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続編その②

3.お雑炊

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「フレイヤさん。朝だよ。ごはん食べられるかなあ?  まだしんどい?」

おでこを撫でながら問いかける。数秒まつ毛が揺れた後、ゆっくり目が開いた。心なしか、いつもより垂れ下がっているような気がする。

「おはよう、フレイヤさん」

「……おはようハルオミ。もう起きていたのかい。すまない、寝坊をしてしまったようだ」

「大丈夫だよ、今日のお仕事はお休みするようにってお医者さんが言ってた。だから一日ゆっくりして風邪を治そう」

僕の言葉をひとつひとつ聞きながら状況を理解しているのか、フレイヤさんは少しの間黙って考えていた。そして苦笑いをこぼしながら、

「そうだね、無理をすると兄さんたちにも迷惑がかかってしまう。情けないが今日はそうさせてもらおう」

「情けないだなんて、そんなことないよ。体調不良は誰にでもある。僕だってフレイヤさんにずっと看病してもらってたんだから、こういう時くらいお役に立たないと!」

ふんっ、と鼻息荒く拳を握りしめれば、フレイヤさんは手を伸ばして僕の頬を撫でてきた。

「なんとも頼もしいね。ありがとうハルオミ」

彼に頼られたのが嬉しくなり、つい捲し立ててしまう。

「あのね、フレイヤさんのお薬は僕が預かってるの。食後に飲まなきゃいけないから、食べられるだけで良いから朝ごはん食べて、お薬飲んで、もう一度寝よう。お昼になったらまたお医者さんを呼んで体調見てもらおうね、お昼もお薬あるからしっかり飲んで、あとはたくさん食べて、寝て……」

「ははっ、君に任せておけばあっという間に治りそうだ」

フレイヤさんは饒舌に本日の予定を語る僕を見て呆気に取られたような顔で聞いた後、ふにゃっと幼い笑顔を見せた。その力の無い笑顔に、彼が弱っているのが分かる。

くっちゃべってないで、早く朝ごはん朝ごはん。

「フレイヤさん、一回起き上がれる?」

「ああ」

「ゆっくりでいいからね。 背中に枕挟んであげる……よいしょ……大丈夫?  体勢しんどくない?」

「大丈夫だよ」

「じゃあお雑炊持ってきてあげるから少し待ってて」

「おぞうすい……?」

首を傾げるフレイヤさんを背に台所に行き、小さな土鍋のような容器に入れた雑炊を持って寝室に戻る。

「良い香りだね……少しお腹が空いてきたよ」

「本当?  よかった。熱いからちょっと冷ますね。僕が食べさせてあげる。ふぅー、ふぅー……よし、フレイヤさん、あーん」

「………たまには風邪をひいてみるものだね。あーー」

——ぱくっ

無事フレイヤさんの口に収まったお雑炊。
喉も痛いのか、いつもよりゆっくり飲み込んだのを見計らって、次の一口を冷ます。

「フゥー、フゥー……はい、あーん」

——ぱくっ

「ん……おいしい」

……………かわいい。
いつもは初めて食べるものに対して「ここがこう美味しい」とか「香りと味とがどうのこうの」とか詳細な感想を述べてくれるフレイヤさんだが、今日は弱体に沁みているのか、しみじみと味わってくれている。

「まだちょっと熱いかな、ふぅー、ふぅー」

だんだん餌付けをしているような気になってきた。フレイヤさんがよく僕を膝に乗せてご飯を食べさせる気持ち、今なら分かる気がしてしまう……。


大人しく僕の手からお雑炊を食べていたフレイヤさんだったが、四口目を口に入れたあたりで怪訝な顔をした。

「フレイヤさん……?  ごめん、味おかしかったかな?  それともペース早かった?」

背中をさすりながら彼の顔を覗き込むと、どこか驚いたように僕を見て言った。

「ハルオミ……君、もしかして魔力を込めたのかい?」



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