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王都〜第二章〜
紅く染まる君①
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◆
サザドラゴンさんとトゥガイドラゴンさんのお腹は意外とゴツゴツしていた。でも背中や顔周りの鱗よりちょこっとだけふやふやで、思わず顔を埋めそうになったけどギリギリで理性が働いた。
何よりすごかったのは、2人が並んだ時の圧巻の光景。サザさんは漆黒でダンディなドラゴン。トゥガイさんは藍色のクールなドラゴン。4、5メートルはあろうかという大迫力に、もう開いた口が塞がらなかった。改めて自分が素敵な世界にいることを実感させられた。
結局は僕の私欲に溢れていて申し訳なかったけれど、何はともあれ色々と落ち着き、ニルファルさんとトゥガイさんはストネイト国に帰って行った。ちなみにニルファルさんがトゥガイさんの背中に乗って飛んで帰って行った。僕もいつかドラゴンの背中に乗ってみたいな。結構酔うらしいけど、三半規管強いから大丈夫だと思う。
2人は必ずまた来ると言っていたので、再び会える日を楽しみにしたい。
それから、これでやっとジルさんに桜の絵を描くという約束が果たせそうで安心した。時間はかかっちゃうかもしれないけど必ず良いものを完成させたい。
王様とサザさんは仕事があるとかで早々に席を立った。ジルさんもアッザさんと一緒に「先に戻る」と言って部屋に戻った。
きっと僕とユリが2人になれるように気を利かせてくれたんだろう。
宮廷の庭を眺められるようにユリが椅子を出してくれて、2人でそよそよと爽やかな風に吹かれる。
「アキオ様、体調はいかがですか」
「とっても元気だよ。心配してくれてありがとう。さっきも、ごめんじゃなくてありがとうと言うべきだったね」
ユリに気を使わせてしまったことを反省した。でも心配してくれるのは嬉しいことだなと呑気にも思う。
「わたくしは……アキオ様のことを守ると言っておきながら何も」
「守ってくれたじゃない」
「っ、お守りしたのは、司令官で」
「でもあの時ユリがいてくれなきゃダメだった。ユリがいないと恐怖に負けていたかもしれない。本当にありがとう」
「アキオ様……」
沈黙が流れる。
お互いに何を話そうか探り合ってるみたいだ。いつもユリがたくさんお話をしてくれるからこういう時どうすれば良いのかわからない。
何か話題を…
話題、話題………
って!
1番大切なこと言ってない。
「ユリ…! 話しは変わっちゃうんだけど、言っておかなければならないことがあって」
「っいかがなさいましたか!?」
「その……」
何でしょう、と緊張の面持ちで聞くから、こっちにも緊張がうつってしまう。
緊張に抗うように意を決して声を発すると、案外するすると言葉が出てきた。
「あのね、僕ね。ジルさんにキスされたんだ」
………………
「…………あ~~~なるほどなるほどなるほど。はい。はい。はい。アキオ様! わたくしはもうその手には騙されませんよ。どうせ司令官はおでこだか頭だか、100歩譲って頬にでもできれば大した根性…」
「唇に」
「…………え」
「ジルさんも僕と同じ気持ちだったんだって。知らなかった。嬉しかった。でも緊張して、キスした後はジルさんの顔を見れなくなっちゃう。こういう時ユリはどうしてるの?」
「ア………アアアアアアアアキオ様っ。おち、落ち落ち着きましょう。ひとまず落ち着きましょう」
「僕は落ち着いてるよ」
「つ、つまり!つまりですよ!アキオ様の思いは、通じたのですか? それでそれでそれで、司令官と口付けを交わした、今のお話はつまりそういうことなのですか?」
「うん」
ユリは固まった。風が吹いて葉がそよいでも、時計の針が動いてちょうど11時を指しても、ユリは固まったままだった。目と口を大きく開いて、そんな顔も可愛い。
何と声をかけようか迷っていると、ユリの大きな目から今までで1番大きな涙の粒がぶわっと流れ出した。
「っユリ?」
「ア゛ギオ゛様ーー!!!わたくし、この日をずっと待ち侘びておりました!!来る日も来る日も、アキオ様の純粋で清らかなお心を司令官に捧げ続け、その努力が実っ……ああもう!どうしましょう!感激!わたくしは感激で言葉が出ません!!」
言葉が出ない割に口達者なユリは、僕の両手を掴んで感動している様子。相変わらず大袈裟だ。でも嬉しい。
「ありがとう。ユリの応援と協力のおかげだよ」
「わたくしは何も………っっって!!!!
ここでこんなことしている場合ではありません! ああ、わたくしとしたことが! 司令官が今日休暇を取られたということは……そういうことではありませんか!
アキオ様、今すぐ司令官の元へお戻りくださいませ!」
「え、でも」
「でもじゃありません!このお話はまたゆぅ~~っくりいたしましょう!色々とお聞かせ願いますからね。 とにかく今は司令官の元へお戻りになるのです!」
「わかった……」
「さあ!一瞬で移動しますよ。掴まって!」
「はい」
ユリは自分の腕に掴まらせ、光りだした。
ぎゅっと目を瞑る。3、4秒に開くと、見慣れた扉の前にいた。
ユリが声を顰めて言う。
「良いですか? 今は何よりも司令官とのひとときを大切に。して欲しいことがあれば素直にわがままを言う。司令官が1番望んでいること、それはアキオ様が自分を求めて甘えてくれることです。わかりましたか?」
「うん。わかった」
こうしてると、作戦会議みたいで楽しい。
「では……頑張って!」
「がんばる……? うん、頑張る!」
一瞬激励の意味がわからなかったけど、先ほどユリに相談したことを思い出す。緊張してジルさんの顔を見れなくならないように頑張ろう。
「では!」
「あ、うん! ありがとう」
瞬く間に消えていったユリ。
……1人になった瞬間、早速緊張してきた。
ふう。
よし!
僕は意を決して扉を開いた。
サザドラゴンさんとトゥガイドラゴンさんのお腹は意外とゴツゴツしていた。でも背中や顔周りの鱗よりちょこっとだけふやふやで、思わず顔を埋めそうになったけどギリギリで理性が働いた。
何よりすごかったのは、2人が並んだ時の圧巻の光景。サザさんは漆黒でダンディなドラゴン。トゥガイさんは藍色のクールなドラゴン。4、5メートルはあろうかという大迫力に、もう開いた口が塞がらなかった。改めて自分が素敵な世界にいることを実感させられた。
結局は僕の私欲に溢れていて申し訳なかったけれど、何はともあれ色々と落ち着き、ニルファルさんとトゥガイさんはストネイト国に帰って行った。ちなみにニルファルさんがトゥガイさんの背中に乗って飛んで帰って行った。僕もいつかドラゴンの背中に乗ってみたいな。結構酔うらしいけど、三半規管強いから大丈夫だと思う。
2人は必ずまた来ると言っていたので、再び会える日を楽しみにしたい。
それから、これでやっとジルさんに桜の絵を描くという約束が果たせそうで安心した。時間はかかっちゃうかもしれないけど必ず良いものを完成させたい。
王様とサザさんは仕事があるとかで早々に席を立った。ジルさんもアッザさんと一緒に「先に戻る」と言って部屋に戻った。
きっと僕とユリが2人になれるように気を利かせてくれたんだろう。
宮廷の庭を眺められるようにユリが椅子を出してくれて、2人でそよそよと爽やかな風に吹かれる。
「アキオ様、体調はいかがですか」
「とっても元気だよ。心配してくれてありがとう。さっきも、ごめんじゃなくてありがとうと言うべきだったね」
ユリに気を使わせてしまったことを反省した。でも心配してくれるのは嬉しいことだなと呑気にも思う。
「わたくしは……アキオ様のことを守ると言っておきながら何も」
「守ってくれたじゃない」
「っ、お守りしたのは、司令官で」
「でもあの時ユリがいてくれなきゃダメだった。ユリがいないと恐怖に負けていたかもしれない。本当にありがとう」
「アキオ様……」
沈黙が流れる。
お互いに何を話そうか探り合ってるみたいだ。いつもユリがたくさんお話をしてくれるからこういう時どうすれば良いのかわからない。
何か話題を…
話題、話題………
って!
1番大切なこと言ってない。
「ユリ…! 話しは変わっちゃうんだけど、言っておかなければならないことがあって」
「っいかがなさいましたか!?」
「その……」
何でしょう、と緊張の面持ちで聞くから、こっちにも緊張がうつってしまう。
緊張に抗うように意を決して声を発すると、案外するすると言葉が出てきた。
「あのね、僕ね。ジルさんにキスされたんだ」
………………
「…………あ~~~なるほどなるほどなるほど。はい。はい。はい。アキオ様! わたくしはもうその手には騙されませんよ。どうせ司令官はおでこだか頭だか、100歩譲って頬にでもできれば大した根性…」
「唇に」
「…………え」
「ジルさんも僕と同じ気持ちだったんだって。知らなかった。嬉しかった。でも緊張して、キスした後はジルさんの顔を見れなくなっちゃう。こういう時ユリはどうしてるの?」
「ア………アアアアアアアアキオ様っ。おち、落ち落ち着きましょう。ひとまず落ち着きましょう」
「僕は落ち着いてるよ」
「つ、つまり!つまりですよ!アキオ様の思いは、通じたのですか? それでそれでそれで、司令官と口付けを交わした、今のお話はつまりそういうことなのですか?」
「うん」
ユリは固まった。風が吹いて葉がそよいでも、時計の針が動いてちょうど11時を指しても、ユリは固まったままだった。目と口を大きく開いて、そんな顔も可愛い。
何と声をかけようか迷っていると、ユリの大きな目から今までで1番大きな涙の粒がぶわっと流れ出した。
「っユリ?」
「ア゛ギオ゛様ーー!!!わたくし、この日をずっと待ち侘びておりました!!来る日も来る日も、アキオ様の純粋で清らかなお心を司令官に捧げ続け、その努力が実っ……ああもう!どうしましょう!感激!わたくしは感激で言葉が出ません!!」
言葉が出ない割に口達者なユリは、僕の両手を掴んで感動している様子。相変わらず大袈裟だ。でも嬉しい。
「ありがとう。ユリの応援と協力のおかげだよ」
「わたくしは何も………っっって!!!!
ここでこんなことしている場合ではありません! ああ、わたくしとしたことが! 司令官が今日休暇を取られたということは……そういうことではありませんか!
アキオ様、今すぐ司令官の元へお戻りくださいませ!」
「え、でも」
「でもじゃありません!このお話はまたゆぅ~~っくりいたしましょう!色々とお聞かせ願いますからね。 とにかく今は司令官の元へお戻りになるのです!」
「わかった……」
「さあ!一瞬で移動しますよ。掴まって!」
「はい」
ユリは自分の腕に掴まらせ、光りだした。
ぎゅっと目を瞑る。3、4秒に開くと、見慣れた扉の前にいた。
ユリが声を顰めて言う。
「良いですか? 今は何よりも司令官とのひとときを大切に。して欲しいことがあれば素直にわがままを言う。司令官が1番望んでいること、それはアキオ様が自分を求めて甘えてくれることです。わかりましたか?」
「うん。わかった」
こうしてると、作戦会議みたいで楽しい。
「では……頑張って!」
「がんばる……? うん、頑張る!」
一瞬激励の意味がわからなかったけど、先ほどユリに相談したことを思い出す。緊張してジルさんの顔を見れなくならないように頑張ろう。
「では!」
「あ、うん! ありがとう」
瞬く間に消えていったユリ。
……1人になった瞬間、早速緊張してきた。
ふう。
よし!
僕は意を決して扉を開いた。
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