華はそんなこと気づきもしない。
「フレイアさん?のこと大好きなんですね」
「ああ、何にかえても、何を失ってもいいと思えるほどに僕は彼女を愛してる」
「わあ、凄い大きく出た」
どうやらリコスさんはとても思いお方だったらしい、綺麗な笑顔でそう言い放った。
「まあね。フレイアがくれたものってたくさんあるんだ。家族も、美味しいものも、たくさん貰ったんだ」
「フレイアさん、凄いですね」
「そう、フレイアは凄いんだ」
リコスの表情はまるで恋する乙女のようで、見ているだけで恥ずかしくなってくるような、フレイアに対する愛情がわかるような、そういう甘い表情だった。
「ほあ~……」
なんかこっちが照れてくるな。
それから特段話す話題もなかった永華はリコスの惚気を聞くことになり、あったこともないフレイアに詳しくなっていった。
砂糖を吐きそうな惚気を聞くこと十分程度、リコスはふと顔を上げて市場の方を見た。
「そういえば君の連れはなだ来ないんだね。どこまでいってるんだろう」
「あ、確かに」
ブラックコーヒーが欲しいと思いつつ、どうしたんだろう、と市場の方を覗き込んだ。どこにも篠野部の姿は見えない、もしかすると誰に絡まれているんだろうか。
「君の連れってどんな子なの?」
「へ?篠野部?」
「篠野部というのかい?」
「はい。ん~、なんか、目が冷たいやつ。会話はするけど自分からは早々無いし、なんなら辛辣なこともある、正直苦手かな」
「……苦手なんだ。それならなんで一緒にいるの?」
「不本意とは言え二人揃って未知の土地に来ちゃって、流石に一人になるのは危ないってことで」
「君、僕が来てなきゃ一人だったじゃないか」
確かに、とわいえこれは仕方のかたの無いことだ。
「人混みに流されたら面倒だって置いてかれたんですよ」
「なるほどね。ちなみにどんなところが苦手なんだい?」
「……冷たい目が苦手、死んでるみたいで」
「死んでる、か」
「嫌なことを思い出すんですよ……」
脳裏によぎるのは真っ赤に染まった部屋と、死んだ四対の瞳。これを思い出す度に腹の部分がグルグルと気持ち悪くなっていく、あれから十年近くたった今でも悪夢に見るトラウマなのだ。
それを連想させてしまう篠野部の目はいつまでたっても苦手だった。
「そりゃ勝手に重ねてる私が悪いけど、でもダメなんです。だから、あんまり目を合わせないようにしてるんだけどそれでも苦手意識が消えなくて……」
「そういうことか」
ああ、自分が嫌になってくる。
自己嫌悪に飲まれる永華のまとう空気は重たく、暗いものとなっていた。
永華がカルタのことは苦手ではあるが嫌いではない。文武両道容姿端麗、だがそれを鼻にかけることはなく、わかりにくいが優しさと気遣いのできる人だと思っている。苦手ではあるが、尊敬できる人物だとも。
だからこそ、過去のトラウマに引きずられて彼を苦手に思う自分を嫌悪していた。
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