【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

文字の大きさ
上 下
54 / 147
東の祓魔師と側仕えの少年

54.おかえり①

しおりを挟む



くっきりとした切れ長の目で、彫りが深くて、長い銀髪は繊細で、鼻はすっと高くて、肌もすべすべしてる。心が優しくて、撫でてくれる手はあったかくて、僕の作ったものを美味しそうに食べてくれる。

これが僕の大切な人。ここが僕の幸せの場所。

「……ハルオミ…っ! おかえり、おかえり、ハルオミ」

彼の熱い抱擁は、僕が今確かにここに存在していると教えてくれた。

「ただいま、フレイヤさん……」

この温もりをずっと待っていた気がする。この温もりに抱き締められるといつも心がふわふわしてぎゅうってなる。ぎゅう、って……

「フレイヤさん、ちょっとだけ、くるしい」

「!!!す、すまないハルオミ!!  苦しかったね、大丈夫かい!?  薬草酒を飲むかい?  水の方がいいだろうか、それとも」

彼は体を離して狼狽える。

「だいじょうぶだよ、フレイヤさん。それよりも、手を繋いで欲しい……」

フレイヤさんは、いつも僕の望みを叶えてくれる。

「長い長い、夢を見てた気がするんだ」

「どんな夢?」

「……忘れちゃった。でも、とっても温かった。僕をここに、導いてくれた」

「そうか。よく、戻ってきてくれたね。その夢に感謝をしなくてはいけないね」

フレイヤさんが笑う。ああ、僕は今この笑顔を見るために生きている。やっぱりこの人に会うためにこの世界に来たんだ。根拠はないけど、絶対そうだって思う。



フレイヤさんは大きな手で僕の手を包みながら、僕が眠っていた時の話をしてくれた。


ちなみに、今は夜中の3時くらいなんだって。

そして驚くことに、番の儀式から数えて僕は6日間眠り続けていたという。

「そんなに、眠っていたの」

「どうなるかと思った。君がどこかへいなくなってしまうのではないかと絶望した。クールベ叔父上が言っていたよ。君にひとりで抱え込ませてしまった、と……」

フレイヤさんの目には涙の薄い膜が張っている。

「ごめんなさい、ちゃんと伝えなくて。不安にさせてごめんなさい」

僕は力の入らない手で一生懸命握った。

「謝らないでくれハルオミ、謝るのは私の方だ。君にひとりで抱え込ませてしまって、本当にすまない」

フレイヤさんは顔を落として謝る。

「また、謝った」

「………ハルオミ?」

「僕、謝らないでって言ったのに、謝ったから、フレイヤさん罰ゲームね……」

「罰、ゲーム……?」

「うん。死ぬまで一生、僕のこと大切にして。それから、僕にフレイヤさんのこと、大切にさせて」

フレイヤさんは身を乗り出して僕の体を抱きしめた。力が入りすぎてしまわないようにちょっと腕を浮かせてるのが可愛い。

「私にとっては褒美になってしまうが、いいのかい?」

「うん、いいよ。許す」

フレイヤさんの甘い息が近づいてきて、僕の熱い唇に柔らかく口付ける。愛おしい、愛してる、好き、胸が苦しい。感情が一気にせめぎ合って忙しい。愛おしさに体が押しつぶされてしまいそう。

ああ、番うことができた。

直感でそう感じた。

「治ったんだね」

「ああ、ハルオミのおかげだ。見ておくれ」

フレイヤさんはシャツを捲り、綺麗な綺麗な肌を見せてくれた。

「良かった、ほんとに、っ、フレイヤさん、良かったっ……」

涙が止まらなかった。
止め方もわからなくなってしまった。
せっかく綺麗な肌を目に焼き付けたいと思うのに、視界がぼやけてしまう。

泣くとこんなに体力消費するんだなあってぼんやり考えながら、フレイヤさんが目をタオルでそっと拭ってくれるその感触の心地よさに微睡む。

フレイヤさん、眉毛を下げて「大丈夫かい?」「どこか痛い?」ってずっと聞いてる。大丈夫だよって言いたいけど、言おうとしたらまた涙が出てきてしまう。

すると彼がどんどんおろおろする。その様子が可愛いから、僕はこのまま泣きながら彼の愛らしい姿をぼやけた目に焼き付けることにした。





しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎

sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。 遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら 自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に スカウトされて異世界召喚に応じる。 その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に 第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に かまい倒されながら癒し子任務をする話。 時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。 初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。 2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

処理中です...