ある時計台の運命

丑三とき

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王都

図書館①

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昼食を食べながら、昨日プレゼント大作戦を決行したことを伝えた。
2人はいっぱい褒めてくれた。

イガさんは嬉しそうにしながらも「司令官の理性、剛鉄でできてんのかな」と言いつつ残念そうにもしてた。


「そうだ。練り油屋のおばちゃんにたくさんおまけを貰ったんです。イガさんとメテさんの分も、って。また持って来ますね」

「へえ、おばちゃん太っ腹だねえ。楽しみにしてるよ」

「あ……持って来ますって言っちゃったけど…またここに来ても良いですか?ここってイガさんのお部屋なんですよね?」

「ええ。もちろん、いつでも来てくださいね」

「ちなみに俺の部屋は右隣にあるから、そっちに来てくれても大歓迎だよ」

「あなたは自分の部屋になんてほとんど居ないじゃないですか。いつもいつもこちらへ押しかけて…」

「押しかけるなんて人聞き悪いなあ。いつもいつも俺のお茶用意して待ってくれてるじゃないですか」

「別に待ってません」

「またそんな事言って。俺の部屋は反対隣に人がいるから嫌って言ったのイガさんじゃないですか。その点この部屋の反対隣は空室だから、いくら声が響いても問題ないですしね」

「アキオ君の前でやめなさい!」

「声…?」

「っほ、ほら、メテって喋り声大きいじゃないですか!大声でお喋りしてたらお隣にご迷惑でしょう?」

ああ、なるほど。


「俺の声じゃなくて、イガさんのでしょう?」

ニヤニヤのメテさん。

「いい加減にしてください!
……それに、100歩譲ってそうだとしても、夜来ればいいでしょう。常に居座られたら迷惑です」

モゴモゴのイガさん。

「へぇ…夜ならいいんだ」

もっとニヤニヤのメテさん。

「ほんっ……とに、揚げ足取りは嫌われますよ」

少し赤いイガさん。

仲良いなあ。
相変わらずすてきなカップルだ。
幸せそうな2人を見てるとこっちまで幸せな気持ちになる。


お喋りに花を咲かせているうちに楽しい時間はあっという間に過ぎ、ユリが迎えに来る頃には足の疲れはすっかり治っていた。







楽しい食事の後は、お城の図書館に行った。

図書館は居住塔を出て、大きな中庭を望む渡り廊下を渡ったところにある。
城の全景はわからないけど、城内を網羅するにはまだまだ時間がかかりそうな予感がする。



これまた重々しく大きな扉を開いて中に入る。予想を超えるほどに広い室内は、丸い筒型をしていた。
360度、天井まで壁一面に本棚が置かれていて、4階まである吹き抜けの作りになっている。


人はおらず、黙ると耳をつんざくような静けさが襲う。
防音もしっかりしてるみたいだ。


「すごい……」

「3階の一部と4階の棚には古代文字で書かれている資料しか無いので、実質役に立つのは半分ほどですが…」

「そんなに昔の本も残ってるんだね」

「複製されたものも多いですが、この国は昔から製紙技術が優れているので、数千年前の資料もそのまま残されているんですよ」

「へぇ…」

さすが木の国。

半分も読めないのは残念だけど、これだけの本があれば勉強には充分だろう。


「それから、こちらにあるのが城の全体像です」

おのぼりさんみたいに上を見上げていた頭をユリの方に向ける。そこには1平方メートルくらいある模型が、ガラスケースの中に鎮座していた。


「わ…」

細部まで精巧に造られた芸術品に、思わず声が漏れる。


「こちらの、南に3棟建っているのが居住塔、北に伸びる渡り廊下を渡ってこちらにあるのが、現在地の図書館です」

ユリはひとつひとつ城の構造を解説してくれる。

城全体はロの字型になっていて、簡単に言うと『ロ』の左下の部分に筒型の居住塔が3つ、左上に図書館、左上から右上にかけてとっても大きくて豪華な建物が、右側にはバラバラの大きさの建物が3つほど、右下から左下にかけてまた渡り廊下。

渡り廊下には数カ所に細長い塔が建っていて、上部には大砲のようなものが備えられている。


なるほど、これは一度に覚えるのは無理だ。


「ユリ、紙とペンってある?」

「少々お待ちください」

部屋の端に置かれている小さな文机の引き出しを開け、僕が所望したものを持って来てくれる。

「こちらでよろしいですか?」

「ありがとう。ごめんユリ、少し僕のこと支えて貰っていてもいい?」

「お安い御用でございます!あぁ、何と光栄……」


こういうのは模写して覚えよう。
杖をユリに預けてペンを持つ。
サッサッサと、簡単に、でも構造がわかる様に窓の数などは正確に描き写していく。
中庭には少しお花でも咲かせておこう。

左下の塔には線を引っ張って『居住塔』、左上には『図書館(すごい広い)』と加える。

「ユリ、ここは何をする所なの?」

図書館の隣にある大きなお屋敷を指して聞くと、例によって涙を流したユリが目の前にいた。

もう慣れた。
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