1 / 234
異世界転移
0 終業式
しおりを挟む
生徒が集めれば狭く感じる、暑苦しい体育館。今日は終業式だ。
備え付けのスピーカーから校歌が流れて生徒たちが歌いだす。自分の声も混じる歌声をどこか他人事のように聞き流す。
早く終わんないかな。
きっと誰もが思ってることだ。優等生も、ギャルも、不良も、普通の子も、皆。
時間の進むスピードが遅く感じるなか、何とか他人事に思いつつ終業式を乗りこえ帰路に着く。一緒に帰ろうと何度か誘われたがそれも断って足早に進む。
帰ったらエアコンかけた部屋でアイス食べよう。
呑気にそんなこと思っていたらプリーツスカートのポケットにいれているスマホからメッセージが来たことをしらせる音がなった。
少し無視しようかと思ったが学校や家からの連絡ならそのあとが面倒だ。そう考えた私は道のはしによってメッセージの内容を確認した。
送ってきたのは家、内容は醤油買い忘れたから買ってきてほしいと言うものだった。
「……自分で買いにいきなよ、めんどくさいなあ」
誰も知り合いがいないのをいいことに一人文句を吐く。
アイスはもう少しお預けらしい。
仕方なくさっきまでとは違う、重い足取りで駅前のスーパーへと向かった。駅の前にあるせいで人の数は他より多いであろうこのスーパーはいつも通り五月蝿いざわめきが響いている。
「醤油、醤油っと」
一直線に調味料が並ぶ棚に向かっていく。
ふと視界に小学生くらいの子供がはいった。どうも母親と買い物に来ているらしい、幼いその子は随分としっかりしているのか母にお願いされた商品を持ってきて籠にいれて、そして褒められていた。
いつかの私もあんなことしたな。今は一人寂しくお使いだけどさ。
「お姉ちゃん、僕チョコがいい」
「ええ、こんなに暑いと溶けちゃうよお」
耳にはいったのはさっきのこと同じくらいの女の子と、いくつか下の男の子。会話からして姉弟なんだろう。
二人でおやつでも買いに来たのかあーでもない、こーでもないよ思案している。そのうち決まったのか財布を握ったお姉ちゃんにてを引かれ弟くんは満足そうにレジに向かった。
「あんなこともあったなあ」
醤油のある棚の前に着くと先客がいた。抱っこ紐を使って小さい赤ちゃんを抱えているお母さんだ。
赤ちゃんは私のことが気になるのかこっちを見ている。お母さんは調味料の方に気を取られているのか気づいていない。
「あーうぅー?」
「ふふ、ばぁー」
「んふふ、きゃあー」
こちらに声をかけてきたのか定かではないがとりあえず反応を返してみる。すると笑って喜んでくれた、これはなかなか面白かったらしい。
家にもこれくらいの子供はいるし、対応にはなれているけれど、皆が皆同じものを好きじゃない。当たり前だけどね。初対面の子なんか、どんな風に声をかけてると喜ぶのかは未知数だ。
赤ちゃんの反応にいい気分になりながら、いつも使っている醤油を手に取り、赤ちゃんに手を振って、その場を後にする。
ふと思い付きでお菓子売り場を覗く。ポテチ、チョコ、クッキー、一通り目を通してみるご特段心引かれるものはなく、レジに向かう頃にした。
お金を払い終えてスーパーを出る。醤油は学校の鞄にいれているだが、とても重い。
「ふぁあ……ああ、なんか眠たい。そして暑い」
はあ、スーパーの外に出た途端、暑苦しい。これじゃあ、やる気も気力も削がれてしまう。
__ふ………お…て__
「ん?」
どこからか人の声が聞こえた気がしたような……。
__ぐす……__
寂しい、苦しい、悲しい、そんな感情が滲み出ている泣き声だ。回りを見渡せども、その声の主は見当たらない。暑さにやられて幻聴でも聞こえてるのか。
__ぐす……ひっく……早く起きてよ。⬛⬛⬛⬛__
「え?上?」
思わず空を見上げる。いきなり視界に入った太陽に思わず目を閉じてしまう。
目を閉じた瞬間、何か、空気が変わったような気がした。
備え付けのスピーカーから校歌が流れて生徒たちが歌いだす。自分の声も混じる歌声をどこか他人事のように聞き流す。
早く終わんないかな。
きっと誰もが思ってることだ。優等生も、ギャルも、不良も、普通の子も、皆。
時間の進むスピードが遅く感じるなか、何とか他人事に思いつつ終業式を乗りこえ帰路に着く。一緒に帰ろうと何度か誘われたがそれも断って足早に進む。
