158 / 171
王都〜第二章〜
紅く染まる君①
しおりを挟む
◆
サザドラゴンさんとトゥガイドラゴンさんのお腹は意外とゴツゴツしていた。でも背中や顔周りの鱗よりちょこっとだけふやふやで、思わず顔を埋めそうになったけどギリギリで理性が働いた。
何よりすごかったのは、2人が並んだ時の圧巻の光景。サザさんは漆黒でダンディなドラゴン。トゥガイさんは藍色のクールなドラゴン。4、5メートルはあろうかという大迫力に、もう開いた口が塞がらなかった。改めて自分が素敵な世界にいることを実感させられた。
結局は僕の私欲に溢れていて申し訳なかったけれど、何はともあれ色々と落ち着き、ニルファルさんとトゥガイさんはストネイト国に帰って行った。ちなみにニルファルさんがトゥガイさんの背中に乗って飛んで帰って行った。僕もいつかドラゴンの背中に乗ってみたいな。結構酔うらしいけど、三半規管強いから大丈夫だと思う。
2人は必ずまた来ると言っていたので、再び会える日を楽しみにしたい。
それから、これでやっとジルさんに桜の絵を描くという約束が果たせそうで安心した。時間はかかっちゃうかもしれないけど必ず良いものを完成させたい。
王様とサザさんは仕事があるとかで早々に席を立った。ジルさんもアッザさんと一緒に「先に戻る」と言って部屋に戻った。
きっと僕とユリが2人になれるように気を利かせてくれたんだろう。
宮廷の庭を眺められるようにユリが椅子を出してくれて、2人でそよそよと爽やかな風に吹かれる。
「アキオ様、体調はいかがですか」
「とっても元気だよ。心配してくれてありがとう。さっきも、ごめんじゃなくてありがとうと言うべきだったね」
ユリに気を使わせてしまったことを反省した。でも心配してくれるのは嬉しいことだなと呑気にも思う。
「わたくしは……アキオ様のことを守ると言っておきながら何も」
「守ってくれたじゃない」
「っ、お守りしたのは、司令官で」
「でもあの時ユリがいてくれなきゃダメだった。ユリがいないと恐怖に負けていたかもしれない。本当にありがとう」
「アキオ様……」
沈黙が流れる。
お互いに何を話そうか探り合ってるみたいだ。いつもユリがたくさんお話をしてくれるからこういう時どうすれば良いのかわからない。
何か話題を…
話題、話題………
って!
1番大切なこと言ってない。
「ユリ…! 話しは変わっちゃうんだけど、言っておかなければならないことがあって」
「っいかがなさいましたか!?」
「その……」
何でしょう、と緊張の面持ちで聞くから、こっちにも緊張がうつってしまう。
緊張に抗うように意を決して声を発すると、案外するすると言葉が出てきた。
「あのね、僕ね。ジルさんにキスされたんだ」
………………
「…………あ~~~なるほどなるほどなるほど。はい。はい。はい。アキオ様! わたくしはもうその手には騙されませんよ。どうせ司令官はおでこだか頭だか、100歩譲って頬にでもできれば大した根性…」
「唇に」
「…………え」
「ジルさんも僕と同じ気持ちだったんだって。知らなかった。嬉しかった。でも緊張して、キスした後はジルさんの顔を見れなくなっちゃう。こういう時ユリはどうしてるの?」
「ア………アアアアアアアアキオ様っ。おち、落ち落ち着きましょう。ひとまず落ち着きましょう」
「僕は落ち着いてるよ」
「つ、つまり!つまりですよ!アキオ様の思いは、通じたのですか? それでそれでそれで、司令官と口付けを交わした、今のお話はつまりそういうことなのですか?」
「うん」
ユリは固まった。風が吹いて葉がそよいでも、時計の針が動いてちょうど11時を指しても、ユリは固まったままだった。目と口を大きく開いて、そんな顔も可愛い。
何と声をかけようか迷っていると、ユリの大きな目から今までで1番大きな涙の粒がぶわっと流れ出した。
「っユリ?」
「ア゛ギオ゛様ーー!!!わたくし、この日をずっと待ち侘びておりました!!来る日も来る日も、アキオ様の純粋で清らかなお心を司令官に捧げ続け、その努力が実っ……ああもう!どうしましょう!感激!わたくしは感激で言葉が出ません!!」
言葉が出ない割に口達者なユリは、僕の両手を掴んで感動している様子。相変わらず大袈裟だ。でも嬉しい。
「ありがとう。ユリの応援と協力のおかげだよ」
「わたくしは何も………っっって!!!!
