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続編その①〜初めての発情期編〜
9.歳の差
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「ち、違うんですクールベさんっ、僕もその、フレイヤさんにせがんじゃったし…えっと、フレイヤさんのせいじゃなくて……」
「私が抑え切れなかったのは事実だ。叔父上、やはり私はハルオミに無理をさせすぎてしまったのでしょうか」
「当ったりめぇだろ! お前な、4回って……」
馬鹿正直に全てを話したフレイヤさんは、クールベさんから雷を落とされている。
「鬼畜か」だの「いつもの理性はどうした」だの、ひとしきり怒られたフレイヤさんは言い訳もせず心の底から反省をした顔をしている。
クールベさんもその様子に観念したのか、はぁ、とため息を吐いた。
「ハルオミ君は、苦痛は感じなかったのか?」
「苦痛?」
「普通無理だろ、4回も盛ってくるヤツ」
「えっと……僕…そりゃ、もうずっと限界だったけど……あの、幸せでした……」
「ハルオミ……」
やばい、だめだ、クールベさんの顔見れない。綺麗な甥子さんをこんなにしてすみません……!!
心の中で叫ぶと、大きな、大~きなため息がクールベさんからの聞こえた。
「はぁ……なるほどな」
「叔父上、私なりの責任を…」
「いや、俺は発情期を舐めていたようだ」
「叔父上?」
「クールベさん?」
クールベさんは頭を抱えてしばらく考え込んでから、堰を切ったように話し出した。
「歴史的にも番の存在というのは希少で、発情期の参考資料は極端に少ない。そこから手に入れられる文献は全て手に入れて読み漁りある程度の知識は身につけたと思っていたが、実際に目の前にすると文字では分からなかったことが山ほどある。魔物と同じように本物を目にするのと知らねぇやつが書いた文献とではまるで違う。お前ら……よく番ってくれた…!!俺は今最高に愉快な気分だ。ふ…フハハハッ! 現代において番や発情期の生の資料が目の前にあるなんて、研究者としてこれほど恵まれた環境はねぇ…! フレイヤ、ハルオミ君、これからもよろしくなっ!!♪」
「「…………」」
僕は、一番最初にクールベさんに出会った時を思い出した。「魔物に発情するヘンタイ」「何もかもを研究対象と見るヘンタイ」「甥のかかった呪いにまでうっとりしてあろうことかその呪によってできた痕を舐めるヘンタイ」
何度お礼を言っても足りないくらいお世話になったから忘れていたけど、そういえばクールベさんって変態だったなぁ……。
僕たちは今、間違いなく研究対象として見られている。ていうかハッキリ「生の資料」って言ったよね。
びっくりしたけど、なんだかそれが面白おかしくて、フレイヤさんと目を見合わせて笑ってしまった。
「叔父上、これからも頼りにしています」
「いつもありがとうございますクールベさん」
おかしな挨拶もそこそこに、引き続き僕の症状を問診する(そういうところはちゃんとしている)クールベさん。
「で、ヤッてから1時間以上は経過してるってことか」
「はい」
「ハルオミ君、今んとこ体が疼いたり、フレイヤの匂いに当てられたりはしてないか?」
「はい、今は大丈夫そうです」
「そうか。ならひとまず明日まで様子見だな。俺は屋敷に泊まるから、なんかあったら遠慮なく呼べよ。あと、何もなくても明日の朝には一度来る」
「すみませんクールベさん、夜遅くに呼んじゃって、しかも泊まらせてしまって……」
「今更気にするな。じゃあ俺はウラーの部屋にでも厄介になるとするか」
「ふぁ~あ~」とあくびをしながら眠そうに言うクールベさんに、ひとつ疑問が生じた。
「クールベさんとウラーさんって、とっても仲良いですよね」
「俺とウラーか?」
「はい。薬の調合とか一緒にしてるし、僕に魔力の調整を教えてくれていた時も仲良くお話……いや、あれは喧嘩みたいな感じだったような…でも、信頼関係があるっていうか。悩み事も態々執事室に行ってウラーさんに言ったっていうし」
「そりゃ、ウラーは俺の伴侶だからな」
「「……………え?」」
伴侶……って、あの伴侶?