帰ったらエアコンかけた部屋でアイス食べよう。
呑気にそんなこと思っていたらプリーツスカートのポケットにいれているスマホからメッセージが来たことをしらせる音がなった。
少し無視しようかと思ったが学校や家からの連絡ならそのあとが面倒だ。そう考えた私は道のはしによってメッセージの内容を確認した。
送ってきたのは家、内容は醤油買い忘れたから買ってきてほしいと言うものだった。
「……自分で買いにいきなよ、めんどくさいなあ」
誰も知り合いがいないのをいいことに一人文句を吐く。
アイスはもう少しお預けらしい。
仕方なくさっきまでとは違う、重い足取りで駅前のスーパーへと向かった。駅の前にあるせいで人の数は他より多いであろうこのスーパーはいつも通り五月蝿いざわめきが響いている。
「醤油、醤油っと」
一直線に調味料が並ぶ棚に向かっていく。
ふと視界に小学生くらいの子供がはいった。どうも母親と買い物に来ているらしい、幼いその子は随分としっかりしているのか母にお願いされた商品を持ってきて籠にいれて、そして褒められていた。
いつかの私もあんなことしたな。今は一人寂しくお使いだけどさ。
「お姉ちゃん、僕チョコがいい」
「ええ、こんなに暑いと溶けちゃうよお」
耳にはいったのはさっきのこと同じくらいの女の子と、いくつか下の男の子。会話からして姉弟なんだろう。
二人でおやつでも買いに来たのかあーでもない、こーでもないよ思案している。そのうち決まったのか財布を握ったお姉ちゃんにてを引かれ弟くんは満足そうにレジに向かった。
「あんなこともあったなあ」
醤油のある棚の前に着くと先客がいた。抱っこ紐を使って小さい赤ちゃんを抱えているお母さんだ。
赤ちゃんは私のことが気になるのかこっちを見ている。お母さんは調味料の方に気を取られているのか気づいていない。
「あーうぅー?」
「ふふ、ばぁー」
「んふふ、きゃあー」
こちらに声をかけてきたのか定かではないがとりあえず反応を返してみる。すると笑って喜んでくれた、これはなかなか面白かったらしい。
家にもこれくらいの子供はいるし、対応にはなれているけれど、皆が皆同じものを好きじゃない。当たり前だけどね。初対面の子なんか、どんな風に声をかけてると喜ぶのかは未知数だ。
赤ちゃんの反応にいい気分になりながら、いつも使っている醤油を手に取り、赤ちゃんに手を振って、その場を後にする。
ふと思い付きでお菓子売り場を覗く。ポテチ、チョコ、クッキー、一通り目を通してみるご特段心引かれるものはなく、レジに向かう頃にした。
お金を払い終えてスーパーを出る。醤油は学校の鞄にいれているだが、とても重い。
「ふぁあ……ああ、なんか眠たい。そして暑い」
はあ、スーパーの外に出た途端、暑苦しい。これじゃあ、やる気も気力も削がれてしまう。
__ふ………お…て__
「ん?」
どこからか人の声が聞こえた気がしたような……。
__ぐす……__
寂しい、苦しい、悲しい、そんな感情が滲み出ている泣き声だ。回りを見渡せども、その声の主は見当たらない。暑さにやられて幻聴でも聞こえてるのか。
__ぐす……ひっく……早く起きてよ。⬛⬛⬛⬛__
「え?上?」
思わず空を見上げる。いきなり視界に入った太陽に思わず目を閉じてしまう。
目を閉じた瞬間、何か、空気が変わったような気がした。
12
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)
たぬころまんじゅう
ファンタジー
小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。
しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。
士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。
領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。
異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル!
☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる