ある時計台の運命

丑三とき

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王都〜第二章〜

※甘美な夜②

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「はぁ、……ぁ、んっ」

一番太いところが入ってしまえば、ずん、とお腹に鈍い快感が生まれる。

「あぁぁ、」

声が我慢できない。今までの気持ちよさとはまた違う感覚。未知の快楽をどう受け止めていいのかわからなくなる。熱の質量がどんどん増えていき、お互いに荒くなる息を交えるようにキスをした。

どれだけの時間が過ぎたのか到底わからない。とにかくゆっくり少しずつ受け入れていった。ある程度まで進んだところで、ジルさんが動きを止めた。

「はぁ、はぁ……っ、はい……っ、た?」

「あぁ、入った」

ジルさんが僕の手を取り、下の方へ誘導した。ジルさんのものを飲み込んだところの境目に指を這わされ、顔に血液が上るのがわかる。

「は、ぃっ、てる……」

改めて自分の及んでいる行為がどれだけ激しいものかを痛感させられる。

「しばらくこのまま、慣れるまで待とう」

そう言って、ジルさんは再び僕に口付けた。あんなに恥ずかしくてたまらなかったキスを今日は何度もしている。

彼はそのまま下へ下へと顔を移動させ、首筋、胸へとキスを落とす。僕も何かしたい。なんとか動く腕をジルさんに伸ばし、大きな胸板を撫でる。

「僕も、ジルさん、に……つけていい、っですか」

蚊の鳴くような声を聞き取ってくれたジルさんは、二つ返事で了承の意を示す。

「ああ」

僕の頭の左右に肘をついて、胸を近づけてくれる。ジルさんの背中に手をまわし、一度抱きついてぬくもりを感じてから胸の上のあたりに唇を這わす。

「ん、」

うまくつかない。これ、どうしてるの? と目で訴えかけると、「皮膚を強く吸ってみてくれ」と回答が返ってくる。

ちゅう、と思い切りジルさんの胸板に吸い付く。数秒後唇を離すと、赤い印がついていた。この気持ちはなんだろう。また知らない感情が僕を襲う。嬉しい。愛しい。切ない。その全てをひっくるめたような強い愛情が芽生えた。

「いっしょ、だ……」



——ガバッ!

大人しくしていたジルさんが僕をきつく抱きしめた。

「あまり可愛いことを言わないでくれ。歯止めが効かなくなる」

ギリギリの理性を保ったような声。自分が彼を興奮させていると思うとたまらない気持ちになる。

「効かなくても、いい、……ジルさんの好きに、してほしっ……」

僕の中でジルさんがもう一回り大きくなった。え、うそ待って。まだ最終形態じゃなかったの?

お尻の違和感に集中していたので、ジルさんの目がギラギラと猛獣のように光っていることに気が付かなかった。

「んぅ、ぁ、」

ずる、と少しずつ引き出される感覚にかすかな快感を見いだしてしまう。ギリギリまで抜かれたところで、また少しずつ押し戻される。
ゆっくりと時間をかけて何度かそれを繰り返すうちに、圧迫感や苦しさよりも、体を貫かれることの悦びがはるかに上回っていた。

「ハァっ、…ぁあぁっ、んっ」

抽出は少しずつ速くなっていく。ジルさんの硬いものが快いところを掠めると、電気が走ったように目の前がチカチカと点滅する。

「ぁああぁ、……ぁあ! んっ、」

体の全部でジルさんを感じてる。
呼吸の乱れから、彼も限界が近いことがわかる。

「ぁああっ、あ、も、だめ……っ、で、ちゃう」

高められた体はビクビクと波うち、腰が震えるのを感じた。もうむり。こんな気持ちいいの知らない。限界を伝えるとジルさんは僕の眉をなぞり、小さく微笑んだ。そのまま僕の下腹部に触れ、何度か扱いた。

「ぁぁあっ! はっ、あぁっ、ん、ぁぁあ」

お腹にぱたぱたと暖かいものが落ちてくる。その白濁は僕のだけじゃなかった。ジルさんのと僕のが混ざり合ってお腹に水溜りを作る。その光景に言いようのない高揚感が生まれた。ジルさんが僕の体で気持ちよくなってくれたことに、たまらなく興奮している。


ジルさんに瞼を撫でられたのを最後に、僕の記憶はそこで途切れた。









「んっ、」

目を覚ますと、まだ日は昇りきっていなくて、あたりは薄暗い朝焼けに包まれていた。













——ぶあっっっ



「あ、うわあー」

全てを思い出して体の血が一滴残らず顔に集まってきたみたいになる。枕に顔を埋めて逃れられるはずのない羞恥から身を隠そうと尽力した。
ついに、ついに……うわ、うわー

どうしよどうしよ。しちゃった。
とりあえずジルさんはもうお仕事に行ってるみたい。よかった。今顔なんて合わせられないもの。っていうか……

初めてなのに、あんなに気持ちいいものなの?

最後の方なんて訳わかんなくなって結局意識なくなっちゃったし。僕って相当淫らなのかな。もう思い出すだけで熱くなってくる。いやだいやだ。



——ガチャ、カツ、カツ、

え。
ん?

