138 / 147
続編その②
9. 親衛隊?
しおりを挟む◆◆◆
唯一、自分の治癒魔力が自分に効かないのが不便な点だ。
ただのもらい風邪だったので一日で回復したものの、イザベラにはめちゃくちゃいじられてしまった。
「ハルオミはほんとに布団と仲良しだな」
「……返す言葉もないよ」
イザベラの部屋でちょっとした快気祝いをしてくれているのだが、彼は完全に僕を病弱と認識しつつある。
「こらイザベラ、ハルオミ君もしんどい思いをしたのだから、揶揄うものじゃありませんよ」
「別にからかってねえよ。いたわってんだ」
「売り言葉に買い言葉じゃないですか、全く……それにしても、ハルオミ君もハルオミ君ですよ、付きっきりで看病をしていたと聞きました。フレイヤ様のことが大切なのは分かりますが、あなた自身のことも大切にしないといけません」
心配そうな顔のパネースさんにお叱りを受ける。確かにちょっと張り切り過ぎたかもしれないと思う。
昨日のフレイヤさん、夜には回復してきたので卵焼きと煮物といったしっかりしたメニューを作ったけど、全部あーんして食べさせてあげたし、まだ倦怠感が残るフレイヤさんのために体も拭いてあげた。(彼自身浄化魔法は使っていたが、冷たいタオルで拭いたらもっとさっぱりすると思って僕が申し出た)
夜眠る時もぎゅと抱き合って眠ったし、そう考えたら、離れているのは僕が料理の準備をしている時くらいだったかも。
いつ風邪をもらったのかなんて心当たりがあり過ぎてわからないくらいだ。
「次から気をつけます……」
と反省すれば、「よろしい」と頭を撫でてくれた。
「あ、そうだそうだ。二人に聞きたいことがあったんだ」
「なんだ?」
「軍医の先生にね、『ハルオミ殿はアイドル』って言われたんだけど、何かまた変な噂が一人歩きしてたりするの……? フレイヤさんは何も知らないだろうから聞かなかったんだけど、二人なら何か知ってるかと思って」
「あー……」
「それなー……」
「あー」「それなー」って、絶対なんか知ってるじゃん。
二人の言葉に耳をすませば、耳を疑う事実が飛び出した。
「"フレイヤ様過激派"がハルオミ君の新聞記事を見て一斉に手を引いたことはお伝えしましたよね? あれで協定が結ばれたらしいのです」
「フレイヤ様のことはハルオミに譲って、今後一切誰もフレイヤ様を狙わない、ってやつだろ?」
「なに、その協定。怪しすぎる」
「ハルオミ君に危害のあるものでは全くなさそうなので安心してください。むしろ内容的には『抜け駆けも許さなければ、ハルオミ様に危害を加える者も許さない』という内容ですので」
「まあわかりやすく言ったら、あいつらフレイヤ様過激派からハルオミ過激派になった訳だ」
「………なんで」
僕、自分で言うのもアレだけど一応妬まれてたんだよね。なのになんで信仰の対象がこっちに来るんだ。ますます怪しいでしょ。
「なんでって俺らに聞かれてもなー」
「ええ。詳しい情報は分かりませんが……ただ、ハルオミ君とフレイヤ様、あれから何度かデートなさったでしょう?」
「うん」
「その度に新聞の一面に載って、ハルオミ君に目を惹かれた国民たちが実際にあなたを見たいと近隣遠方関係なく集まり、こっそりデート現場を見ていたそうなのです」
「国民に、みられてたの」
「ハルオミを実際に見た奴らが『あれには誰も勝てねえ』っつって、なぜかだんだんお前を守る方向に話が進んだらしい。ま、いわゆる『シンエータイ』ってやつだな」
「シンエータイ……親衛隊??? 僕に? なぜ?」
「何故って……この世の人間とは思えないくらい可愛いからだろ。まあ、実際違う世界から来たわけだけど」
確かに顔立ちはここの方達と違うという自負はあるし、もしそれをプラスに思ってくれているなら嬉しいけど、そんなことで親衛隊などできても……。
「あとはアレですね。過激になる程慕っていたフレイヤ様の呪いを解いたのがハルオミ君だということも関係しているみたいです。頭が上がらない、って」
つらつらと僕の質問に答えてくれる二人。疑問が解けてだんだん腑に落ちていくと同時に、さらなる疑問が湧いた。
「ていうか、なんで二人ともそんな詳しいの……?」
恐る恐る問えば、パネースさんとイザベラのは声を揃えて
「「ウラー(さん)」」
と言った。
7
お気に入りに追加
1,375
あなたにおすすめの小説

軍将の踊り子と赤い龍の伝説
糸文かろ
BL
【ひょうきん軍将×ド真面目コミュ障ぎみの踊り子】
踊りをもちいて軍を守る聖舞師という職業のサニ(受)。赴任された戦場に行くとそこの軍将は、前日宿屋でサニをナンパしたリエイム(攻)という男だった。
一見ひょうきんで何も考えていなさそうな割に的確な戦法で軍を勝利に導くリエイム。最初こそいい印象を抱かなかったものの、行動をともにするうちサニは徐々にリエイムに惹かれていく。真摯な姿勢に感銘を受けたサニはリエイム軍との専属契約を交わすが、実は彼にはひとつの秘密があった。
第11回BL小説大賞エントリー中です。
この生き物は感想をもらえるととっても嬉がります!
「きょええええ!ありがたや〜っ!」という鳴き声を出します!
**************
公募を中心に活動しているのですが、今回アルファさんにて挑戦参加しております。
弱小・公募の民がどんなランキングで終わるのか……見守っていてくださいー!
過去実績:第一回ビーボーイ創作BL大賞優秀賞、小説ディアプラスハルVol.85、小説ディアプラスハルVol.89掲載
→ https://twitter.com/karoito2
→ @karoito2

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!
かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。
その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。
両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。
自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。
自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。
相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと…
のんびり新連載。
気まぐれ更新です。
BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意!
人外CPにはなりません
ストックなくなるまでは07:10に公開
3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』
ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。
誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

聖獣王~アダムは甘い果実~
南方まいこ
BL
日々、慎ましく過ごすアダムの元に、神殿から助祭としての資格が送られてきた。神殿で登録を得た後、自分の町へ帰る際、乗り込んだ馬車が大規模の竜巻に巻き込まれ、アダムは越えてはいけない国境を越えてしまう。
アダムが目覚めると、そこはディガ王国と呼ばれる獣人が暮らす国だった。竜巻により上空から落ちて来たアダムは、ディガ王国を脅かす存在だと言われ処刑対象になるが、右手の刻印が聖天を示す文様だと気が付いた兵士が、この方は聖天様だと言い、聖獣王への貢ぎ物として捧げられる事になった。
竜巻に遭遇し偶然ここへ投げ出されたと、何度説明しても取り合ってもらえず。自分の家に帰りたいアダムは逃げ出そうとする。
※私の小説で「大人向け」のタグが表示されている場合、性描写が所々に散りばめられているということになります。タグのついてない小説は、その後の二人まで性描写はありません
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる