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第一章:生贄
15.※お風呂③※
しおりを挟む呆れさせちゃった、かな。
「はぁ……そう言うことか。驚かすな、また具合が悪くなったのかと心配した」
何だ、と何でもなさそうに安堵の声を漏らすフェンリス。怒らせちゃった訳じゃないのかな……。
彼は私を持ち上げくるっと自分の方に回転させ、目を合わせて言った。
「わっ」
「アマネ、いいか? それは謝ることでも何でも無い。体も心も健康に戻った証拠だ。一々罪悪感を感じる必要など全く無い。分かったな?」
「う、うん……ありがと……」
そ、それは、ありがたい言葉なのだけど……、今、私の姿勢はフェンリスの膝の上に跨った状態。恥ずかしすぎて死にそう。
どうしよ、これって立ち上がったら色々とフェンリスに見られるよね。先に彼に出ていって貰った方がいいのかな。
神様といえど、目の前で大人の男が勃たせているのは見ていられるものじゃないんじゃないのかな。
ぐるぐるあれやこれやと考えていると、フェンリスは器用に私の体を湯の中で少し浮かせ、私の腕をとり自分の首に巻きつけた。
「アマネ、俺の肩に頭を預けて楽にしておけ。遠慮なくしがみついていいからな」
「えっ、わっ、ちょ」
背中に長い手を回されて、彼の胴体にピッタリ体が密着する。筋肉の硬さに驚いた次の瞬間、頭をビリっと駆け抜けるような鋭い快感が体に駆け巡った。
「んあぁっ、ふぇ、フェンリス、!?」
「久しぶりなら、自分では上手く快感を得られんかもしれん。大丈夫だ。今は何も考えず好きに感じていろ」
「んんっ、だ、だめ、お湯…よごしちゃう…」
「問題無い。湯の浄化など一瞬でできる」
そういう、問題じゃない…!
「ぁ、あっ、んんんっ」
ぎゅっとフェンリスの首にしがみついて、肩に額を押し当て快感に耐える。これまで生きてきた中で、人付き合いも苦手で恋愛感情もよくわからなかった私は、今の今まで他人に触られたことなんか無かった。未知の快感がお腹の底から湧き上がる感覚に全身が震えた。
「ぁ、でちゃう、フェン、リス…」
頬に柔らかく濡れた白髪があたり、肩に熱い吐息がかかる。そのなんてことない刺激にも体が反応して、瞬く間に私は達してしまった。
「あっ、あっ、んんん、ああぁっ!」
一気に体から力が抜け、しがみつく腕が緩み湯の中に引き摺り込まれそうになる私を、フェンリスが抱きとめる。
「上手く吐精できたな。感覚は思い出したか?」
「はぁっ、はぁ、……ハァ、ごめん、なさい…お湯の、中に…」
「謝るなと言っているだろう。俺がやったことだ。それよりも……怖くはなかったか」
フェンリスは、そう私を気にかけて静かに体を抱きしめた。
「うん…ひとつも、怖くなかったよ。かなり、恥ずかしいけど……」
いつまで経っても顔を上げられずに彼の肩に顔を埋めてごにょごにょ呟く。すると、何かに気づいたようにフェンリスが言った。
「アマネ……? 良かった。無事に感覚を思い出したようだな」
「え……? な、にが…?」
言葉の意味が理解できず、漸く彼の顔を見て表情で問うと、緑色の瞳がくいっと下を向いた。
そこには、一度鎮まったまずの熱が再び毛細血管を通して主張を始め、彼の逞しい腹筋にピタリとくっついていた。
「嘘……」
「アマネの世界の人間の雄は、発情をおさめるのに何度か吐精するのが普通なのか?」
純粋な興味をこちらに示すフェンリス。
人をまるで動物みたいに……いや、そうだ。これは動物と同じ本能的欲求、別にやましい事でも咎められるべきことでも何でも無い。生きていれば当たり前の現象だ。
って言い聞かせてはみるけどやっぱりムリ、恥ずかしすぎる。
そうなの? 人間の雄って何度か吐精しないとおさまらないの? もう分かんなくなってきた……今までどうしてたっけ、こんなにおさまらないことあったっけ。
整理のつかない感情と体に渦巻く熱とで頭がごっちゃになってきた。助けを求めるように彼を見つめる。
「わかん、ない……どうしよ」
「……アマネ、怖くないならもう一度身を任せろ。ここにしっかりしがみついておけ」
「う、うん……」
言われるがまま、もう一度彼の首へと抱きつき与えられる快感に身を預ける。
大きな手が私の全体を扱くと、チカチカと目の前が点滅するような強い快感が駆け抜けた。
「あっ! あっんん、そ、こ…」
先端との境目を太い指が掠め、自然と声が漏れる。
「ここか?」
私が反応した部分だけを執拗に往復し、ピンポイントに責め立てる。
「ぁ、ぁっ、あぁ、それだめ、あぁぁ、きもちぃ」
悔しい。神様って、痒い場所も分かれば気持ち良い場所も分かるの? 彼の前では隠し事などできないとでも言われているような不思議な支配感が、さらに私を興奮させた。
「あっ、アァァ…ん、やぁ、ああっ」
「この部分が快いのか。ならば掌で刺激する方が達し易いか?」
「ああぁっ! んんんっ、んっ、だめ、でちゃう…」
「好きな時に出せ。湯は何度でも浄化できる。気にするな」
「んんっ、あぁっ、あっ、アっ、やぁ、だ……」
掌で先端をぐりぐりと揉むように刺激され、私の体は混乱していた。そのような触り方を自分では一度もした経験が無く、感じたことのない快感に奇声をあげそうになる。
彼の肩に口を押し当て、声を押し殺そうと頑張った。
「んんんっ、ん、ふ…んんんっ!」
「アマネ、大丈夫だ、お前の声は俺しか聞いていない。そんなふうに息を詰めると苦しくなるぞ?」
肩から顔を離され、防ぐものがなくなった口からはひっきりなしに情けない声が漏れ出る。
「あぁぁっ、あ、んんっ、いく、いく…ふぇんり…あっ、 アァぁっ!」
不安定な腰がビクビクとおかしな震え方をして、溜まっていた熱を一気に吐き出した。
「はぁっ、はぁっ、……ん、ハァっ、」
本日二度目の射精に体は疲れ切り、フェンリスへ全ての体重を預けた。
「上手く出来たな、アマネ。もう一度しておくか?」
こ、怖いこと言わないで!
フェンリスの中で私の世界の人間の雄は何度も出すとインプットされてしまったようで、ごく純粋に尋ねられたことを全力で否定する。
「もう、いい…もう出ない……だいじょうぶ……」
「そうか。無事におさまったようだな」
「ん、……ありがと。ごめん、ね。こんなこと、させて」
整わない呼吸をそのままに詫びると、フェンリスは子をあやすように背中を叩きながら言う。
「謝るな。生物なら当たり前のことだ。それよりも、しばらくぶりの吐精で疲れただろう。上がって火照りを冷まそう」
「うん…」
彼に抱き上げられ、脱衣場で体を拭かれ、簡易な浴衣に似た一枚布を着せられる。そのまま風呂場を出て、庭を見渡せる南側の建物へと運ばれた。
私の初めての神域での風呂は、少し苦い思い出となったのだった。
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