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王都
心を書き起こす③
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「うまく言葉にできないときは、どうすればいいですか」
「うまくやろうと思わなくて良いんだよ。『怖い』『苦しい』何でもいい。まずは思ったことをそのまま言葉にして伝えてみて。
恐怖と向き合うのは簡単なことじゃない。もしかしたら以前のように過呼吸を起こしたり、どうしようもなく怖くて仕方なくなってしまうかもしれない。
そういう時のためにも、何でも話すことができる人物の存在は大変重要なんだよ」
ジルさんに迷惑をかけないために治したいのに、治すためにはジルさんに迷惑をかけなければいけない。
こんなやりきれない矛盾ってあるだろうか。
そうは思ったけど、考えてることがバレたらきっと「迷惑をかけるなどと思っているのならお門違いだ」とか言われるだろうな。
きし、と椅子が軋む音とともに、僕の右半身にぬくもりが生まれる。
体温、匂い、呼吸の音、隣から伝わる全てが心地いい。
こんな時にあれだけど、彼からは何か得体の知れないフェロモンでも出ていると思う。
この居心地の良さ、ハマったら抜け出せない。自分の中の絡まった何かが、その存在を感じるだけで綺麗にほどけてゆく。
何でもできる。
そばにいるとそんな気持ちにさせてくれる。
「わかりました。みなさんの力を借りて僕、必ず治します。
あ…でもほどほどに、ですよね。のんびり気長に。
ジルさん、先生、よろしくお願いします」
ひとつお辞儀をすると先生は目を細め、ジルさんはいつものように頭を撫でてくれた。
あとは数日に1度はここへ来て、先生に現状報告をする。
「ちょっと遊びにきた」くらいの感覚で気楽に来てね、と言われた。
医務室という場所そのものにも興味があるから定期的に来ていいというのは嬉しい。
迷惑にならないのなら、いろんな設備の見学とかしてみたい。
魔法で脳内を診れるのならMRIとかは無いのかな。
手術はどうするんだろう。
麻酔はあるのかな。
そもそもどこからどこまでを科学の力で、どこからどこまでを魔法の力でやるんだろう。
魔法の国の医療状況を想像していると、
「よしっ、じゃあ脚の方も診ておこうか」
と先生。
「先生は、精神科医じゃ……」
「軍医は専門関係なく全分野の医学知識を持っているからね。もちろん専門医の意見も必要だから、他の軍医と意見を交えながら診断するとしよう。それまではとりあえず、その杖を使っていてくれるかい?」
「はい。ありがとうございます。よろしくお願いします」
先生は、椅子に座ったままの僕の脚を、真剣な眼差しで曲げたり伸ばしたりしている。
そうしながら脚や、脚を動かした時の脳のスキャンを”撮っている”らしい。
当然「どうやって?」と思ったけど、多分難しいので訊かないことにした。
今は難しいことを処理すべきで無いと脳が訴えている。
後日また改めて結果を聞きに来るように言われ、僕たちは医務室を後にした。
「うまくやろうと思わなくて良いんだよ。『怖い』『苦しい』何でもいい。まずは思ったことをそのまま言葉にして伝えてみて。
恐怖と向き合うのは簡単なことじゃない。もしかしたら以前のように過呼吸を起こしたり、どうしようもなく怖くて仕方なくなってしまうかもしれない。
そういう時のためにも、何でも話すことができる人物の存在は大変重要なんだよ」
ジルさんに迷惑をかけないために治したいのに、治すためにはジルさんに迷惑をかけなければいけない。
こんなやりきれない矛盾ってあるだろうか。
そうは思ったけど、考えてることがバレたらきっと「迷惑をかけるなどと思っているのならお門違いだ」とか言われるだろうな。
きし、と椅子が軋む音とともに、僕の右半身にぬくもりが生まれる。
体温、匂い、呼吸の音、隣から伝わる全てが心地いい。
こんな時にあれだけど、彼からは何か得体の知れないフェロモンでも出ていると思う。
この居心地の良さ、ハマったら抜け出せない。自分の中の絡まった何かが、その存在を感じるだけで綺麗にほどけてゆく。
何でもできる。
そばにいるとそんな気持ちにさせてくれる。
「わかりました。みなさんの力を借りて僕、必ず治します。
あ…でもほどほどに、ですよね。のんびり気長に。
ジルさん、先生、よろしくお願いします」
ひとつお辞儀をすると先生は目を細め、ジルさんはいつものように頭を撫でてくれた。
あとは数日に1度はここへ来て、先生に現状報告をする。
「ちょっと遊びにきた」くらいの感覚で気楽に来てね、と言われた。
医務室という場所そのものにも興味があるから定期的に来ていいというのは嬉しい。
迷惑にならないのなら、いろんな設備の見学とかしてみたい。
魔法で脳内を診れるのならMRIとかは無いのかな。
手術はどうするんだろう。
麻酔はあるのかな。
そもそもどこからどこまでを科学の力で、どこからどこまでを魔法の力でやるんだろう。
魔法の国の医療状況を想像していると、
「よしっ、じゃあ脚の方も診ておこうか」
と先生。
「先生は、精神科医じゃ……」
「軍医は専門関係なく全分野の医学知識を持っているからね。もちろん専門医の意見も必要だから、他の軍医と意見を交えながら診断するとしよう。それまではとりあえず、その杖を使っていてくれるかい?」
「はい。ありがとうございます。よろしくお願いします」
先生は、椅子に座ったままの僕の脚を、真剣な眼差しで曲げたり伸ばしたりしている。
そうしながら脚や、脚を動かした時の脳のスキャンを”撮っている”らしい。
当然「どうやって?」と思ったけど、多分難しいので訊かないことにした。
今は難しいことを処理すべきで無いと脳が訴えている。
後日また改めて結果を聞きに来るように言われ、僕たちは医務室を後にした。
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