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続編その②

12.魔力増幅の秘訣……?

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「で?  ハルオミ、疲れてるか?」

「少し休みましょうかハルオミ君」

「ゼンは急げだ。急いで休め」

達成感を噛み締める僕とは裏腹に、イザベラとパネースさんは詰め寄ってきてソファーへ押し込もうとする。

「大丈夫だよ、そんなにすぐに疲れたりしないから!」

二人はこれでもかと顔を近づけて僕の熱を測ったり顔色を観察したりと大袈裟に心配をする。

「本当か?  ちょっとでも無理だと思ったらすぐに言えよ、じゃないと俺らがフレイヤ様におこられる」

「大丈夫だよ、フレイヤさん優しいから怒ったりしないって」

「それにしても……すごい成長ですね、びっくりしました。イザベラの言う通り、浮遊魔法を習得するまでとまるで吸収力が違う。ハルオミ君、フレイヤさんの説教云々抜きにしても本当に体調は大丈夫なのですか?」

「うん、本当に大丈夫だよ。僕も不思議なんだ、こんなにいっぱい魔法が使えるの。それに楽しい!  もっと教えてほしい!」

率直な気持ちをそのまま述べる僕を訝しげに見て、パネースさんは何かを考え込んだ。

「パネースさん……?」

呼びかけると、なぜか少し顔を赤くして微笑んだ。イザベラも不思議な顔をしている。

「? なんだよパネース、なんか面白いか?」

イザベラの質問にパネースさんは少し言いづらそうにして見解を述べた。

「いえ……あの、ハルオミ君はこれまで、三度ほど発情期を迎えていますよね。それでなくとも、魔力を得てから何度も何度もフレイヤ様と体を重ねていますよね」

「そ、それは……そうだけど、二人もじゃん!」

いきなり何を言い出すかと思えば、顔を赤らめながら人の情事の頻度を述べるパネースさん。彼はこう続けた。

「いえ、その、性的な交わりというのは魔力の交わりでもありますし、お互いの中で魔力差があればあるほど、強い方の力に導かれることもあると聞いたことがあります。つまり、ハルオミ君の中でフレイヤ様の魔力が少しずつ増幅しているのかな、と……ただの推測ですが!  それにお二人は番でいらっしゃいますし、それも何か関係があるのかと思いまして」

「魔力の、交わり……」

確かに皆そんなこと言ってた気がする。
ここに来た当初フレイヤさんが僕に手を出さなかったのも、呪いに冒された魔力が僕に流れ込まないようにという配慮からだった。

魔力を授かってからも、体を重ねるたびに温かい気持ちが増していく感覚はあった。そして発情期には、これまでとは比べ物にならないくらいフレイヤさんを求める本能が強くなって、彼を貪り尽くしたいとまで考えてしまうのだ。

性行為が魔力の交わりだというのなら、パネースさんの言ってることはおそらく正しい。

「じゃあ、僕の魔力はもしかして、フレイヤさんと体を重ねるたびに増幅してるかもしれないってこと?」

「正確には、"相手の魔力量に近づいている" という認識が正しいと思います。ハルオミ君は元々魔力が無かったので、乾いたスポンジが水を吸うのと似たような吸収力があるのでしょう」

「じゃあ、ハルオミはもっといっぱいフレイヤ様とセックスすれば魔力も強くなるし魔法の練習で疲れなくなるってことか?」

イザベラが恐ろしいことを言い出した。たしかにその予想は理にかなっているが、そんなことフレイヤ様に伝わったら発情期でもないのに閉じ込められて一日中魔力を与えられそうだ。


………………ちょっとグッときてしまったのは誰にも言わない。

「まあ、いずれにしても魔力が増幅したんなら願ったり叶ったりだよ! 二人とも、これで僕が疲れてないって信じてくれたでしょ?  今日の目標は魔法で蛇口を捻ることなんだ。続きをご教示ください!」

深く深く頭を下げる。
せっかくコツが掴めてきたところなのに、ここで色々学ばないと感覚を忘れてしまう気がするのである。

パネースさんは渋々と言った感じに頷き、「仕方ありませんね」と承諾してくれた。


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