155 / 171
王都〜第二章〜
家族③
しおりを挟む
「いいえ。止めてくれてありがとうございます。言葉にしていたらきっと後悔するところでした」
「父の言うとおり、君は何も心配する事はない」
「その通りだアキオ殿。
そうだな、色々と落ち着いてブランディスが戻ればゆっくりと食事でもしよう」
ジルさんが家族団欒してることろ見れるのか。彼はお家でどんなだろう。どんな幼少期を過ごしたのか、家族そろったらどんな会話をするのか、全部とても興味がある。
ワクワクする気持ちを抑えきれず、つい声が弾む。
「ぜひ。よろしくお願いします」
「準備はジルとブランディスに任せておけば良い。2人とも見かけによらず美味い飯を作る。その間私たちは世間話に花でも咲かせようではないか。君の世界のことも色々聞きたい」
「なんでも聞いてください、僕に答えられることなら。僕も色々聞きたいことがあります」
「よし、決まりだな。何か食べたいものがあればいつでも教えてくれ」
「はい」
ジルさんとブランディスさん、強制的にお料理係になっちゃったけど……きっと美味しい料理が食べられるんだろうな。楽しみ。
でも……そっか。いよいよブランディスさんにも会えるんだ。緊張するけどしっかり挨拶をしなきゃ。最初の印象が肝心だぞ。
いつの日か開かれるお食事会に妄想を膨らませていると、ジルさんが思い出したようにアッザさんに言った。
「ところで、ブランディス父上には王都へ戻ったことをきちんと説明をしてあるのでしょうね」
………………
………………
「…………………問題ない。今した」
「全く……」
アッザさんの返答に呆れた顔をするジルさん。
もしかしたらアッザさんは、ブランディスさんを尻に敷くタイプなのかもしれない。そしてブランディスさんは、アッザさんに振り回される毎日を送っているのかもしれない。
「『ブランディスはとても驚いている』と、精霊が言っている」
「当たり前でしょう。目の前で貴方がいきなり消えて、夜が明けるまで音沙汰無しなのですから。あまり自由奔放にしすぎると、いずれブランディス父上から雷が落ちますよ」
「なぜ私がアイツに叱られなければならん。謎だ。
さて!遅くなったが改めて自己紹介をしようアキオ殿。私はジルルドオクタイ・エーリアル・アッザだ。以後よろしくな」
呆れるジルさんなんてなんのその、アッザさんは元気よく自己紹介を始めて握手の右手を差し出した。
そういえばちゃんと名乗っていなかったと思い、僕もアッザさんに続いた。
「スワ・アキオと申します。よろしくお願いします」
「珍しい響きだな。向こうでは主流か?」
「主流かどうかは分かりませんが、珍しくは無いです。アッザさんは、ミドルネームがあるのですか?」
「ミドルネーム?」
「ニルファルさんがアッザさんのことを『エーリアル殿』って呼んでいたのが気になって」
「これは精霊の名だ。私は空気の精で、ニルファル国王は水の精。このようにウーシットは皆精霊の名を持っている」
「お2人以外のウーシットさんも?」
「ああ。人間は私とアンディーネだけだがな。例えば、美しいブロンドの毛並みを持つ馬の火の精は、遠くモンテという国で遊牧民と生活を共にしている。さらにデジェルトという国には地中に住むモールという小動物が居てな、彼は地の精と呼ばれている」
「へえ……」
「他にもたくさん居るぞ。光の精に風の精、氷に岩に……言い出したらキリが無い。機会があれば合わせてやろう。皆良い奴だ」
「お会い出来るのですか? 楽しみです……!」
浮ついているのを見透かされたのか、アッザさんは僕をじっと見つめる。
だって精霊に会えるって……これが興奮を抑えていられるかってんだ。きっと他の動物も美しいんだろうな。キラキラしてるんだろうな。
「ふむ……君もジルに引けを取らぬくらいにポーカーフェイスだと思っていたが、これほどまで愛らしい顔も見せてくれるのだな。どうだ、ジルに飽きたら私のところに来ないか」
「アッザ父上、ふざけた冗談はおやめください。アキオが困っている」
「困っているかどうかなんてお前に分からんだろう。なあアキオ殿」
「はい。困っていませんよ」
「っ、アキオ?」
「おや……」
ジルさんは驚いたふうな声を上げ、アッザさんも予想外といった表情をしている。
「あ、でも、僕がジルさんに飽きることは無いだろうから……飽きなくても遊びに行っていいですか?」
「「……………」」
2人が凛々しい顔のまま目をぱちくりさせている。そんな表情も絵になるなんて。
それにしても2人はなぜ何も返事してくれないのだろう。
………! もしかして、精霊の方とは気軽に遊んではいけないのだろうか。考えてみればそりゃそうか。彼らはとても貴重な存在で、聞くところによると常に危険に晒されていた時代もあったそうだ。「暇なら野球しよーぜ」みたいに気軽に遊びに誘っていい方々ではないのでは?
