ある時計台の運命

丑三とき

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幕開けのツリーハウス

熱を纏った少年◉SIDEJILL※

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アキオの回復は順調だった。

相変わらず何を考えているのか掴みづらいが、虚ろだった目には光が宿ってきた。おそらく驚いているのだろうとか、おそらく何か面白いことがあったんだろうとか、それとなくではあるが手がかりになる情報をその目から読み取ることができるようになってきた。

この少年のことをもっと知りたいと思うのは、独りよがりな考えだろうか。
誰にでも私的な事情や秘め事はある。アキオもほぼ間違いなく意図的に何かを隠しているのであろうことは、その態度から明らかだ。

いつか私に話してくれたならその時は正面から受け止めたい。いずれにせよ、今はアキオの成長を見守るだけで充分満たされている。このような幸福を与えてくれる少年を、精一杯の真心で支えられる日常に充実を感じていた頃のこと。

いつものようにアキオを風呂に入れた後寝室へ運び、私は自分の入浴を済ませた。
寝室に戻ると、アキオが顔を火照らせて落ち着かなそうに座っていた。

「熱でもあるのか!?」

焦る私に、アキオは目を合わせてくれない。
いつもより湯が熱かっただろうか、それとも湯冷めをしてしまったのだろうか。額に手を当てると、少しばかり熱い気がする。貧血にはなっていなさそうだ。首に腫れやしこりも無い。脈は少々早め。

思い当たる可能性を一つ一つ潰しながら、風邪でも引いたのだろうか、と考えを巡らせながらアキオの全身を観察すると、下半身に熱が集まっていることに気が付いた。

なるほどそういうことか。

良かった。生理的欲求における身体反応も正常に機能していたようだ。心配していたわけではないが、そういう素振りを見たことがなかったので気にはなっていた。
そうか、私が付ききりで世話を焼いていたのでは、今まで言い出せなかったのだろう。申し訳ないことをした。

まさかこの当たり前の反応を、悪いことだと思っているのだろうか。
アキオは礼儀正しく聡明だから、気を遣ってしまったのかもしれない。

「アキオ、恥ずかしがることはない。
今まで気付かずすまなかった。私がずっとそばに居たのではやりづらかったろう。言い出せなかったんだな」

小さく頷く頭に安堵を覚える。
1人でも問題ないということだったので、遠慮などしなくていい旨を伝えて席を外すことにした。

外はすっかり深い闇に包まれている。少々冷えるが、アキオのいじらしい姿によこしまな気持ちがぎってしまったので、頭を冷やすには丁度良い。


空を飛ぶ鳥を数えながら邪念を払い、ついでに夜目や反射神経を鍛える。
王都に戻れば、本来の業務に戻らねばならない。今のうちからわずかな空き時間も鍛錬に費やしておかなければ体が鈍ってしまってからでは遅い。

アキオは恐らく施設に預けることになるだろう。しかし彼にもし身寄りが無いのなら、私の養子にするのはどだろうかと最近考えている。年齢はまだ訊いていないが、恐らく14、5だろう。親子にしては少々年齢が近い気もするが、問題はないと思う。もちろん最も重要なのはアキオの気持ちだが、彼さえ良ければ私はそうしたい。

将来に思いを馳せていると、一段と強い風が吹き肌を刺す。
そろそろ大丈夫だろうか。思ったより時間が経ってしまっていたので、もしかすると1人で退屈させてしまっているかもしれない。

急いで戻ると、寝巻きの下を脱ぎ、下穿きをずらしてそこを触っているアキオの姿が目に入る。

しまった!戻るのが早すぎたようだ。
外へと引き返そうと身を引いた時、あれほど表情が読み取りづらかったアキオの顔に非常に強い困惑が浮かんでいた。
ゆるゆると控えめに手が動いているが、刺激が足りないのだろう、触れているものはあと一歩のところでその熱を燻らせていた。

もしや、経験がないのだろうか。

「アキオ、うまくできないのか?」

申し訳ないと思いながらも近づいてアキオの顔を覗き込むと、顔いっぱいに熱を纏い、私の問いに力なく頷いた。

細かな配慮が足りなかったようだ。私はいつも詰めが甘い。詰めの甘さでアキオを困らせたことは数知れず。
今回も確認を怠ったせいで長時間苦痛を与えてしまった。

「あまり良くないのか?」

再び首を縦に振る。やはり。
アキオの熱に当てられてしまいそうで、逃げるように放ったらかしにした自分が情けなくて仕方がない。

「私が触れても良いか?」

アキオは目を泳がせたまま迷う様子を見せる。それはそうだろう。会って間もない男にされるなど恐怖だろう。
しかし、早く解放してやりたい。
なるべく恐怖を与えぬように、様子を観察しながらそっと触れる。

アキオの口から細い息が漏れた。自身の吐息に恥じらいを覚えたのか唇を噛んで息を詰めてしまうが、その様子から痛がっているわけではないと判断し、なるべく快感だけに身を任せられるよう良いところを探りながら続ける。

「アキオ、息を止めてはいけない」
唾液に濡れた唇は相変わらず薄くて小さい。最初の頃より血色の良くなったそれに安心感を覚え、何度も撫でる。

大きくしごくと、呼吸が速くなり細い腰が不安定に揺れ出す。良かった、きちんと感じてくれているようだ。
陰茎と亀頭の間の溝を撫でた時、緩やかに震えていた体が一段と大きく跳ねて私の胸に頭を寄りかけてくる。絶え間なく漏れる吐息が、彼の中の快感が強まっていることを示していた。
いやしかし、もしかしたら痛かったという可能性も捨てきれない。と思い立ち、「ここが良いのか?」と確認すると、小さな頭で何度も頷く。
良かった。痛かった訳ではないようだ。
アキオはさらに両手で私のシャツを掴んだ。

あと一息だ。先ほどの場所を中心に、先の方に強めの刺激を与える。もう限界なのだろう。ひっきりなしに先走りが漏れ出ている。
少し触り方を変えてみよう。もっと良い場所があるかもしれない。
幸い先走りが潤滑油の役割を果たして滑りも良くなってきているので、もう少し強くしても痛くないだろう。

アキオの体が快感に何度も跳ねては揺らぐ。一刻でも早く放たせてやりたい一心で夢中になって触ったため、先端が少し赤くなってしまった。

小さな穴から出続けている先走りを指で掬い取り、擦り付けて更に滑りを良くする。
もう少しだ。
アキオが快感に逃げてしまわないようにその体を抱き込み、我慢してはいけないと伝える。

体がぎゅっと硬直した直後、切ない息遣いとともに大きく震え出し、私の手には温かいものを感じた。
良かった。無事放てたようだ。

ずっと私の胸に伏せていた顔をあげさせると、頬は赤く染まり目は潤んでふやけるようにこちらを見ていた。
このまま眠気に身を任せた方が良いだろう。勝手に触ってしまったことに対する詫びと共にそれを伝えると、再び私の胸に頭を預け、すーすーと静かな寝息を立てる。

邪念を振り払うのも楽な行為ではない。信頼してくれていることへの歓喜とともに、なんとも前途多難なのだろうと思う。

アキオの出したものと自分の手を拭き、浴室に降りてタオルを湯で温める。アキオの太腿や腹は、最初の頃よりもだいぶ肉付きが良くなった。しかし華奢であることに変わりないそれに、何度目かもわからなくなった危うさを感じる。そういう雑念諸々を払拭するため、汗だくになってしまったアキオの体を綺麗に拭った。
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