ここでこんなことしている場合ではありません! ああ、わたくしとしたことが! 司令官が今日休暇を取られたということは……そういうことではありませんか!
アキオ様、今すぐ司令官の元へお戻りくださいませ!」
「え、でも」
「でもじゃありません!このお話はまたゆぅ~~っくりいたしましょう!色々とお聞かせ願いますからね。 とにかく今は司令官の元へお戻りになるのです!」
「わかった……」
「さあ!一瞬で移動しますよ。掴まって!」
「はい」
ユリは自分の腕に掴まらせ、光りだした。
ぎゅっと目を瞑る。3、4秒に開くと、見慣れた扉の前にいた。
ユリが声を顰めて言う。
「良いですか? 今は何よりも司令官とのひとときを大切に。して欲しいことがあれば素直にわがままを言う。司令官が1番望んでいること、それはアキオ様が自分を求めて甘えてくれることです。わかりましたか?」
「うん。わかった」
こうしてると、作戦会議みたいで楽しい。
「では……頑張って!」
「がんばる……? うん、頑張る!」
一瞬激励の意味がわからなかったけど、先ほどユリに相談したことを思い出す。緊張してジルさんの顔を見れなくならないように頑張ろう。
「では!」
「あ、うん! ありがとう」
瞬く間に消えていったユリ。
……1人になった瞬間、早速緊張してきた。
ふう。
よし!
僕は意を決して扉を開いた。
サザドラゴンさんとトゥガイドラゴンさんのお腹は意外とゴツゴツしていた。でも背中や顔周りの鱗よりちょこっとだけふやふやで、思わず顔を埋めそうになったけどギリギリで理性が働いた。
何よりすごかったのは、2人が並んだ時の圧巻の光景。サザさんは漆黒でダンディなドラゴン。トゥガイさんは藍色のクールなドラゴン。4、5メートルはあろうかという大迫力に、もう開いた口が塞がらなかった。改めて自分が素敵な世界にいることを実感させられた。
結局は僕の私欲に溢れていて申し訳なかったけれど、何はともあれ色々と落ち着き、ニルファルさんとトゥガイさんはストネイト国に帰って行った。ちなみにニルファルさんがトゥガイさんの背中に乗って飛んで帰って行った。僕もいつかドラゴンの背中に乗ってみたいな。結構酔うらしいけど、三半規管強いから大丈夫だと思う。
2人は必ずまた来ると言っていたので、再び会える日を楽しみにしたい。
それから、これでやっとジルさんに桜の絵を描くという約束が果たせそうで安心した。時間はかかっちゃうかもしれないけど必ず良いものを完成させたい。
王様とサザさんは仕事があるとかで早々に席を立った。ジルさんもアッザさんと一緒に「先に戻る」と言って部屋に戻った。
きっと僕とユリが2人になれるように気を利かせてくれたんだろう。
宮廷の庭を眺められるようにユリが椅子を出してくれて、2人でそよそよと爽やかな風に吹かれる。
「アキオ様、体調はいかがですか」
「とっても元気だよ。心配してくれてありがとう。さっきも、ごめんじゃなくてありがとうと言うべきだったね」
ユリに気を使わせてしまったことを反省した。でも心配してくれるのは嬉しいことだなと呑気にも思う。
「わたくしは……アキオ様のことを守ると言っておきながら何も」
「守ってくれたじゃない」
「っ、お守りしたのは、司令官で」
「でもあの時ユリがいてくれなきゃダメだった。ユリがいないと恐怖に負けていたかもしれない。本当にありがとう」
「アキオ様……」
沈黙が流れる。
お互いに何を話そうか探り合ってるみたいだ。いつもユリがたくさんお話をしてくれるからこういう時どうすれば良いのかわからない。
何か話題を…
話題、話題………
って!
