ある時計台の運命

丑三とき

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王都

軍城①

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僕がおろおろする中ユリは一瞬で鼻血を止め、着替えや身支度をテキパキと手伝ってくれた。




ジルさんの部屋を出ると、廊下は静かでシンとしてる。

「誰も居ないんだね」

「こちらの階にあるのはジルルドオクタイ最高司令官の寝室と居間のみです。他の隊員が騒がしくすることもないので、気兼ねなくお過ごし下さいね」

なんか、凄いところに住まわせて貰ってるんだな…。

「まずは食堂へ行きましょう。ちょうど隊員の方々も朝食を済まされた時間ですので、今なら人も少ないと思います」


廊下を歩きながら城の構造について説明を聞く。

居住塔は全部で3つ。
ここは最も大きな居住塔の最上階で、食堂はこの塔の一階にあるらしい。

「大体の者は移転魔法で移動するのですが、全員が魔術を使えるというわけではないので昇降機も各塔に設置されています。
今回は昇降機を使いましょう」

ユリに付いて廊下を少し歩くと、なんともレトロなエレベーターが姿を現した。
ユリは格子状の鉄扉を開けた後、二重になっている蛇腹式の扉も開く。
中は、エレベーターにしては少し広め。

「わあ…」

「アキオ様の世界にも昇降機はありますか?」

「ある、けど、だいぶ感じが違うからびっくりしちゃって」

日本のようにボタンを押せば何もかもできるという訳ではないようで、鉄の外扉と蛇腹の内扉を手動で閉めて、レバーを任意の階の数字に動かすと作動する仕組みらしい。
とっても古風だ。
アトラクションに乗ってるみたいでちょっと楽しい。
けたたましい音を立てながら下降するので非常にスリリングでもあるが。


ガコン、という音とともに体に振動が走り、昇降機が止まる。

やはり手動で扉を開き、外に出ると、廊下にはイガさんたちと同じような軍服を着た人がちらほら歩いていた。
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