8 / 147
東の祓魔師と側仕えの少年
7.魔物を祓う者②
しおりを挟む
性行為なんて言うから最初はふざけているのかと思ったけど、この世界の人が生きるためには魔祓い師の存在は無くてはならないもので、魔祓い師にとって側仕えは命と同等に大切な存在。
なのに昨日、僕はその大切な役目も果たさずぐーすか気持ちよく寝てしまった。そうか。そりゃウラーさんも怒りたくなるよね。
「我がブロムスト国には、北の地セヴェラー、南の地イェフ、西の地ザパット、そしてここ、東の地ヴィーホットにそれぞれ祓魔家が住み、領土を守っています。そしてすべての魔祓い師はどれだけ遅くとも成人までには自分の側仕え決める……のですが……! フレイヤ様はいつまで経っても側仕えを置かず、祓魔による副作用を全てご自身お一人で受け止めておられたのです!! 全くほんとまじ何考えてんだか…!」
「そんなことができるの? だってすごく辛いんでしょう?」
「普通であれば不可能です。ただなんというか……あのお方は非常に図太く無神経で他人に興味が全く無い為、他の心優しい魔祓い師の方々に比べれば魔物から受ける影響も少ないのかもしれません。魔物は体というより、心への攻撃性が高いですからね」
ウラーさんは意外と辛辣らしい。
「ただ、全く大丈夫かと言われればそれはあり得ません。事実、フレイヤ様はこれまで他人を誰も部屋に寄せ付けなかったのです。執事も必要最低限の接触しか許されておりませんでしたし、お一人でダメージを抱え込んでおられることは明白でした」
「そうなんだ」
「フレイヤ様の寝台に上がる許可が降りたのはこれまでにハルオミ殿だけです。あなたを側仕えにすると言ったフレイヤ様のあの表情……これほど柔らかく自然な笑みをこぼすのを、わたくしは見たことがありませんでした」
感慨深そうにしみじみとウラーさんが言う。
いいはなしだなあ、とどこか他人事のように聞いていると、急に目の前にウラーさんが接近してきて、両の手を握られた。
「東の地の……いえ、この国の平和はハルオミ殿にかかっております!どうか…!どうかフレイヤ様の側仕えとしてこの屋敷にとどまってはくれませんか!
昨日は半ば強制的にここにお連れしましたが、選ぶ権利はあなたにもあります。もしあなたが望まないのであれば、無理強いする権利は我々にはありません」
真剣な表情のウラーさん。
こういうの初めてかもしれない。
今まで必要とされたことはなかった。
どちらかというと周りの足を引っ張って生きてきた。ぼーっとしてるなとか、何もできないなとか言われて。別にそれが嫌だったとか辛かったとかは無い。本当のことだから。
なんとなく僕はこのまま誰からも必要とされず生きていくんだろうなと思ってた。面倒くさく無いからそれでもいいなと思ってた。
でも今、ちょっと嬉しい。
この気持ちは何だろう。
面倒ごとは嫌いなはずなのに、僕を必要としてくれる人がいるのが嬉しい。くすぐったい。
「……分かったウラーさん。僕きちんと役目を果たす。フレイヤさんを癒せるように頑張る」
「素……素晴らしい!!!! なんと気高く心強い! さすがフレイヤ様がお選びになった側仕えです!」
ウラーさんがパチパチと拍手をくれる。褒められるのは好きだ。
「そうと決まれば、早速準備に取り掛かりましょう…!!」
準備……
準備って……
なのに昨日、僕はその大切な役目も果たさずぐーすか気持ちよく寝てしまった。そうか。そりゃウラーさんも怒りたくなるよね。
「我がブロムスト国には、北の地セヴェラー、南の地イェフ、西の地ザパット、そしてここ、東の地ヴィーホットにそれぞれ祓魔家が住み、領土を守っています。そしてすべての魔祓い師はどれだけ遅くとも成人までには自分の側仕え決める……のですが……! フレイヤ様はいつまで経っても側仕えを置かず、祓魔による副作用を全てご自身お一人で受け止めておられたのです!! 全くほんとまじ何考えてんだか…!」
「そんなことができるの? だってすごく辛いんでしょう?」
「普通であれば不可能です。ただなんというか……あのお方は非常に図太く無神経で他人に興味が全く無い為、他の心優しい魔祓い師の方々に比べれば魔物から受ける影響も少ないのかもしれません。魔物は体というより、心への攻撃性が高いですからね」
ウラーさんは意外と辛辣らしい。
「ただ、全く大丈夫かと言われればそれはあり得ません。事実、フレイヤ様はこれまで他人を誰も部屋に寄せ付けなかったのです。執事も必要最低限の接触しか許されておりませんでしたし、お一人でダメージを抱え込んでおられることは明白でした」
「そうなんだ」
「フレイヤ様の寝台に上がる許可が降りたのはこれまでにハルオミ殿だけです。あなたを側仕えにすると言ったフレイヤ様のあの表情……これほど柔らかく自然な笑みをこぼすのを、わたくしは見たことがありませんでした」
感慨深そうにしみじみとウラーさんが言う。
いいはなしだなあ、とどこか他人事のように聞いていると、急に目の前にウラーさんが接近してきて、両の手を握られた。
「東の地の……いえ、この国の平和はハルオミ殿にかかっております!どうか…!どうかフレイヤ様の側仕えとしてこの屋敷にとどまってはくれませんか!
昨日は半ば強制的にここにお連れしましたが、選ぶ権利はあなたにもあります。もしあなたが望まないのであれば、無理強いする権利は我々にはありません」
真剣な表情のウラーさん。
こういうの初めてかもしれない。
今まで必要とされたことはなかった。
どちらかというと周りの足を引っ張って生きてきた。ぼーっとしてるなとか、何もできないなとか言われて。別にそれが嫌だったとか辛かったとかは無い。本当のことだから。
なんとなく僕はこのまま誰からも必要とされず生きていくんだろうなと思ってた。面倒くさく無いからそれでもいいなと思ってた。
でも今、ちょっと嬉しい。
この気持ちは何だろう。
面倒ごとは嫌いなはずなのに、僕を必要としてくれる人がいるのが嬉しい。くすぐったい。
「……分かったウラーさん。僕きちんと役目を果たす。フレイヤさんを癒せるように頑張る」
「素……素晴らしい!!!! なんと気高く心強い! さすがフレイヤ様がお選びになった側仕えです!」
ウラーさんがパチパチと拍手をくれる。褒められるのは好きだ。
「そうと決まれば、早速準備に取り掛かりましょう…!!」
準備……
準備って……
12
お気に入りに追加
1,376
あなたにおすすめの小説
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
ひきこもぐりん
まつぼっくり
BL
地下の部屋に引きこもっているあほかわいい腐男子のもぐらくんが異世界に部屋ごと転移しました。
え、つがい?
うーん…この設定は好きなんだよなぁ。
自分にふりかかるとは…壁になって眺めていたい。
副隊長(綺麗な烏の獣人)×もぐらくん(暗いとこと地下が好き)
他サイトにも掲載中
18話完結
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる