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続編その①〜初めての発情期編〜

24.役割

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ウラーさんの話題に夢中になっていて大事な大事なお鍋から気がそれていた。ギリギリの所で火を止め、小豆をザルにあげて水気を切る。

「おや、それはもしや昨日の熱愛デートの際に手に入れた食材ですか?」

「もう、ウラーさんまで!」

「ハハハッ、執事はみんな新聞読むもんな!  勤勉だから。今日の一面最高だったよな~」

しかも一面だったの!?

「ええ。ここへ来る途中も、町中では皆様ハルオミ殿とフレイヤ様の話題で持ちきりでしたよ」

「ななな、何の話題!?」

「もちろん新聞の件で。意外とハルオミ殿が嫉妬深いという声もチラッと耳にしたような……昨日、何をされたのです?」

ウラーさんは興味津々に聞いてくる。

「べ、別に大したことは……ただフレイヤさんが周りの人たちに見られてたから、『フレイヤさんは僕のだって分かってる?』って聞いただけ」

「それはそれは……!!  素晴らしい心がけです」

パチパチパチパチ、と、なぜか拍手を始めたウラーさん。

「ハルオミ殿はフレイヤ様のたった一人の側仕え!  その独占欲、もっと出していきましょう」

「え、い、いいの?」

「勿論良いに決まっています。そうすることであなたの側仕えとしての格はさらに上昇し、フレイヤ様の理性もさらに崩壊し、より強い魔祓い師へとご成長されることでしょう!  そしてこの地は未来永劫安泰へと導かれるのです」

なんか、ウラーさん怪しい教祖様みたい。拳をグッと握り込み、演説のように説いてくる。

そういえば出会った頃の彼も僕を側仕えにすることに必死だったな。フレイヤさんに手を出させるため、一緒になって試行錯誤した日々がよみがえる。今となってはいい思い出だ、懐かしい……。

「ふふっ。相変わらず、ウラーさんは側仕えのことになるとハイテンションになりますね」

「当たり前でしょう!  魔物に襲われたことのある者なら、いえ、襲われたことなど無くてもその脅威を知る者なら誰だって魔祓い師のご活躍を望みます。そのご活躍に側仕えは欠かせない存在なのです。が……私の伴侶はせっかく祓魔家の一族として生を受けながら、魔物を祓うという使命なんて知ったこっちゃないと言わんばかりにのらりくらりと……私は側仕えの印章を受けてはおりますが、彼が祓魔業を放棄している為正式な側仕えではない。ですからあなた方のご尽力には、こう見えて頭が上がらないのですよ」

ウラーさんは僕たちに目配せをしながら微笑む。
そうか、ウラーさんも僕たちと同じ印章に魔祓い師の魔力が流れている、つまり側仕えのような役割は果たしている。けどクールベさんは魔祓い師ではないから、従ってウラーさんも側仕えではないのだ。

そして、ウラーさんは魔物に襲われたことがあると言っていた。あまりにも平和な日々を過ごしていて忘れそうになっていたけど、この世界では魔物は人間にとって恐怖の対象であり命を脅かされている。

だから僕がフレイヤさんと仲良しであることは、彼らにとって平和と直結するのだ。

そりゃ、注目されて然るべきだよなあ。

あまり恥ずかしいなんて思わずに、ウラーさんやイザベラの言う通りもっと堂々としていた方がいいのかもしれない。……ちょっと時間はかかると思うけど。

側仕えの何たるかを説くウラーさんに、パネースさんが言った。

「ウラーさんに言われると、なんだか気が引き締まりますねえ。現当主の妃として、私も頑張らなくては」

「そのいきですパネース殿!」

パチパチパチ、と再び拍手を送るウラーさん。

僕は改めて、自分の存在がこの国の人にとってどれだけ大きいかを思い知らされた。でも、僕なんかに役目を果たせるだろうか、なんていうネガティブな気分には全くならない。

僕にしかできないことは、フレイヤさんをめいいっぱい愛すること。その幸せが少しでも国の人たちに届けばいいと思った。

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