ある時計台の運命

丑三とき

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旅路

恋愛講義②

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ーーーその頃、自室に戻ったメテとイガーーー

「イガさん・・・どう思います?」

「どうも何も、司令官はとっくにアキオ君に落ちていると思いますけど」

「それはさすがのイガさんでも分かったんですね」

「さすがのって、それどういう意味です?」

「いやだって。イガさん昔、俺のさりげないアピールに全然気付いてくれなかったでしょう?だから強硬手段に出たんですよ」

「強硬手段・・・自覚はあったんですね。言い訳は聞きたくありません。
でも、分かっていたならアキオ君に教えてあげればよかったのに。司令官はきっとアキオ君と同じ気持ちだって」

「こういうのは自分で気付かないと意味ないですよ。それに、自分で落としたっていう手応えがあった方が、達成感あるでしょ?今のアキオくんにはそういう“自信”が必要だと思うんです」

「あなたという人は。
相変わらず無駄に人のことを観察していますよね。お節介というか、お人好しが過ぎるというか」

「そう言うイガさんだって、アキオ君に自分で答えに辿り着いて欲しくて言わなかったんでしょう?懐中時計の写真の御方が誰なのか」

「それは・・・まあ」

「俺と一緒じゃないですか」

「一緒にしないでください。
それに、あんな煽り方しなくても良かったでしょう。司令官がモテるだの密かに想いを寄せている人がたくさん居るだの。アキオ君可哀想でしたよ?」

「でも男らしく覚悟決めたじゃ無いですか。アキオ君はやればできる男です!」

「全く・・・」

「でも司令官も司令官だからなあ。あれはアキオ君の好意に絶っ対に気付いて無いだろうな」

「ええ、間違いなく。先が思いやられますね」

「ですね~。でも、アキオ君が司令官に甘えられるようになれば、司令官はきっと今よりもっとデロデロ甘々になりますよ。司令官に世話を焼かれながら頬を赤らめたり微笑んだりするアキオ君・・・ああ、想像するだけで眼福だなあ」

「メテ、楽しんでません?」

「だってアキオ君の色んな表情が見れるの可愛いじゃないですか」

「確かにそれは分かります。最初の頃は無表情で声も出せなかったから、何を考えているのか全く読めなくて。今もポーカーフェイスではありますが、少しずつ表情が出るようになってきましたからね。うん、想像してみれば確かにとっても可愛い予感がします。今でも充分に可愛いですが」

「イガさんって、俺よりアキオ君溺愛してますよね」

「もちろんです。見ず知らずの異世界に来て、見ず知らずの人間に攫われて、そんな目に遭っても健気に感謝を忘れず生きるなんて、そうそう出来ることではありません。あなたが世話を焼きたくなる気持ちも分かりますが、ここから先はアキオ君と司令官の問題です。
せっかく仲良くなったのに、あまりしつこくすると嫌われてしまいますよ」

「もしかしてイガさん、妬いてます??」

「・・・今の話で何でそうなるんです?」

「いやあ、俺がアキオ君ばっかり可愛いって言うから妬いたのかな~って」

「馬鹿も休み休み言ってください」

「イガさんって割と口悪いですよね」

「あら。そういうところが好きなんじゃないんですか?」

「もう、分かってるじゃ無いですか~」

「ちょっ、退いてください!」

「まあまあ。俺が手に入れたいほど可愛いと思っているのは、もちろんイガさんだけですよ?」

「そういうの良いですから。
こらっ、人の服を勝手に捲るな!」

「あ、敬語じゃないイガさんレア。
そういうの、他の人には見せないでくださいね」

「しつこくすると嫌われますよ」

「誰に?」

「私に」

「何言ってるんですか。煽ってきたのはそっちでしょう?」

「一切煽っていません」

「またまた~」

「こら、手を退けなさい」

「大丈夫ですよ、イガさん」

「っ、何がっ?」


「昔の自分を見ているみたいなんでしょう?アキオ君のこと」


「っ!・・・」

「大丈夫です。司令官が居れば、アキオ君は心の底から笑える様になります。イガさんだって、思いっきり笑えるし、思いっきり泣けるようになったでしょ?アキオ君もきっと大丈夫です。そんなに不安そうな顔しないでください」

「メテ・・・」

「だからほら!俺たちの応援で2人には絶対にくっついて貰わなきゃ」

「全く・・・お節介が過ぎて司令官に怒られても知りませんよ?」

「大丈夫ですよ。司令官、恋愛に関しては鈍いから、多分」

「それは言えてますね」

「イガさんは人のこと言えませんよ?」

「・・・・・・」



翌朝、メテの服は何故か全て袖や裾が結ばれており、軍用ブーツの紐は抜かれ、中には石が詰められていたそうな。
さらに馬車の中で開けたポットには、茶ではなく美味しそうな鶏肉のスープの湯気が立ち、昼食用にとイガが用意したサンドイッチは「やわらか蒸し鶏」と「サクサク揚げ鶏」と「香草香る炙り鶏」のサンドイッチだったらしい。
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感想 12

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