ガチャ?
何この足音。ジルさんお仕事行ったんじゃないの。そう言えばまだ明け方だったんだ。もしかして洗面所で身支度をしていたところだったのかもしれない。

だめ顔見れない。だめだめだめだめ。今はだめ。

寝たふり、寝たふり———

なんてできるはずもなく

「アキオ、おはよう」

ベッドに腰掛けたジルさんはどのタイミングで僕が起きてることに気づいたのか、髪を撫で付けながら朝の挨拶をしてきた。
僕は枕に顔を埋めたまま返事をした。

「おはよう、ございます……」

「どこか体が痛むか?  すまない、無理をさせてしまった」

なかなか顔を上げない僕を見てどこか痛めていると勘違いしたのだろう。背中をさすったり頭を撫でたりものすごい労ってくれる。いけない。とても心配させている。顔を上げて大丈夫だと伝えたいけど今ジルさんの顔絶対見れない。
しばらくの葛藤の末、僕は横を向いて目をすこーしだけ出して、「大丈夫です」と伝えた。

「どこも、いたくないです。でもはずかしくって、……ジルさん、あの、片付けとかも全部」

僕の小さな声を聞き取ろうと、ジルさんは膝をついて顔を思い切り近づけてくる。やめて。

「気にすることはない。本当に痛むところはないか?」

声が近くで響く低い声で耳がじんじんする。
あーダメだダメだ、ジルさん心配してくれてるんだから! こんな態度じゃもっと不安にさせちゃう。しっかりしろ僕。とにかく全部正直に答えるんだ。

「ないです。全然どこも痛くないです」

「体に違和感は」

「いわかん……?  んー、なんだろう。なんか、まだジルさんのが入ってるみたい……」

「っ!……、そうか……」

「あれ、ジルさんおふろ入ってたの?」

難しい顔をする彼の髪の毛が湿っていることに気がついて尋ねる。

「あ、っああ。君の寝顔にあてられてしまってな。頭を冷やしていた。まだ冷やし足りなかったようだ……」

そうか。頭を冷やしにお風呂に。お風呂……。
そういえばあのまま眠ってしまった僕の体は全部きれいになってる。下着も服も新しいやつ。体からはジルさんと同じ石鹸の匂いがする。
……もういいや、なんにも聞かないでおこう。これ以上は脳の容量が足りない。

「さあアキオ、まだ朝は早い。もう少し眠っていなさい」

彼は布団を整えながら言う。

「ん、でも、ジルさんもうお仕事行っちゃいますよね?  お見送りしたいからドアのところまで」

「無理はするな」

さっきまであんなに顔を見たくなかったのに、もう行ってしまうとなると途端に切なくなってジルさんを見上げた。

「無理じゃないです…………あ」

ここでとあることに気がついた。

「どうした!?  やはりどこか痛むのか」

「いえ、その……あれ?」

「熱があるのだろうか。湯冷めしないようすぐに布団を被せたのだが、やはりもう少し湯船で温めた方が良かったか…」

いや、そうではなくて。
って、やっぱりお風呂入れてくれたのか。聞きたくなかった…でもありがとう。じゃなくて、

「あの、腰が。力が抜けて、起きあがれない……」

確かに慣れない動きや格好をしたけど、まさか起き上がれないほどだとは。

「腰か。このあたりか」

ジルさんは布団の中に手を入れ横になった僕の腰をさすり、優しく指圧した。ピンポイントでいいところを捉える指はまさにゴッドハンド。器用にマッサージをしながらジルさんが聞いてきた。

「その腕輪。オグルィ先生にもらったのか」

「はい、どうしてわかったんですか?」

「オグルィ先生の魔力を感じる」

「すごい……人によって魔力ってわかるものなのですか」

「本当になんとなくの気配だがな。オグルィ先生のは少しだけ人と違っていて、不思議な雰囲気がある。きっと彼が長年積み上げてきた年の功だろうな」

「へぇ……」

そんなにすごい人に癒しの魔法をもらっちゃった。大切にしなきゃ。


「ん、ジルさん、ありがとうございます。もうお仕事行かないと」

しばらく僕をマッサージしてくれていたジルさんが時計を見る。

「そうだな。ではアキオ、今日はゆっくり過ごしなさい。無理に起きあがろうとするな。食事等はユリッタにことづけておこう」

「ありがとうございます」

「ここに水を置いておく。何かあったらすぐに戻る」

いや、僕の体ごときでそんなすぐに戻られては困る。ジルさん最高司令官なのだから。
っていうか……ユリになんて言われるのかなあ。

「では、行って」
「ジルさん!」

出て行こうとしたジルさんを引き留め、以前ユリにもらったアドバイスを実行することにした。

「どうした」

「ちょっと、こっち」

服の袖を掴んで強請る。

「ん?」

「もっと」

射程範囲内にきたジルさんの両頬に手を当て、自分の方へ引き寄せる。驚いた様子の彼のおでこに、短く口付けた。

「いって、らっしゃい」

「っ!」

途端に恥ずかしくなってまた布団で顔を隠した。僕もジルさんにおはようのあいさつやっとできた。こんなに照れるなんて思ってなかった。羞恥に悶えていると、くいっと布団が引っ張られ、暖かい感触がおでこにあたった。

「行ってきます」

キスを返されたと気づいたのは、ジルさんが出ていってしばらく経ってからだった。



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