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旅路
旅最終日①
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翌日、スッキリと目覚めた。
この日の目標は、王都に到着することと、王に謁見すること。そして僕の個人的な目標はイガさんとメテさんに写真の人物について報告すること。
王への謁見という一大行事に緊張して写真のことは忘れかけていたけど、あんなに背中を押してくれた2人に音沙汰なしでは申し訳が立たない。
起きた時、もちろんジルさんはすでに起床していた。おはようを交わすと、その身はかっちりと軍服に包まれていることに気がつく。
なんかこう、『威厳』が『威厳』を身に纏っているという感じでこっちも緊張する。
そういえば軍服を着ているところは初めて見たかもしれない。
おそらく王様に会うための正装だろう。
「ジルさん、かっこいいですね」
「そう言われると気が引き締まるな」
うわ。褒め言葉へのアンサーもかっこいい。
「いやいやそんなことないですよ」とか、絶対言ったこと無いだろうな。
何事も相手の言葉を肯定するところから。
こういう素直の積み重ねが人をかっこよくするのか。よし、見習おう。
眠気まなこで軍服をぽけーっと観察する。
イガさんとメテさんのように真っ黒ではなく、光の加減で紫にも見える気がする。
「ジルさんのは、紫色ですか?」
「最高位の役職の者はこの仕様らしい」
「そうなんですね。ジルさんの目も紫色だから、すごく似合っています」
「何を着ても似合うアキオには敵わんがな」
バクッ!!
今のは僕の心臓の音です。
ジルさん?
不用意な発言はお控えください。
うるさい鼓動と闘いながらなんとか「ありがとうございます」と返事をして、顔に集まった熱を覚ます為に顔を洗い、素早く着替えを済まして荷物を整理する。
この間描きかけたジルさんも鞄の奥の奥に丁寧に仕舞った。
準備万端、とベッドに腰掛けると、ジルさんがこう言った。
「アキオ、出発まで少し時間がある。久しぶりにやっておくか」
はて。
何のことやらと頭を捻っていると、ずんずんとジルさんがこちらに向かってきて、僕に手を伸ばしてくる。
え。近い近い近い。
どうしたの?何何?
「ん、熱は下がっているな」
今完全に上がった気がします。
おでこに触れたジルさんの手は少しかさかさしている。そのまま僕の髪の毛を撫でて、肩を抱かれる。
心の中できゃーと悲鳴を上げていると、ベッドに優しく押し倒された。
は?
え…え!?
あまりにも突然のことに身動きも取れず言葉も失ってしまう。
そして上体を起こして僕の脚あたりを観察するジルさんは「よし」と何かを意気込んだ。
血迷ったか…。僕は食べても美味しくないぞ。昨日夜ご飯食べて帰ったってあれ嘘だったんだ。きっとお腹すいたんだ。
それともやっぱり昨日の発言が色々まずかったのかな。僕の言うことを聞けとか、老けて見えるとか(言ってない)、あれきっと不敬罪だったんだ。不敬罪で食べられるんだ。
などとこちらこそ血迷ったことを考えていると、右足が大きな手に包まれ、つま先がぐーっとゆっくり伸ばされた。
ああこれ、ツリーハウスで毎日やっていたリハビリだ。
ジルさんが僕を食べるわけないじゃないか。
何ベッドに押し倒されたくらいで取り乱してるんだ。しっかりしろ僕。
指の後は足首、次は逆足、それが終わればジルさんの手を蹴る筋力トレーニング、と、施されるリハビリに懐かしさが込み上げる。
ジルさんと出会ってからはまだ半月程度しか経っていないのに、こうしていると何年も過ごしてきたように感じる。
それくらい濃い時間だったということだろう。
「この旅の間にも随分と筋力が増して来たな。すごいぞアキオ」
僕は最高位の役職の人の手を蹴り付けながら、「ありがとうございます」と返す。
たった数回でへばっていた頃と比べれば、確かに自分でも体力は付いてきた自信がある。
今なら、歩けるかもしれない。
急にそんな自信が湧いてきてしまったのだ。
この日の目標は、王都に到着することと、王に謁見すること。そして僕の個人的な目標はイガさんとメテさんに写真の人物について報告すること。
王への謁見という一大行事に緊張して写真のことは忘れかけていたけど、あんなに背中を押してくれた2人に音沙汰なしでは申し訳が立たない。
起きた時、もちろんジルさんはすでに起床していた。おはようを交わすと、その身はかっちりと軍服に包まれていることに気がつく。
なんかこう、『威厳』が『威厳』を身に纏っているという感じでこっちも緊張する。
そういえば軍服を着ているところは初めて見たかもしれない。
おそらく王様に会うための正装だろう。
「ジルさん、かっこいいですね」
「そう言われると気が引き締まるな」
うわ。褒め言葉へのアンサーもかっこいい。
「いやいやそんなことないですよ」とか、絶対言ったこと無いだろうな。
何事も相手の言葉を肯定するところから。
こういう素直の積み重ねが人をかっこよくするのか。よし、見習おう。
眠気まなこで軍服をぽけーっと観察する。
イガさんとメテさんのように真っ黒ではなく、光の加減で紫にも見える気がする。
「ジルさんのは、紫色ですか?」
「最高位の役職の者はこの仕様らしい」
「そうなんですね。ジルさんの目も紫色だから、すごく似合っています」
「何を着ても似合うアキオには敵わんがな」
バクッ!!
今のは僕の心臓の音です。
ジルさん?
不用意な発言はお控えください。
うるさい鼓動と闘いながらなんとか「ありがとうございます」と返事をして、顔に集まった熱を覚ます為に顔を洗い、素早く着替えを済まして荷物を整理する。
この間描きかけたジルさんも鞄の奥の奥に丁寧に仕舞った。
準備万端、とベッドに腰掛けると、ジルさんがこう言った。
「アキオ、出発まで少し時間がある。久しぶりにやっておくか」
はて。
何のことやらと頭を捻っていると、ずんずんとジルさんがこちらに向かってきて、僕に手を伸ばしてくる。
え。近い近い近い。
どうしたの?何何?
「ん、熱は下がっているな」
今完全に上がった気がします。
おでこに触れたジルさんの手は少しかさかさしている。そのまま僕の髪の毛を撫でて、肩を抱かれる。
心の中できゃーと悲鳴を上げていると、ベッドに優しく押し倒された。
は?
え…え!?
あまりにも突然のことに身動きも取れず言葉も失ってしまう。
そして上体を起こして僕の脚あたりを観察するジルさんは「よし」と何かを意気込んだ。
血迷ったか…。僕は食べても美味しくないぞ。昨日夜ご飯食べて帰ったってあれ嘘だったんだ。きっとお腹すいたんだ。
それともやっぱり昨日の発言が色々まずかったのかな。僕の言うことを聞けとか、老けて見えるとか(言ってない)、あれきっと不敬罪だったんだ。不敬罪で食べられるんだ。
などとこちらこそ血迷ったことを考えていると、右足が大きな手に包まれ、つま先がぐーっとゆっくり伸ばされた。
ああこれ、ツリーハウスで毎日やっていたリハビリだ。
ジルさんが僕を食べるわけないじゃないか。
何ベッドに押し倒されたくらいで取り乱してるんだ。しっかりしろ僕。
指の後は足首、次は逆足、それが終わればジルさんの手を蹴る筋力トレーニング、と、施されるリハビリに懐かしさが込み上げる。
ジルさんと出会ってからはまだ半月程度しか経っていないのに、こうしていると何年も過ごしてきたように感じる。
それくらい濃い時間だったということだろう。
「この旅の間にも随分と筋力が増して来たな。すごいぞアキオ」
僕は最高位の役職の人の手を蹴り付けながら、「ありがとうございます」と返す。
たった数回でへばっていた頃と比べれば、確かに自分でも体力は付いてきた自信がある。
今なら、歩けるかもしれない。
急にそんな自信が湧いてきてしまったのだ。
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