ある時計台の運命

丑三とき

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王都〜第二章〜

邪悪な雨

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夜。無事に今日やるべきことを全て終えて部屋に戻る。ジルさんは遅くなると言っていたから、1人でお風呂に入った。



コーデロイ先生には笑われちゃった。
約束の時間に4、5分遅れてしまったので謝り倒したら「仕事でもないのにほんのちょっと遅れて謝る人そういないよ」と言って許してくれた。でもお城の皆は厳しい時間管理の中動いているわけだから、僕の行動で業務を妨げてしまうのは良くない。

そうだ。今度からメモ帳でも持っておこう。
声が出るようになってから紙とペンを持ち歩かなくなったけど、メモを取らないと色々忘れちゃうもんなあ。読もうとしてた古文書もどこに置いたか忘れちゃったし。


まあ、注意力が散漫になるのはこの雨のせいもある。
ほんとに憂鬱だ。

それに今日は、いつにも増して酷い雨。
窓が割れそうなほど強い雨が銃弾のように降り注いでいる。城ごと流されてしまう勢いだ。


明かりを消すのがなんとなく怖くて、そのままベッドに入る。

しっかり戸締りもしたし、電気つけたまま寝ちゃおうかな。
鼻歌とか歌ってみる?
歌ってあんまり知らないや。
てるてる坊主作って気を紛らわせようか。
でもベッドから出るのがちょっと怖い。


どう寝るのが一番怖くないか考え込んでいるうちに、風も強くなって来た。
ガタガタガタと震える窓の音が耳を突き刺し、考えるのを邪魔する。


どうしてこんなに……
今日は異常だ。

ここ最近ずっと雨が降っていたけど、この雨は、なんか違う。




そう思った途端、窓の震えが乗り移ったかのように激しく心臓が波打った。
嫌な予感がする。
神経や筋肉、体中の細胞全ての隙間に寒気が走る。

窓ガラスが狂ったように悲鳴を上げる。震えはだんだんと激しさを増し、遂に耐えきれなくなった窓のふちから、水滴が滴った。





———ツーーー………



「っ……!」

声が出ない。

室内に流れて込む雫は不自然に壁をつたい、床に小さな水溜りを作る。




違う、これ……


雨じゃない
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