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続編その①〜初めての発情期編〜
18.オーダー
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◆
——ザワザワ
ムニルさんのお店は、席数20席ほどのこぢんまりとしたお店。到着した時にはすでにほとんど満員だった。
ちなみに、フレイヤさんは僕を抱えたままお店のドアを開こうとしたので必死に留めて、何とか下ろしてもらってから身なりを整えて入店した。
「ついさっき開店したばかりなのに、凄いねえ」
「さすがハルオミが考案したメニューだ」
「作ってるのはムニルさんだよ」
お客さんの多さに圧倒されていると、奥からムニルさんが早歩きで駆けつけてくれた。
「ハルオミ殿!! フレイヤ様!! お待ちしておりました!」
「ムニルさん! お客さんいっぱいですね」
「ありがたいことに、もう連日満席でして! お二人のお席はこちらにご用意しておりますので、どうぞ!!」
「すまないねムニル。ありがとう」
「いっっっいえ!! フフフフレイヤ様がいらっしゃるということで、今日は一段と気を引き締めて参ります!!」
「はははっ、いつも通りで大丈夫だよ。ハルオミには君の料理は絶品だと聞いている。期待している」
「ひゃっ!?!? ひゃい!!」
フレイヤさん、それ絶対ムニルさんの緊張メーター爆上げしちゃってるよ。
お気の毒にムニルさん……
でも言ったことは全く間違っていない、ムニルさんのお料理は絶品だからどれを頼んでも間違いなし!
僕たちは、ムニルさんが案内してくれた席に着いた。
——ザワッ!
「ま、魔祓い師様がいらっしゃった!」
「……フレイヤ様!?」
「この目で直接お姿を拝見できる日が来るなんて…!」
「おれ、おれ…生きていてよかった……」
ここでも注目の的のフレイヤさん。
一応隣に居させてもらっている身だし、携わらせてもらったお店に来てくださっている訳だから、僕もお客さんに会釈をする。
「は、はぁぁぁっ、側仕えのお方と目が合った!!」
「微笑んでくださった!」
「知ってるか? この店のメニューを考えたのも側仕えのハルオミ殿なんだぜ」
「当たり前だろ! もちろん知ってるさ。ハルオミ殿は異界のお方で、あちらの料理をニエルド様とパネース様の祝言の時に振る舞ったそうだ」
「パネース殿が泣いて喜ばれたそうだぜ」
「いやわかる。泣きたくなるほどうまいもんな!」
う、うまい!? 今ちらっとうまいって聞こえた。このお店の料理の話かな。そうだったらいいな。違ったらどうしよう。
いやでも、万が一話題に出してくれていたなら、何もリアクションなしって、なんだか澄ましているみたいでつっけんどんな態度に見えるかな。このお店のメニューを考えたのは僕だということは知れ渡っているみたいだし。
自惚れの恐れはあれど、何もしないよりはマシ。僕は「うまい」と言ってくれたお客さんに対して「ありがとうございます」と言ってみた。
すると方々から小さな小さな遠慮がちな悲鳴がかすかに聞こえて来た。
「あ…愛らしい…! 噂には聞いていたが、フレイヤ様の側仕え様はこんなにも愛らしかったのか!」
「俺、毎日通おうかな……ハルオミ殿がいつもフレイヤ様に振る舞う味って想像したら、祓魔家フリークの俺としては尊すぎる」
「わかる。はんばあぐ尊い」
ハ、ハンバーグが尊い…?
今どなたかがそう言った気がする。料理に尊さを感じさせるなんて、ムニルさんさすがだなあ。本当に彼にお任せして良かった。
お店がオープンした喜びに再度浸る。実際にこうして来てみると感動は桁違いだった。
じーんとしていると、フレイヤさんがメニューを差し出してくれた。
「ハルオミ、君はもう何を頼むか決めているのかい?」
そうだったそうだった。
いつまでも油を売っていないで注文しなくちゃ。
「僕は和風ハンバーグに決めてるんだ」
「お、自慢の新メニューだね」
「うんっ! 聞いて聞いて、レシピ完成させるまでイザベラとパネースさんにも試食係でいっぱい手伝ってもらったんだよ。でも二人とも『美味しい』しか言わないから困っちゃって」
「君の考えた料理で美味しくないものなんて無いからね。以前食べた和風ハンバーグも美味かったが、さらに完成度が上がっているのかい?」
「うん! あっ、でもどうしよう……オムライスの絵を見たらオムライスの口になってきたかも」
「それなら、私がオムライスを頼むから君も一緒に食べるかい?」
「いいのっ? そうしたい! わぁ…ほんとにデートみたい!」
「ほんとにデートだよ」
「へへっ、そうだった!」
「なんと…今日はフレイヤ様とハルオミ様のデートだったとは」
「こりゃ貴重な場面に遭遇しましたな、旦那!」
「ぜってぇ邪魔しちゃいけねぇやつだ」
「いいか? 皆、遠くから見守るんだ。決してお二人の大切なお時間を邪魔するんじゃねぇぞ」
「分かってるさ!」
「和風はんばあぐと、おむらいす……よし、俺もそれにしよ」
——ザワザワ
ムニルさんのお店は、席数20席ほどのこぢんまりとしたお店。到着した時にはすでにほとんど満員だった。
ちなみに、フレイヤさんは僕を抱えたままお店のドアを開こうとしたので必死に留めて、何とか下ろしてもらってから身なりを整えて入店した。
「ついさっき開店したばかりなのに、凄いねえ」
「さすがハルオミが考案したメニューだ」
「作ってるのはムニルさんだよ」
お客さんの多さに圧倒されていると、奥からムニルさんが早歩きで駆けつけてくれた。
「ハルオミ殿!! フレイヤ様!! お待ちしておりました!」
「ムニルさん! お客さんいっぱいですね」
「ありがたいことに、もう連日満席でして! お二人のお席はこちらにご用意しておりますので、どうぞ!!」
「すまないねムニル。ありがとう」
「いっっっいえ!! フフフフレイヤ様がいらっしゃるということで、今日は一段と気を引き締めて参ります!!」
「はははっ、いつも通りで大丈夫だよ。ハルオミには君の料理は絶品だと聞いている。期待している」
「ひゃっ!?!? ひゃい!!」
フレイヤさん、それ絶対ムニルさんの緊張メーター爆上げしちゃってるよ。
お気の毒にムニルさん……
でも言ったことは全く間違っていない、ムニルさんのお料理は絶品だからどれを頼んでも間違いなし!
