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東の祓魔師と側仕えの少年

74.報告は大事①

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今日は非常に充実した日を過ごした。
魔力の訓練をして、農園で芋の世話をして、それからマッシュポテトの名付け親?になった。

そのあとは料理人さん達から質問責めにあった。「ハルオミ殿の世界には、この芋を使った料理はどのくらい存在するのですか?」「この"まっしゅぽてと"なるものはあちらの世界でも主食にされているのですか?」「やはり国ごとに料理の違いなどもあるのでしょうか?」「芋を使った異界料理をご教授いただけませんか?」

いつのまにか僕も彼らも緊張が解けていた。
僕はマッシュポテトを少しアレンジした"ポテトサラダ"の作り方を教えて、彼らに作ってもらった。

元々食事会の時の約束でアップルパイの作り方を教えるつもりだったけど、思いの外マッシュポテトで盛り上がってしまったのだ。
自分では今は料理ができないけど、彼らは少し教えるだけで手際良く作ってくれたので「やっぱりプロは違うなあ~」と感動した。それに魔法を活用しながらだから、とても効率的に調理が進むのだ。

厨房にはハムみたいなお肉や野菜もあったからそれを使わせてもらった。マヨネーズはなかったけど、お酢とかたまごとか塩などはあったのでそれでなんちゃってマヨネーズを作ってもらって代用。
ちなみにこのなんちゃってマヨネーズでまたひと盛り上がりを見せた。みなさん馴染みのない味わいだったようで最初は戸惑っていたが、野菜につけて食べると美味しいですよと勧めると、ボールいっぱいに作ったマヨネーズが一瞬でなくなったのである。

そうこうしつつもポテトサラダが完成して、イザベラやパネースさんや料理人さん達みんなで試食した。

「この味わいは初めてだ…!」「これがサラダ!?」「うまい…皆、レシピは頭に入ったな!?  これからメニューに加えるぞ!」と大盛り上がり。

「さすが料理人さん……!  僕少し教えただけなのに、こんなに美味しく作ってくださって感動です!」

「ハルオミ殿の教え方がうまいんだ!  もし良かったら、また時間がある時に次はその……あの、"あっぷるぱい"というやつを……」

「もちろんです!  僕も今日皆さんとその件についてお話がしたくてここに来たんです」

よっしゃぁぁぁっ! と歓声が上がり、こちらまで嬉しくなってしまう。



そんなこんなで、あっという間に1日が終わってしまったのだ。



僕はお風呂から出て寝巻き用の薄襦袢に着替え、ベッドに寝転がって休息をとる。

色々試食して、お礼にと料理人さん達が自信作を振る舞ってくれたからお腹いっぱいになっちゃった。夜ご飯はナシでいいかな。あ、でもフレイヤさん帰って来たらお腹空いてるかな。

厨房から彼の分だけでも夕飯貰ってこようかな。

あれこれ考えていると、彼の気配が近づいていることに気づく。

——ガチャ

「おかえり、フレイヤさん」

「ただいま、ハルオミ」

彼を出迎えるため起きあがろうとすると、フレイヤさんはそそくさと足早にこちらへ来て僕に抱きついて来た。

「フレイヤさん、疲れた?」

ぽんぽんと背中を撫でると、彼の匂いがあたりに舞い上がる。

「ああ、しかしその疲れも今一気にどこかへ行ってしまったよ」

職場復帰した彼は仕事から戻るたびにこうして密着してくるのだ。魔物の討伐によって魔祓い師の受ける影響——。それをこうして僕が癒せているなんて、嬉しいことこの上ない。

「夜ご飯は?  ちょうどこれから厨房にフレイヤさんのを貰いに行こうと思ってたんだ」

「ありがとう。しかし今日は先ほど兄さんとビェラとともに父上と母上のところへ行って来たから、そこで済ませて来たんだ。ハルオミは?」

「僕もお腹いっぱいなんだ。今日は料理人さんたちに僕の世界の料理を作ってもらったり、それから色々振る舞ってもらったから」

「そうかい。皆と仲良くなれて良かった」

「うん、とっても良い方たちばかりで楽しかった!」

今日の思い出ににやけていると、フレイヤさんが僕の頬に手を添えて優しく撫でた。

「君の笑顔は、どんな妙薬よりも元気をもらえるね。今日もずっと君に会いたくて仕方がなかった。昼も戻れなかったしね」

「そうだね。今日はお昼帰って来なかったものね。忙しかったの?」

「ああ、少しね。実は昼にも父上と母上のところへ行っていたんだ。兄さんから大事な話があると呼び止められて」

「ギュスター様とムーサ様のところへ? 夜も行ってきたんでしょ?  何かあったの?」

何だろう大事な話って。しかも昼と夜に二度も。もしかして、当主にご就任されて早々にトラブル!?


そんな心配もすっ飛ぶ発言が、次の瞬間彼から繰り出されたのである。

「ああ。兄上が、パネースと祝言を挙げるそうなんだ」


……………、え?





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