ニエルド様とパネースさんみたいな、ギュスター様とムーサ様みたいな、あの伴侶?
っていうか、今フレイヤさんも一緒に驚かなかった? 自分の叔父に伴侶がいることを知らないなんてそんなことある?……いや、そっか、そうだった、フレイヤさんは自分に叔父さんがいること自体知らなかったんだった。世間知らずにも程がある系男子なんだった。
「知らなかったのか?」
「「はい」」
やっぱ知らなかったみたい。
「まったく…フレイヤ、お前には呆れるぜ。俺が叔父であることも知らなかったうえに自分専属の執事の伴侶も把握していないなんてな」
「ええ、ウラーには驚かされますね。薬師だったことも叔父上の伴侶だったことも私は知りませんでした」
「俺はお前にびっくりだよ…っ、たく、」
クールベさんは呆れ返ってため息しか出ないようだ。
フレイヤさんのそういうところも魅力的だと思う。これからもまだまだ知らない事実があるのかもしれないと思うと、ワクワクさえする。
そうだ、今度ウラーさんにクールベさんの馴れ初めでも聞こうかな? 教えてくれるかな………って、
「ええっ!?」
「どうしたハルオミ」
「なんだ、ハルオミ君、驚き方にやけに時差があるな。まさか君もフレイヤと同じ不思議ちゃんなのか?」
「いや…あの、えっと……ウラーさんって、おいくつなんですか…?」
「あいつは24だが?」
「24!?」
「それがどうした?」
「かなり歳の差なんだなと思って……いえあの、首を突っ込むわけではないのですが、びっくりして」
だって、クールベさん、フレイヤさんの叔父さんってことはそれなりに年齢行ってるはずだし。
まぁ不思議なことに見た目は2、30代にしか見えないけどさ。
フレイヤさんよりも背が高くて筋肉もがっちりしてるから、現役バリバリのプロバスケットボール選手にすら見えるけどさ。
勝手に1人であたふたしていると、クールベさんとフレイヤさんは顔を見合わせながら首を傾げた。
「そんなにいうほど歳の差か?」
「確かに私の両親はそれほど歳が離れていないし、ハルオミは不思議に思うかもしれないが、世間的にはそれほど」
「お前が世間を語るな世間知らず。
だがまぁこいつの言う通りだ、俺とウラーのような年齢差は珍しくも無いぜ? まぁ、ちょっと離れてはいるけどな」
「そっ、そうなんですか!?」
ウラーさん24歳、クールベさんが50代くらいとして…20~30歳離れてるってこと!?
ひぇー、愛の力はすごい……などと心の中で感動していると、フレイヤさんが「そうか」と思い出したように言った。
「ハルオミの世界では、平均寿命が80かそこらだったね。それも関係しているのかもしれない。ここでは以前も言った通り、300歳くらいまで生きる人間が多いから」
「なるほどな……俺らにとっちゃそこまででもない年齢差も、ハルオミ君の世界じゃとてつもなく離れているように感じるわけか。ははっ、面白いな」
「そ、そういうことか……」
なるほど、そう言われたらちょっと納得。
3倍以上生きるわけだから、僕の価値観では親子のような年齢差でもこの世界ではちょっとしたことなんだ。
ま、年齢情報無くクールベさんとウラーさんが並んでたら、普通にお似合いのカップルだと思っちゃいそうだもんな。
「そうだ!」
「なんだ、ハルオミ君思ったより元気だな。安心したぜ」
何度も大きな声を上げる僕を見てクールベさんが笑う。
「……僕も300年くらい生きられる体になったんだなって思い出したんです。全然実感わかなくて忘れてた……」
「そうか、まあ、まだここへ来て一年も経ってねぇんだ、無理はない。これから少しずつ実感していくさ」
「そうだな。ハルオミ、これから200年以上の付き合いになるが、よろしく頼む」
「うん、フレイヤさん。楽しい200年にしようね」
前の世界だったら考えられないような言葉も、この世界では嘘でも何でも無いから不思議だ。
「お前ら……」
クールベさんが苦笑いしながらなにやらゴニョゴニョ言っていたけど、僕はもう幸せと安心と脱力感で眠気がピークに達していて、多幸感に包まれながら眠っていた。
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