謝らなければと口を開きかけたところで、アッザさんとジルさんが親子仲良くひそひそ話し始めた。
「アキオ殿は、なんだろうな。こう……庇護欲が掻き立てられると言うか。心配だ」
「ええ。心配は尽きませんが、私が守ります」
「ほお。お前からそんな言葉が聞けるとは。ブランディスが聞いたら泣いて喜ぶぞ」
親子仲が良いのはとても良いことだけれど、僕には話が読めない。
「えっと……」
「ああすまんなこちらの話だ。いつでも気軽に遊びに来てくれアキオ殿。と言っても私とブランディスが王都に戻ることは稀だがな。こちらに居る時は必ず知らせる。末永く仲良くしようじゃないか」
「はい!」
精霊どうこう抜きにしてアッザさんはとても優しくて話しやすくて楽しい人だから、もっとたくさん話をしてもっと彼のことを知りたい。
今この瞬間、家族のあたたかさが満ち溢れた空間はとても心地が良かった。
「父の言うとおり、君は何も心配する事はない」
「その通りだアキオ殿。
そうだな、色々と落ち着いてブランディスが戻ればゆっくりと食事でもしよう」
ジルさんが家族団欒してることろ見れるのか。彼はお家でどんなだろう。どんな幼少期を過ごしたのか、家族そろったらどんな会話をするのか、全部とても興味がある。
ワクワクする気持ちを抑えきれず、つい声が弾む。
「ぜひ。よろしくお願いします」
「準備はジルとブランディスに任せておけば良い。2人とも見かけによらず美味い飯を作る。その間私たちは世間話に花でも咲かせようではないか。君の世界のことも色々聞きたい」
「なんでも聞いてください、僕に答えられることなら。僕も色々聞きたいことがあります」
「よし、決まりだな。何か食べたいものがあればいつでも教えてくれ」
「はい」
ジルさんとブランディスさん、強制的にお料理係になっちゃったけど……きっと美味しい料理が食べられるんだろうな。楽しみ。
でも……そっか。いよいよブランディスさんにも会えるんだ。緊張するけどしっかり挨拶をしなきゃ。最初の印象が肝心だぞ。
いつの日か開かれるお食事会に妄想を膨らませていると、ジルさんが思い出したようにアッザさんに言った。
「ところで、ブランディス父上には王都へ戻ったことをきちんと説明をしてあるのでしょうね」
………………
………………
「…………………問題ない。今した」
「全く……」
アッザさんの返答に呆れた顔をするジルさん。
もしかしたらアッザさんは、ブランディスさんを尻に敷くタイプなのかもしれない。そしてブランディスさんは、アッザさんに振り回される毎日を送っているのかもしれない。
「『ブランディスはとても驚いている』と、精霊が言っている」
「当たり前でしょう。目の前で貴方がいきなり消えて、夜が明けるまで音沙汰無しなのですから。あまり自由奔放にしすぎると、いずれブランディス父上から雷が落ちますよ」
「なぜ私がアイツに叱られなければならん。謎だ。
さて!遅くなったが改めて自己紹介をしようアキオ殿。私はジルルドオクタイ・エーリアル・アッザだ。以後よろしくな」
呆れるジルさんなんてなんのその、アッザさんは元気よく自己紹介を始めて握手の右手を差し出した。
そういえばちゃんと名乗っていなかったと思い、僕もアッザさんに続いた。
「スワ・アキオと申します。よろしくお願いします」
「珍しい響きだな。向こうでは主流か?」
「主流かどうかは分かりませんが、珍しくは無いです。アッザさんは、ミドルネームがあるのですか?」
「ミドルネーム?」
「ニルファルさんがアッザさんのことを『エーリアル殿』って呼んでいたのが気になって」
「これは精霊の名だ。私は空気の精で、ニルファル国王は水の精。このようにウーシットは皆精霊の名を持っている」
「お2人以外のウーシットさんも?」
「ああ。人間は私とアンディーネだけだがな。例えば、美しいブロンドの毛並みを持つ馬の火の精は、遠くモンテという国で遊牧民と生活を共にしている。さらにデジェルトという国には地中に住むモールという小動物が居てな、彼は地の精と呼ばれている」
「へえ……」
「他にもたくさん居るぞ。光の精に風の精、氷に岩に……言い出したらキリが無い。機会があれば合わせてやろう。皆良い奴だ」
「お会い出来るのですか? 楽しみです……!」
浮ついているのを見透かされたのか、アッザさんは僕をじっと見つめる。
だって精霊に会えるって……これが興奮を抑えていられるかってんだ。きっと他の動物も美しいんだろうな。キラキラしてるんだろうな。
「ふむ……君もジルに引けを取らぬくらいにポーカーフェイスだと思っていたが、これほどまで愛らしい顔も見せてくれるのだな。どうだ、ジルに飽きたら私のところに来ないか」
「アッザ父上、ふざけた冗談はおやめください。アキオが困っている」
「困っているかどうかなんてお前に分からんだろう。なあアキオ殿」
「はい。困っていませんよ」
「っ、アキオ?」
「おや……」
ジルさんは驚いたふうな声を上げ、アッザさんも予想外といった表情をしている。
「あ、でも、僕がジルさんに飽きることは無いだろうから……飽きなくても遊びに行っていいですか?」
「「……………」」
2人が凛々しい顔のまま目をぱちくりさせている。そんな表情も絵になるなんて。
それにしても2人はなぜ何も返事してくれないのだろう。
………! もしかして、精霊の方とは気軽に遊んではいけないのだろうか。考えてみればそりゃそうか。彼らはとても貴重な存在で、聞くところによると常に危険に晒されていた時代もあったそうだ。「暇なら野球しよーぜ」みたいに気軽に遊びに誘っていい方々ではないのでは?
謝らなければと口を開きかけたところで、アッザさんとジルさんが親子仲良くひそひそ話し始めた。
「アキオ殿は、なんだろうな。こう……庇護欲が掻き立てられると言うか。心配だ」
「ええ。心配は尽きませんが、私が守ります」
「ほお。お前からそんな言葉が聞けるとは。ブランディスが聞いたら泣いて喜ぶぞ」
親子仲が良いのはとても良いことだけれど、僕には話が読めない。
「えっと……」
「ああすまんなこちらの話だ。いつでも気軽に遊びに来てくれアキオ殿。と言っても私とブランディスが王都に戻ることは稀だがな。こちらに居る時は必ず知らせる。末永く仲良くしようじゃないか」
「はい!」
精霊どうこう抜きにしてアッザさんはとても優しくて話しやすくて楽しい人だから、もっとたくさん話をしてもっと彼のことを知りたい。
今この瞬間、家族のあたたかさが満ち溢れた空間はとても心地が良かった。
10
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる