ある時計台の運命

丑三とき

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王都

プレゼント大作戦決行編①

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強烈な光に思わずぎゅっと目を閉じる。
おさまった頃合いをみてようやく開くと、先程の客間のようなシンプルな部屋に移動していた。

大きなベッドと必要最低限の家具。
でもソファは立派で、僕が2人くらい寝られそうだ。

とっても居心地がいい部屋だけど、でも…これはダメだ。
ジルさんの匂いが充満してる。
日の光をたっぷり浴びた新緑のような香り。

いきなり光り出してワープしたことにたじろぎはしたものの、人がユニコーンになったりする世界だと言うことはもう学んでいるのでそれほど吃驚はしなかった。それよりも、この良い匂いで頭が占められて、ぽーっとする。

だめだだめだ。
こんなことで怯んでる場合じゃない。

イガさんとメテさんと約束した通り、ちゃんと自分からアプローチするんだ。
一緒の部屋で過ごせる時間が増えたことも、ラッキーだと思わなきゃ。

「アキオ、風呂はどうする?」

「一緒に入りますっ!」







ジルさんの部屋のお風呂は、銭湯みたいに広かった。
ジルさんは「無駄な広さ」と言っていたけど、足も手も伸ばしてなお余裕があるなんて天国みたいで幸せだった。


気持ちよりも口が先走って後々後悔するのはいつものこと。
つい一緒に入るって言っちゃったけど、心臓が大丈夫なはずなかった。
いい加減慣れなさいって自分に言い聞かせてみたけれど、この羞恥に慣れるにはあと200年くらいかかりそうだ。


のぼせ気味でお風呂から上がって、ベッド脇に置かせてもらったカバンを開けると、ひとつの袋が出てきた。


そうだった。
ジルさんにお礼として買った練り油の存在をついつい忘れてしまっていた。

おばちゃんにおまけしてもらった試供品もたくさん入ってる。
メテさんとイガさんの分も入れてくれたから、今度会った時に渡さなきゃ。

とりあえず袋から目当ての練り油を取り出す。

どうしよう。もう日付けが変わりそうだ。
今から渡すのは遅いかな。

「アキオ、色々と気を張ることが多かっただろう。王も言っていたが、あまり気負わないでくれ。ゆっくりと少しずつ進めていけばいい」

「ありがとうございます。無事に着いて、安心しました」

「…一つだけ約束して欲しい。辛いことや不安なことが有れば必ず伝えてくれ。決して一人で抱え込まないでくれ」

「ジルさん…」

王様もユリもいい人で、これから出会う人もきっとみんな良い人だってなんとなく分かる。
でもふと自身の心に目を向けると、何故かは分からないけど勝手に不安になってる自分がいる。
安心と同時に不安が襲う正体不明の心情に、ますます不安が大きくなる。
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