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東の祓魔師と側仕えの少年
65.本日のデザート①
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ニエルド様たちのおかげでフランクな雰囲気のまま食事会は始まった。上座にギュスター様とムーサ様が座り、ギュスター様が開始の音頭を取る。
「まず初めに……ハルオミ」
「は、はい!」
不意打ちで名前を呼ばれたため返事が裏返りそうになってしまった。
「今回の件は君に何と感謝を述べて良い分からない。兎に角我が息子を救ってくれたこと、ムーサともども心より感謝申し上げる。本当にありがとう」
ギュスター様とムーサ様は深く頭を下げた。
「そんな…っ頭を上げてください。僕のほうこそありがとうございます。したいようにさせてくれて、命まで救っていただき、本当にありがとうございます」
二人に負けじと、テーブルに頭を付ける勢いで礼を述べる。するとギュスター様がこう続けた。
「ハルオミに出会ってからのフレイヤは目を見張るほどに柔和になった。君はフレイヤの命だけでなく、心まで救ってくれたのだ。こちらこそ、どうか頭を上げてくれ」
促されるままにゆっくりと頭を上げると、ムーサ様が微笑んで「うん、随分と顔色が良くなった。本当に良かった…」と呟いた。
「ああ。ハルオミ、今日は好きなものを好きなだけ食べて英気を養ってくれ」
「はい! ありがとうございます…!」
ギュスター様の暖かい心遣いにできる限り力強く返事をすると、屋敷の方たちが次々に料理を運んできてくれて、皆それぞれ好きなように食事を始めた。
お肉料理に魚料理にサラダに煮物や炒め物。
香ばしい香りと色とりどりの料理に嗅覚も視覚もやられてしまった僕は、緊張が解けて一気にお腹が空いてきた。
テーブルに並べられる豪華な品々に目移りしてしまっていると、フレイヤさんが少しずつ取り分けて僕の前に出してくれる。
イザベラも自分のお気に入りの料理を勧めてくれた。
「ハルオミ、もっと元気出すには肉を食わねーと。フレイヤ様、これもハルオミに」
「ありがとうイザベラ。ほらハルオミ、何でも好きに食べなさい」
「ありがとう」
イザベラが取り分けてくれたお肉も差し出され、僕の周りには到底食べきれないほどの食事が並んでいる。
周りではわいわいと皆が会話を楽しみながらあちらに手を伸ばし、こちらに手を伸ばし、笑い声なんてずっと絶えない。
お酒しか進まないギュスター様に「いい加減飯も食え」と注意するムーサ様。ニエルド様とパネースさんはそんな二人を見て「アラアラ」と微笑む。ビェラ様はイザベラの世話ばかり焼いていて一向に食が進んでいない。隣にはせっせと僕に食事を取り分けるフレイヤさん。
暖かい空気にあてられて溢れ出しそうになる涙をグッと飲み込んでひとくち、またひとくちと口へ運ぶ。
何だかほっとする味についつい目元と口元が緩む。
気がつけば、いつもより随分と箸が進んでいて、半分も食べきれないと思っていたお皿がほとんど空になっていた。
「こちらの世界の料理は、ハルオミ殿の口に合うのか?」
美味しい料理にニヤけているところをニエルド様に目撃され、そう問われた。
「はい、とっても美味しいです!」
と答えると、パネースさんが「ふふふ」と笑いながら言った。
「でもニエルドさん、ハルオミ君の世界の料理も目玉が飛び出てしまうほど美味しいんですよ」
「へえ、そうなのか?」
「ええ。一口食べるともう天にも昇るような気持ちになってしまいます。あの、あっぷるぱい? という甘いお菓子の味が私忘れられなくて」
「パネースが一番食ってたもんな」
「イザベラ、それは言わない約束ですよ」
「へぇ~ハルオミ君の世界の料理かあ、とても興味があるなあ。フレイヤ兄さんも食べたことがあるのかい?」
「もちろんだ。私はハルオミの作ったあっぷるぱいもパンもすぽんじけーきも、それからサンドイッチも全て頂いたよ」
「いいなあ~兄さんたちだけ。僕も食べてみたかった」
話はいつの間にやら僕の世界の料理になっていたので、このタイミングを逃す手はないと思い切り出した。
「まず初めに……ハルオミ」
「は、はい!」
不意打ちで名前を呼ばれたため返事が裏返りそうになってしまった。
「今回の件は君に何と感謝を述べて良い分からない。兎に角我が息子を救ってくれたこと、ムーサともども心より感謝申し上げる。本当にありがとう」
ギュスター様とムーサ様は深く頭を下げた。
「そんな…っ頭を上げてください。僕のほうこそありがとうございます。したいようにさせてくれて、命まで救っていただき、本当にありがとうございます」
二人に負けじと、テーブルに頭を付ける勢いで礼を述べる。するとギュスター様がこう続けた。
「ハルオミに出会ってからのフレイヤは目を見張るほどに柔和になった。君はフレイヤの命だけでなく、心まで救ってくれたのだ。こちらこそ、どうか頭を上げてくれ」
促されるままにゆっくりと頭を上げると、ムーサ様が微笑んで「うん、随分と顔色が良くなった。本当に良かった…」と呟いた。
「ああ。ハルオミ、今日は好きなものを好きなだけ食べて英気を養ってくれ」
「はい! ありがとうございます…!」
ギュスター様の暖かい心遣いにできる限り力強く返事をすると、屋敷の方たちが次々に料理を運んできてくれて、皆それぞれ好きなように食事を始めた。
お肉料理に魚料理にサラダに煮物や炒め物。
香ばしい香りと色とりどりの料理に嗅覚も視覚もやられてしまった僕は、緊張が解けて一気にお腹が空いてきた。
テーブルに並べられる豪華な品々に目移りしてしまっていると、フレイヤさんが少しずつ取り分けて僕の前に出してくれる。
イザベラも自分のお気に入りの料理を勧めてくれた。
「ハルオミ、もっと元気出すには肉を食わねーと。フレイヤ様、これもハルオミに」
「ありがとうイザベラ。ほらハルオミ、何でも好きに食べなさい」
「ありがとう」
イザベラが取り分けてくれたお肉も差し出され、僕の周りには到底食べきれないほどの食事が並んでいる。
周りではわいわいと皆が会話を楽しみながらあちらに手を伸ばし、こちらに手を伸ばし、笑い声なんてずっと絶えない。
お酒しか進まないギュスター様に「いい加減飯も食え」と注意するムーサ様。ニエルド様とパネースさんはそんな二人を見て「アラアラ」と微笑む。ビェラ様はイザベラの世話ばかり焼いていて一向に食が進んでいない。隣にはせっせと僕に食事を取り分けるフレイヤさん。
暖かい空気にあてられて溢れ出しそうになる涙をグッと飲み込んでひとくち、またひとくちと口へ運ぶ。
何だかほっとする味についつい目元と口元が緩む。
気がつけば、いつもより随分と箸が進んでいて、半分も食べきれないと思っていたお皿がほとんど空になっていた。
「こちらの世界の料理は、ハルオミ殿の口に合うのか?」
美味しい料理にニヤけているところをニエルド様に目撃され、そう問われた。
「はい、とっても美味しいです!」
と答えると、パネースさんが「ふふふ」と笑いながら言った。
「でもニエルドさん、ハルオミ君の世界の料理も目玉が飛び出てしまうほど美味しいんですよ」
「へえ、そうなのか?」
「ええ。一口食べるともう天にも昇るような気持ちになってしまいます。あの、あっぷるぱい? という甘いお菓子の味が私忘れられなくて」
「パネースが一番食ってたもんな」
「イザベラ、それは言わない約束ですよ」
「へぇ~ハルオミ君の世界の料理かあ、とても興味があるなあ。フレイヤ兄さんも食べたことがあるのかい?」
「もちろんだ。私はハルオミの作ったあっぷるぱいもパンもすぽんじけーきも、それからサンドイッチも全て頂いたよ」
「いいなあ~兄さんたちだけ。僕も食べてみたかった」
話はいつの間にやら僕の世界の料理になっていたので、このタイミングを逃す手はないと思い切り出した。
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