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王都
飴玉
しおりを挟む図書館で明日から始まる勉強の説明を受けた後は、隣にある大きなお屋敷の中をざっと歩いた。
軍の方が講義を受けている部屋をちらっと覗き見したり、豪華な客間を見学したりと、今までとはまたひと味違った非現実的な体験を楽しんだ。
そうこうしているうちに日も傾いてきたので、宮廷へはまた後日行くことに。
一応定時は過ぎてるけどジルさんはまだお仕事中とのことで、夕食はユリがまた食堂へ連れて行ってくれた。渋々って感じだったけど。
ユリにまじまじと見守られる中で食べるご飯はちょっと緊張するけど、たくさん歩いたのもあってか、とても美味しく感じた。
恐らくユリが睨みを効かせているからだろう。周りの隊員の方々は何も話しかけて来ないけど、目を合わせると皆さんニコッと微笑んでくれた。
この美味しさをたくさんの人と共有したかったので、僕は色んな人と目を合わせて『美味しいですね』とテレパシーを送った。
目の前のユリは顔を両手で覆ったり頭を抱えたりしてた。
お腹すいたのかな。
ユリは食べないのかと聞くと、給仕用の食事があると言う。
へぇ。
給仕さんは給仕さんで、職員専用のお部屋みたいなのがあるのかな。
『お城』や『宮廷』なんてところがはじめての僕にとって、知らない事ばかりで学びや発見の連続だった。
なんだか、今日は一日中新鮮な気持ちだったな。
◆
ジルさんの部屋に戻ってきた。
部屋の中なら大丈夫だろうということで、ユリには宮廷に戻ってもらった。
とてもとてもとても嫌そうだったけど、流石にこれ以上一緒に居てもらうわけにもいかない。彼には彼の本来の仕事があるのに、今日だけでもすごく頼っちゃったな。
でも楽しかった。
色んな人にも会えたし、見たことないものもたくさん見れた。
そしてイガさんとメテさんにもまた会うことが出来た。
これからの生活は正直不安もあるけど、不安さえ包み込んでくれる人たちがたくさんいるから、なんとかやっていける気がする。きっと大丈夫だ。
1日の出来事を思い返しながらお風呂に入って、寝る準備を終える。
よし。もういつでも寝られるぞ。
けどジルさんに会いたいから帰ってくるの待ってよう。
あ、そうだ。イガさんとメテさんに練り油屋さんのおまけを持っていくんだった。
ベッドサイドに置いてある鞄を開けて袋を取り出すと、コロン、と一緒に落ちてきたのは、お菓子屋さんの兄ちゃんが「疲労回復に効く」と言って渡してくれた赤い飴玉。
そういえばたくさん歩いて、気持ちばかり疲れたような気もする。
体は確かに糖分を求めているしちょうどいい。
封を開け、迷わず口に放り込んだ。
ん~、甘ずっぱい。
口の中でコロコロ転がすと、ふわりと薬草のような風味が広がっていく。
不思議な味だなあ。
でも、ほんのりとした甘さが体に染みる。
どこか栄養ドリンクにも似た味だ。
このちょうどいい苦味が疲労に効くのかな?
お風呂上がりで体もぽかぽか温まっているからか、早速元気になってきたような気もする。
なんて、流石に早すぎるか。
それにしても飴なんて久しぶりに舐めたかも。
やっぱ甘いものって美味しいなぁ……。
…んー、なんだろう、眠いような眠く無いような、何だか変な心地よさが襲ってきた。
思ったより疲れてしまっていたのかも。
慣れない乗り物(昇降機)にも乗ったし。
あれは最初は少し怖かったけど、何度か乗ってるうちに楽しくなってきた。移転魔法が使えない僕はこれから頻繁に使うことになると思うし、慣れておいて良かった。
図書館広かったし、ご飯もおいしかったし、あとは…あとは……んー、なんだろう…段々あたまがぼーっとしてきた。
やっぱりなんか、なんかからだが熱い………?
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