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王都
一度ならず二度までも①※
しおりを挟む※R18注意
ーーーーーーーーside JILLーーーーーーーーー
しばらくぶりに仕事に戻った初日、溜まっていた業務を片付けるのに思ったよりも時間がかかってしまった。
しかし他の司令官らが完璧に代理を果たしてくれたようで、何ひとつトラブルが無かった事が救いだ。
昨夜アキオから貰い受けた絵とマッサージのおかげで疲労を感じることなく無事全ての業務を終え、急いで部屋に帰る。
早くアキオに会いたい。
慣れない場所にきっと疲れている筈だ。
帰ったら、今日あった出来事でも聞こうか。いや、疲れているのだから早めに寝かせなければ明日に響く。
もしかすると既に眠っているかもしれない。
自室の扉の前まで移転し、静かに扉を開ける。
室内は静まり返り、人の気配はあるが人影が無い。
「アキオ?いるのか?」
耳を澄ませると、窓際のベッドの方からかすかに荒い息遣いが響いているのが聞こえた。
嫌な予感が背筋に流れる。
急いでベッドの向こう側にまわり込むと、そこには下履きを膝までずらし、下腹部や太腿を白濁で濡らしたアキオが力なく地べたに座りベッドにもたれかかっていた。
「どうしたアキオ!?」
「いやだ………っみないで………」
「……っ!」
息を呑んだ。
血液が激しく波立つのを感じる。
誰かに乱暴された可能性も考えたが、そのような気配や形跡は無い。精霊から危険を知らせる報告もなかった。
ひとまず、フラッシュバックのような発作が発現した訳では無いことに胸を撫で下ろす。
しかし状況に問題があることに変わりは無い。
膝を曲げて体を丸めようとするも思うように体が動かないのか、曝け出されたままの体が小さく震えている。
「ジル…さ…ごめんなさい………汚しちゃ……た」
「謝るな、大丈夫だ。どうした?治まらないのか?」
アキオの前に膝をつき、なるべく体を目に入れないよう顔だけを覗き込む。
彼は肩を上下に揺らし、目を潤ませ小さく頷いた。
「……どう、しよ…」
……困った。
なぜこうなったのだ。
また限界まで我慢してしまったのだろうか。
以前、生理現象は恥ずかしいことでは無いと伝えた筈だが、確かに常に慣れない環境に置かれているアキオにとって、見ず知らずの場所で昂りを鎮めることに罪悪感が芽生えてしまうのも無理は無いのかもしれない。
「っ……………触っ、て……」
悩ましい視線をこちらに向けるアキオは、耐えきれないとばかりに私に助けを求めた。
どれほどの勇気を振り絞って出した言葉か、恐怖に怯えているようにも見えるその表情が物語っている。
私がたじろいでいたばかりに、アキオに辛い思いをさせてしまった。
自分の理性にどうか崩れ去らないでくれと切願しながら腹を括る。
「もう心配は要らない。アキオ、一度持ち上げるぞ」
ベッドに座らせるために体に触れるも、その感覚すら刺激になるようで、アキオは荒い息と小さな声を漏らす。
隣に座らせ体を支えると、小さな背中はビクっと震えた。
「痛いことはしない。嫌だと思ったら跳ね除けてくれ」
今の彼にそんな力は無いことを承知で言葉を投げかける私は、実に卑怯だと思う。
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