僕たちは、ムニルさんが案内してくれた席に着いた。
——ザワッ!
「ま、魔祓い師様がいらっしゃった!」
「……フレイヤ様!?」
「この目で直接お姿を拝見できる日が来るなんて…!」
「おれ、おれ…生きていてよかった……」
ここでも注目の的のフレイヤさん。
一応隣に居させてもらっている身だし、携わらせてもらったお店に来てくださっている訳だから、僕もお客さんに会釈をする。
「は、はぁぁぁっ、側仕えのお方と目が合った!!」
「微笑んでくださった!」
「知ってるか? この店のメニューを考えたのも側仕えのハルオミ殿なんだぜ」
「当たり前だろ! もちろん知ってるさ。ハルオミ殿は異界のお方で、あちらの料理をニエルド様とパネース様の祝言の時に振る舞ったそうだ」
「パネース殿が泣いて喜ばれたそうだぜ」
「いやわかる。泣きたくなるほどうまいもんな!」
う、うまい!? 今ちらっとうまいって聞こえた。このお店の料理の話かな。そうだったらいいな。違ったらどうしよう。
いやでも、万が一話題に出してくれていたなら、何もリアクションなしって、なんだか澄ましているみたいでつっけんどんな態度に見えるかな。このお店のメニューを考えたのは僕だということは知れ渡っているみたいだし。
自惚れの恐れはあれど、何もしないよりはマシ。僕は「うまい」と言ってくれたお客さんに対して「ありがとうございます」と言ってみた。
すると方々から小さな小さな遠慮がちな悲鳴がかすかに聞こえて来た。
「あ…愛らしい…! 噂には聞いていたが、フレイヤ様の側仕え様はこんなにも愛らしかったのか!」
「俺、毎日通おうかな……ハルオミ殿がいつもフレイヤ様に振る舞う味って想像したら、祓魔家フリークの俺としては尊すぎる」
「わかる。はんばあぐ尊い」
ハ、ハンバーグが尊い…?
今どなたかがそう言った気がする。料理に尊さを感じさせるなんて、ムニルさんさすがだなあ。本当に彼にお任せして良かった。
お店がオープンした喜びに再度浸る。実際にこうして来てみると感動は桁違いだった。
じーんとしていると、フレイヤさんがメニューを差し出してくれた。
「ハルオミ、君はもう何を頼むか決めているのかい?」
そうだったそうだった。
いつまでも油を売っていないで注文しなくちゃ。
「僕は和風ハンバーグに決めてるんだ」
「お、自慢の新メニューだね」
「うんっ! 聞いて聞いて、レシピ完成させるまでイザベラとパネースさんにも試食係でいっぱい手伝ってもらったんだよ。でも二人とも『美味しい』しか言わないから困っちゃって」
「君の考えた料理で美味しくないものなんて無いからね。以前食べた和風ハンバーグも美味かったが、さらに完成度が上がっているのかい?」
「うん! あっ、でもどうしよう……オムライスの絵を見たらオムライスの口になってきたかも」
「それなら、私がオムライスを頼むから君も一緒に食べるかい?」
「いいのっ? そうしたい! わぁ…ほんとにデートみたい!」
「ほんとにデートだよ」
「へへっ、そうだった!」
「なんと…今日はフレイヤ様とハルオミ様のデートだったとは」
「こりゃ貴重な場面に遭遇しましたな、旦那!」
「ぜってぇ邪魔しちゃいけねぇやつだ」
「いいか? 皆、遠くから見守るんだ。決してお二人の大切なお時間を邪魔するんじゃねぇぞ」
「分かってるさ!」
「和風はんばあぐと、おむらいす……よし、俺もそれにしよ」
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