ある時計台の運命

丑三とき

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王都

ユリッタハーツフェルド

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「まあ…しかし…そのおかげで被害も最小限に済み、被疑者にも雲隠れされることなく捕縛することができた。被害を受け王都に運ばれた民間人は現在施設で治療を受け、皆着々と回復に向かっている。お前のおかげだ」

おぉー…これは。
友人に改まって礼など言うのは小っ恥ずかしいって気持ちと、でも命を張ってくれたおかげで助かったのだから礼は言わなきゃって気持ちの間で葛藤してる王様、愛らしい。
王様ってツンデレなのかな。

「それは良かった」

「何が良かっただ。どの口が言ってやがる。今度無茶しやがったら殺すぞ」

…違ったみたい。


「そうだヴェイン。お前に頼みがある」

「しょうもない事だったら許さん」

「アキオの事だ。城にいてもいつ何が起きるか分からない。私も通常業務に戻るのでアキオと居られる時間も減る。
常にとは言わないが、王宮からアキオの世話係を派遣してもらうことは可能か?」

「ジルさんそれはダメです。そんなに迷惑かけられません」

「そう思ってもう本人に話はつけてある。
ユリッタ。入れ」

ーーーコンコンコンッ

「失礼いたします」

「給仕のフィアデリア・ユリッタハーツフェルドだ。彼は信用して良い。彼にだけは全ての事情を話してある。相談もせずすまない」

僕の入る隙が無いくらいトントントンと話が進んでゆく。
あたふた狼狽えていると、金髪碧眼の『いわゆる美青年』って感じの人が部屋に入って来た。

「ユリッタ。いいな?」

「もちろんでございます」


「でも、王宮もお忙しいのでしょう?僕はひとりで大丈…」

「やっとお話することができましたアキオ様!お眠りになっておられるその可愛らしいお顔を拝見した時から、いつアキオ様と言葉を交わすことが出来るかと、楽しみにしておりました!
あ、申し遅れました。わたくし、フィアデリア・ユリッタハーツフェルドと申します!よろしくお願い致します!」

すごい元気。

美青年は僕の両手を握って大きな目を輝かせている。眩しい。

「フィア……ユリ?」

「ユリ…!そう呼んでくださるのですか?
なんと可愛らしい響き。気に入りました!」

名前が難しすぎて聞き取れなかっただけなんだけど、そう呼んで良いのならお言葉に甘えることにする。
この世界の人は難しい名前が多いから、元の世界にもあるような名前は覚えやすいし呼びやすい。

「では、ユリさん、よろしくお願いします」

「"さん"などと…!おやめください、アキオ様!」

とっても美人で大人しそうで、『可憐』って言葉が似合うようなとても素敵な雰囲気なのに、ものすごい剣幕で捲し立てる様子はさながら猛獣のようだ。
ギャップがすごい。
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