74 / 147
東の祓魔師と側仕えの少年
74.報告は大事①
しおりを挟む◆
今日は非常に充実した日を過ごした。
魔力の訓練をして、農園で芋の世話をして、それからマッシュポテトの名付け親?になった。
そのあとは料理人さん達から質問責めにあった。「ハルオミ殿の世界には、この芋を使った料理はどのくらい存在するのですか?」「この"まっしゅぽてと"なるものはあちらの世界でも主食にされているのですか?」「やはり国ごとに料理の違いなどもあるのでしょうか?」「芋を使った異界料理をご教授いただけませんか?」
いつのまにか僕も彼らも緊張が解けていた。
僕はマッシュポテトを少しアレンジした"ポテトサラダ"の作り方を教えて、彼らに作ってもらった。
元々食事会の時の約束でアップルパイの作り方を教えるつもりだったけど、思いの外マッシュポテトで盛り上がってしまったのだ。
自分では今は料理ができないけど、彼らは少し教えるだけで手際良く作ってくれたので「やっぱりプロは違うなあ~」と感動した。それに魔法を活用しながらだから、とても効率的に調理が進むのだ。
厨房にはハムみたいなお肉や野菜もあったからそれを使わせてもらった。マヨネーズはなかったけど、お酢とかたまごとか塩などはあったのでそれでなんちゃってマヨネーズを作ってもらって代用。
ちなみにこのなんちゃってマヨネーズでまたひと盛り上がりを見せた。みなさん馴染みのない味わいだったようで最初は戸惑っていたが、野菜につけて食べると美味しいですよと勧めると、ボールいっぱいに作ったマヨネーズが一瞬でなくなったのである。
そうこうしつつもポテトサラダが完成して、イザベラやパネースさんや料理人さん達みんなで試食した。
「この味わいは初めてだ…!」「これがサラダ!?」「うまい…皆、レシピは頭に入ったな!? これからメニューに加えるぞ!」と大盛り上がり。
「さすが料理人さん……! 僕少し教えただけなのに、こんなに美味しく作ってくださって感動です!」
「ハルオミ殿の教え方がうまいんだ! もし良かったら、また時間がある時に次はその……あの、"あっぷるぱい"というやつを……」
「もちろんです! 僕も今日皆さんとその件についてお話がしたくてここに来たんです」
よっしゃぁぁぁっ! と歓声が上がり、こちらまで嬉しくなってしまう。
そんなこんなで、あっという間に1日が終わってしまったのだ。
僕はお風呂から出て寝巻き用の薄襦袢に着替え、ベッドに寝転がって休息をとる。
色々試食して、お礼にと料理人さん達が自信作を振る舞ってくれたからお腹いっぱいになっちゃった。夜ご飯はナシでいいかな。あ、でもフレイヤさん帰って来たらお腹空いてるかな。
厨房から彼の分だけでも夕飯貰ってこようかな。
あれこれ考えていると、彼の気配が近づいていることに気づく。
——ガチャ
「おかえり、フレイヤさん」
「ただいま、ハルオミ」
彼を出迎えるため起きあがろうとすると、フレイヤさんはそそくさと足早にこちらへ来て僕に抱きついて来た。
「フレイヤさん、疲れた?」
ぽんぽんと背中を撫でると、彼の匂いがあたりに舞い上がる。
「ああ、しかしその疲れも今一気にどこかへ行ってしまったよ」
職場復帰した彼は仕事から戻るたびにこうして密着してくるのだ。魔物の討伐によって魔祓い師の受ける影響——。それをこうして僕が癒せているなんて、嬉しいことこの上ない。
「夜ご飯は? ちょうどこれから厨房にフレイヤさんのを貰いに行こうと思ってたんだ」
「ありがとう。しかし今日は先ほど兄さんとビェラとともに父上と母上のところへ行って来たから、そこで済ませて来たんだ。ハルオミは?」
「僕もお腹いっぱいなんだ。今日は料理人さんたちに僕の世界の料理を作ってもらったり、それから色々振る舞ってもらったから」
「そうかい。皆と仲良くなれて良かった」
「うん、とっても良い方たちばかりで楽しかった!」
今日の思い出ににやけていると、フレイヤさんが僕の頬に手を添えて優しく撫でた。
「君の笑顔は、どんな妙薬よりも元気をもらえるね。今日もずっと君に会いたくて仕方がなかった。昼も戻れなかったしね」
「そうだね。今日はお昼帰って来なかったものね。忙しかったの?」
「ああ、少しね。実は昼にも父上と母上のところへ行っていたんだ。兄さんから大事な話があると呼び止められて」
「ギュスター様とムーサ様のところへ? 夜も行ってきたんでしょ? 何かあったの?」
何だろう大事な話って。しかも昼と夜に二度も。もしかして、当主にご就任されて早々にトラブル!?
そんな心配もすっ飛ぶ発言が、次の瞬間彼から繰り出されたのである。
「ああ。兄上が、パネースと祝言を挙げるそうなんだ」
……………、え?
9
お気に入りに追加
1,375
あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

この恋は無双
ぽめた
BL
タリュスティン・マクヴィス。愛称タリュス。十四歳の少年。とてつもない美貌の持ち主だが本人に自覚がなく、よく女の子に間違われて困るなぁ程度の認識で軽率に他人を魅了してしまう顔面兵器。
サークス・イグニシオン。愛称サーク(ただしタリュスにしか呼ばせない)。万年二十五歳の成人男性。世界に四人しかいない白金と呼ばれる称号を持つ優れた魔術師。身分に関係なく他人には態度が悪い。
とある平和な国に居を構え、相棒として共に暮らしていた二人が辿る、比類なき恋の行方は。
*←少し性的な表現を含みます。
苦手な方、15歳未満の方は閲覧を避けてくださいね。



真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果
はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる