116 / 147
続編その①〜初めての発情期編〜
24.役割
しおりを挟むウラーさんの話題に夢中になっていて大事な大事なお鍋から気がそれていた。ギリギリの所で火を止め、小豆をザルにあげて水気を切る。
「おや、それはもしや昨日の熱愛デートの際に手に入れた食材ですか?」
「もう、ウラーさんまで!」
「ハハハッ、執事はみんな新聞読むもんな! 勤勉だから。今日の一面最高だったよな~」
しかも一面だったの!?
「ええ。ここへ来る途中も、町中では皆様ハルオミ殿とフレイヤ様の話題で持ちきりでしたよ」
「ななな、何の話題!?」
「もちろん新聞の件で。意外とハルオミ殿が嫉妬深いという声もチラッと耳にしたような……昨日、何をされたのです?」
ウラーさんは興味津々に聞いてくる。
「べ、別に大したことは……ただフレイヤさんが周りの人たちに見られてたから、『フレイヤさんは僕のだって分かってる?』って聞いただけ」
「それはそれは……!! 素晴らしい心がけです」
パチパチパチパチ、と、なぜか拍手を始めたウラーさん。
「ハルオミ殿はフレイヤ様のたった一人の側仕え! その独占欲、もっと出していきましょう」
「え、い、いいの?」
「勿論良いに決まっています。そうすることであなたの側仕えとしての格はさらに上昇し、フレイヤ様の理性もさらに崩壊し、より強い魔祓い師へとご成長されることでしょう! そしてこの地は未来永劫安泰へと導かれるのです」
なんか、ウラーさん怪しい教祖様みたい。拳をグッと握り込み、演説のように説いてくる。
そういえば出会った頃の彼も僕を側仕えにすることに必死だったな。フレイヤさんに手を出させるため、一緒になって試行錯誤した日々がよみがえる。今となってはいい思い出だ、懐かしい……。
「ふふっ。相変わらず、ウラーさんは側仕えのことになるとハイテンションになりますね」
「当たり前でしょう! 魔物に襲われたことのある者なら、いえ、襲われたことなど無くてもその脅威を知る者なら誰だって魔祓い師のご活躍を望みます。そのご活躍に側仕えは欠かせない存在なのです。が……私の伴侶はせっかく祓魔家の一族として生を受けながら、魔物を祓うという使命なんて知ったこっちゃないと言わんばかりにのらりくらりと……私は側仕えの印章を受けてはおりますが、彼が祓魔業を放棄している為正式な側仕えではない。ですからあなた方のご尽力には、こう見えて頭が上がらないのですよ」
ウラーさんは僕たちに目配せをしながら微笑む。
そうか、ウラーさんも僕たちと同じ印章に魔祓い師の魔力が流れている、つまり側仕えのような役割は果たしている。けどクールベさんは魔祓い師ではないから、従ってウラーさんも側仕えではないのだ。
そして、ウラーさんは魔物に襲われたことがあると言っていた。あまりにも平和な日々を過ごしていて忘れそうになっていたけど、この世界では魔物は人間にとって恐怖の対象であり命を脅かされている。
だから僕がフレイヤさんと仲良しであることは、彼らにとって平和と直結するのだ。
そりゃ、注目されて然るべきだよなあ。
あまり恥ずかしいなんて思わずに、ウラーさんやイザベラの言う通りもっと堂々としていた方がいいのかもしれない。……ちょっと時間はかかると思うけど。
側仕えの何たるかを説くウラーさんに、パネースさんが言った。
「ウラーさんに言われると、なんだか気が引き締まりますねえ。現当主の妃として、私も頑張らなくては」
「そのいきですパネース殿!」
パチパチパチ、と再び拍手を送るウラーさん。
僕は改めて、自分の存在がこの国の人にとってどれだけ大きいかを思い知らされた。でも、僕なんかに役目を果たせるだろうか、なんていうネガティブな気分には全くならない。
僕にしかできないことは、フレイヤさんをめいいっぱい愛すること。その幸せが少しでも国の人たちに届けばいいと思った。
1
お気に入りに追加
1,376
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる