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東の祓魔師と側仕えの少年
54.おかえり①
しおりを挟むくっきりとした切れ長の目で、彫りが深くて、長い銀髪は繊細で、鼻はすっと高くて、肌もすべすべしてる。心が優しくて、撫でてくれる手はあったかくて、僕の作ったものを美味しそうに食べてくれる。
これが僕の大切な人。ここが僕の幸せの場所。
「……ハルオミ…っ! おかえり、おかえり、ハルオミ」
彼の熱い抱擁は、僕が今確かにここに存在していると教えてくれた。
「ただいま、フレイヤさん……」
この温もりをずっと待っていた気がする。この温もりに抱き締められるといつも心がふわふわしてぎゅうってなる。ぎゅう、って……
「フレイヤさん、ちょっとだけ、くるしい」
「!!!す、すまないハルオミ!! 苦しかったね、大丈夫かい!? 薬草酒を飲むかい? 水の方がいいだろうか、それとも」
彼は体を離して狼狽える。
「だいじょうぶだよ、フレイヤさん。それよりも、手を繋いで欲しい……」
フレイヤさんは、いつも僕の望みを叶えてくれる。
「長い長い、夢を見てた気がするんだ」
「どんな夢?」
「……忘れちゃった。でも、とっても温かった。僕をここに、導いてくれた」
「そうか。よく、戻ってきてくれたね。その夢に感謝をしなくてはいけないね」
フレイヤさんが笑う。ああ、僕は今この笑顔を見るために生きている。やっぱりこの人に会うためにこの世界に来たんだ。根拠はないけど、絶対そうだって思う。
フレイヤさんは大きな手で僕の手を包みながら、僕が眠っていた時の話をしてくれた。
ちなみに、今は夜中の3時くらいなんだって。
そして驚くことに、番の儀式から数えて僕は6日間眠り続けていたという。
「そんなに、眠っていたの」
「どうなるかと思った。君がどこかへいなくなってしまうのではないかと絶望した。クールベ叔父上が言っていたよ。君にひとりで抱え込ませてしまった、と……」
フレイヤさんの目には涙の薄い膜が張っている。
「ごめんなさい、ちゃんと伝えなくて。不安にさせてごめんなさい」
僕は力の入らない手で一生懸命握った。
「謝らないでくれハルオミ、謝るのは私の方だ。君にひとりで抱え込ませてしまって、本当にすまない」
フレイヤさんは顔を落として謝る。
「また、謝った」
「………ハルオミ?」
「僕、謝らないでって言ったのに、謝ったから、フレイヤさん罰ゲームね……」
「罰、ゲーム……?」
「うん。死ぬまで一生、僕のこと大切にして。それから、僕にフレイヤさんのこと、大切にさせて」
フレイヤさんは身を乗り出して僕の体を抱きしめた。力が入りすぎてしまわないようにちょっと腕を浮かせてるのが可愛い。
「私にとっては褒美になってしまうが、いいのかい?」
「うん、いいよ。許す」
フレイヤさんの甘い息が近づいてきて、僕の熱い唇に柔らかく口付ける。愛おしい、愛してる、好き、胸が苦しい。感情が一気にせめぎ合って忙しい。愛おしさに体が押しつぶされてしまいそう。
ああ、番うことができた。
直感でそう感じた。
「治ったんだね」
「ああ、ハルオミのおかげだ。見ておくれ」
フレイヤさんはシャツを捲り、綺麗な綺麗な肌を見せてくれた。
「良かった、ほんとに、っ、フレイヤさん、良かったっ……」
涙が止まらなかった。
止め方もわからなくなってしまった。
せっかく綺麗な肌を目に焼き付けたいと思うのに、視界がぼやけてしまう。
泣くとこんなに体力消費するんだなあってぼんやり考えながら、フレイヤさんが目をタオルでそっと拭ってくれるその感触の心地よさに微睡む。
フレイヤさん、眉毛を下げて「大丈夫かい?」「どこか痛い?」ってずっと聞いてる。大丈夫だよって言いたいけど、言おうとしたらまた涙が出てきてしまう。
すると彼がどんどんおろおろする。その様子が可愛いから、僕はこのまま泣きながら彼の愛らしい姿をぼやけた目に焼き付けることにした。
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