1番大切なこと言ってない。
「ユリ…! 話しは変わっちゃうんだけど、言っておかなければならないことがあって」
「っいかがなさいましたか!?」
「その……」
何でしょう、と緊張の面持ちで聞くから、こっちにも緊張がうつってしまう。
緊張に抗うように意を決して声を発すると、案外するすると言葉が出てきた。
「あのね、僕ね。ジルさんにキスされたんだ」
………………
「…………あ~~~なるほどなるほどなるほど。はい。はい。はい。アキオ様! わたくしはもうその手には騙されませんよ。どうせ司令官はおでこだか頭だか、100歩譲って頬にでもできれば大した根性…」
「唇に」
「…………え」
「ジルさんも僕と同じ気持ちだったんだって。知らなかった。嬉しかった。でも緊張して、キスした後はジルさんの顔を見れなくなっちゃう。こういう時ユリはどうしてるの?」
「ア………アアアアアアアアキオ様っ。おち、落ち落ち着きましょう。ひとまず落ち着きましょう」
「僕は落ち着いてるよ」
「つ、つまり!つまりですよ!アキオ様の思いは、通じたのですか? それでそれでそれで、司令官と口付けを交わした、今のお話はつまりそういうことなのですか?」
「うん」
ユリは固まった。風が吹いて葉がそよいでも、時計の針が動いてちょうど11時を指しても、ユリは固まったままだった。目と口を大きく開いて、そんな顔も可愛い。
何と声をかけようか迷っていると、ユリの大きな目から今までで1番大きな涙の粒がぶわっと流れ出した。
「っユリ?」
「ア゛ギオ゛様ーー!!!わたくし、この日をずっと待ち侘びておりました!!来る日も来る日も、アキオ様の純粋で清らかなお心を司令官に捧げ続け、その努力が実っ……ああもう!どうしましょう!感激!わたくしは感激で言葉が出ません!!」
言葉が出ない割に口達者なユリは、僕の両手を掴んで感動している様子。相変わらず大袈裟だ。でも嬉しい。
「ありがとう。ユリの応援と協力のおかげだよ」
「わたくしは何も………っっって!!!!
ここでこんなことしている場合ではありません! ああ、わたくしとしたことが! 司令官が今日休暇を取られたということは……そういうことではありませんか!
アキオ様、今すぐ司令官の元へお戻りくださいませ!」
「え、でも」
「でもじゃありません!このお話はまたゆぅ~~っくりいたしましょう!色々とお聞かせ願いますからね。 とにかく今は司令官の元へお戻りになるのです!」
「わかった……」
「さあ!一瞬で移動しますよ。掴まって!」
「はい」
ユリは自分の腕に掴まらせ、光りだした。
ぎゅっと目を瞑る。3、4秒に開くと、見慣れた扉の前にいた。
ユリが声を顰めて言う。
「良いですか? 今は何よりも司令官とのひとときを大切に。して欲しいことがあれば素直にわがままを言う。司令官が1番望んでいること、それはアキオ様が自分を求めて甘えてくれることです。わかりましたか?」
「うん。わかった」
こうしてると、作戦会議みたいで楽しい。
「では……頑張って!」
「がんばる……? うん、頑張る!」
一瞬激励の意味がわからなかったけど、先ほどユリに相談したことを思い出す。緊張してジルさんの顔を見れなくならないように頑張ろう。
「では!」
「あ、うん! ありがとう」
瞬く間に消えていったユリ。
……1人になった瞬間、早速緊張してきた。
ふう。
よし!
僕は意を決して扉を開いた。
10
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる