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続編その②
10.特訓開始
しおりを挟む「やっぱりと言うかなんというか……一番恐ろしいのはウラーさんかもしれない。絶対敵には回したくないね」
「この世の噂話は全部掌握してるって噂もありますしね」
「なにそれ、すごすぎ」
一流の執事ともなると情報網まで一流なのか。
いつか世界征服でもするのかな。
「まっ、いいじゃねえか。これでハルオミは過激派に恐れることなく、気兼ねなく外出できるってワケだ」
「いやいやできないよ! わざわざ遠くから来て僕たちのデートこっそり見てた人もいるんでしょ? これからもずっと注目の的になるなんて無理だよ……」
「諦めろ。魔祓い師の側仕えになった以上、死ぬまで注目の的だ」
「…………そうなの?」
二人を見れば、穏やかな表情で微笑みかけられる。その顔は何やら悟りを開いたようにも見える。
……うん、二人も色々あったんだね。
イザベラにはよくからかわれるけど、彼も今までの側仕え生活の中で紆余曲折あったのだろう。パネースさんは穏やかに見えてどっしりしてるし、ニエルドさんのこと尻に敷いちゃうくらいだし。
ここでの生活に慣れたと思ったら次は民衆の目にも慣れないといけないらしい。課題は山積みだけど、フレイヤさんの側仕えという存在に誇りを持っているという事実は死ぬまで変わらない。
色々不安は募るものの、まあ心強い先輩たちが常に側に居てくれる訳だし、そう思ったら恵まれてるのかもしれないな。
気持ちを切り替えて僕は魔法の訓練に励むことにした。今日は二人に先生をしてもらって、浮遊魔法をもっと上達させるのが目標だ。
「でも、本当に大丈夫ですかね……? 病み上がりのハルオミ君の練習に付き合ったなんてフレイヤ様に知られたら……」
「あ、確かに。俺らフレイヤ様にぶっ殺されねえかな」
顔を青くして物騒な想像をするイザベラとパネースさん。その気持ちはわからなくもない。
でも今日は正真正銘きっちり許可をもらっているので胸を張ってそれを伝えた。
「フレイヤさんも、頑張ってねって言ってくれたから大丈夫!!」
すると二人は信じられないとでも言いたげな顔をして、なぜか中々信じてくれなかった。
「本当ですかハルオミ君? 聞き間違いとかではありませんか?」
「え? うん、聞き間違いなんかじゃないよ」
「もう一回思い出せハルオミ。なんかと間違ってねえか? 例えば『少しでも無理をしようものなら一生部屋に閉じ込めておく』とか」
「それと『頑張って』をどうやって聞き間違うの!」
二人はフレイヤさんのことをとてつもなく恐れているようだ。確かにこれまでのフレイヤさんが過保護すぎて僕は二人に特訓をお願いできなかった。
まして僕が今日病み上がりということで、イザベラもパネースさんも何かあったら恐ろしい責任を取らされるのではないかと怯えているようだ。
「大丈夫大丈夫。一悶着……ってほどではないんだけど、フレイヤさんとはしっかり話し合ったから。これからは僕の意思も尊重するって言ってくれた」
「それなら、いいですが……」
「じゃあ、まあ、休憩挟みながらゆっくりやるか。ハルオミ、ちょっとでも疲れたらすぐに言えよ! いや、疲れる前に言え!」
「疲れる前……それはちょっと難しいんじゃないかな」
「だめだ言え! お前を疲れさせたらフレイヤ様に消されるからな」
目をキョロキョロしてどこにいるかもわからない敵にアンテナを張るさまは、警戒心むき出しの猫のようだ。
これまでのフレイヤさんの過保護っぷりを知っていれば無理ないのかもしれない。
「わかった。疲れる前に言うように頑張る」
「……ほんとだな? よし。じゃあ特訓してやる」
フッ、と警戒心をといたかと思えば急に先輩風を吹かせるイザベラはなんとも庇護欲をそそる。
何はともあれ、せっかくフレイヤさんから魔法特訓許可が降りたのだからこの機会を逃さない手は無い。僕は二人に頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
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