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後編
14話 レイラの秘密
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「そもそも誰がMIPVを発見し、登録したんだ?」
「日狩満だよ」
「時期は?」
「雨宮雫が死んだと公表される少し前さ。彼女の死のほうが印象が強くて、ほとんどの人は認知してないだろうね。さ、これは故意なのか偶然なのか」
「日狩は優秀だ。故意で間違いないだろうね」
「俺はレイラから聞いたよ」
「レイラ、か。彼女も有名だね」
「調べたけどびっくりするくらい何も出てこなかった。普通はもっと情報があるはずなんだけど、いろいろ隠してた」
「何を隠してた?」
「人が隠したがる物は、後ろ暗いものと相場は決まってるんだよ」
ずらりと広げられる資料に3人は目を落とす。
「レイラ・ホワイト3rd……?」
「3rdってなんだ?」
「普通なら三世って意味になるけど、そうじゃない。三人目のレーヴェンってことだよ」
「三人目……?」
わからないと首を傾げる真澄とは正反対に心は理解したようで絶句している。
「……技術的には可能なんだ。倫理的に問題なだけで。真澄の知るレーヴェンは3番目のクローンだ」
☆
レイラはふぅと息を吐く。
まんまとしてやられた。
満の力を正直侮っていた。こんな自分の命を武器としてくる人間がいるとは思いはしなかった。
「君を死なせるわけにはいきません。私にはかわりがいる。でも、君はそうじゃない。君は君。たったひとつの命を生きている」
レイラは命に解毒薬を飲ませ、膝をつく。
呼吸が苦しくなり、身体が動かなくなっていく。
「……これで君に生きる理由ができた。私から奪った時間だけでも生きなさい。命の重みを知りなさい」
満。私を殺しても無駄だ。殺しても次の“レイラ”が作られるだけで、何も変わらない。
満が“死”に囚われているのだとしたら、レイラは“生”に囚われている。
銃口が額に当てられる。
「苦しまないように殺してくれるのかい?」
「……毒は苦しい、から」
「……君は優しいね。最期に名前を聞いてもいいかい?」
「佐々羅命」
「“命”か。良い名前だね」
ありがとうと唇が動き、引き金が引かれた。
☆
あの日のことは今でもよく覚えている。
美しい金色の髪がキラキラと輝いていた。
いつも偉そうな湊が頭を下げていた。
珍しいこともあるもんだと思ってじっと見ていた。
「ーー生きていることは辛いかい?」
「辛くはないよ。楽しくもないけどね」
「覚えいて。私は君やほかの子たちが
自由に生きられる世界にするよ、絶対に」
綺麗事を言うやつだと思っていた。
それがレイラとの出会いだった。
レイラは何度も訪れた。
外の面白い話を手土産に。
「僕の勝ちだね。どうか安らかな“死”があなたを少しでも癒しますようにーー」
違う形で出会っていたらきっと友人になれていたであろう彼女のことを思いながら、満は黙祷を捧げた。
ーー3rdの死亡を確認。4thの作成を開始します。
パソコンや機械に囲まれた無機質な部屋に電子音声が告げる。
「お疲れさまでした。今回もありがとう」
彼女は黙祷し、四人目の姿を見上げた。
レイラは病のため床に伏している。
酷いことをしていると思う。クローンだって命があり、したいことがあるだろう。
それをねじ曲げ、自分は好き勝手にしている。それでも守りたいものがあった。
「今度は少し趣旨を変えてみましょうか。私が死んでいたほうが満を騙せるでしょうし」
カタカタとプログラムを書き換えていく。
本人には了承済みだから問題はないがきっとこれは彼女の気に障るだろう。
「ーーおかえり、××」
久しぶりに姿を見た彼にレイラは笑う。彼はまだ形ができたばかりで人工羊水の中で目を閉じている。
ーーもし僕が死んだら、あなたと同じようにしてください。倫理に背いても叶えたい願いがあるんです。あなたの痛みを分けてください、レイラーー。
☆
「レイラを殺してきました」
そっと告げる命に満はにこりと笑う。
「弱点は効いたみたいだね?」
「はい。驚くほど効果的でした」
「レイラは優しすぎるんだよ。それを利用されるのは気の毒ではあるけどね」
カタリと部屋のドアで物が落ちる音がした。
「レイラを殺したの?ねぇ、満。その子は誰……?」
「そんなところにいないでこっちにおいでよ、雫」
「……質問に答えて!」
「……僕は下がったほうが良いでしょうか?」
「君はこのままいて」
雫は満へと近づいていく。
「彼は佐々羅命。立花研究所で拾ってきた僕の部下だよ。表立って動けない仕事を任せてきた子だよ」
「あたしが動くって言った!」
「そうだね。でも、雫は誰も殺せない。違うとは言わせないよ。雫の能力ならとっくに政府の奴らを全滅にできてる」
「……そんなこと!」
「ない、とは言えないでしょう?別に責めてるわけじゃないんだ。雫ができないなら他の人がすれば良いだけのことだよ」
「レイラが死んだってのは本当?」
「本当だよ。今回の仕事はレイラを殺すことだったから。もう後戻りはできないよ。雫、君は本当に人を殺せるかい?無理強いはしない。無理だと言うなら、一足先に二人で暮らすための家を用意してあるからそこで待っていて欲しいんだ」
ぎゅうと満は雫を抱き締める。
「雫に悲しい思いはさせたくない。だからゆっくり考えて。雫が決めた答えを僕は責めたりしないし、否定もしないから」
愛しそうに満は雫にキスの雨を降らせ、離れる。
「命、行くよ」
「はい」
「どこに行くの?」
「“鍵”を連れてくるんだよ。ちょうど揃っているみたいだからね」
去っていく背中に手を伸ばそうとする。
でも、今の自分に何ができる?
何も出来ない。
殺す覚悟も殺される覚悟もない。
ベッドに身体を投げ出す。
涙がぼろぼろと溢れる。
満。
ねぇ、大好きだよ。
ふたりでいたいと思うよ。
でもね、思うんだ。
すべての人間が悪いわけじゃないんだ。
だから。
あたしは誰も殺したくないし、満にも殺してほしくないんだよ。
なら。
自分がすることはひとつ。
好きだから。
大好きだからこそ。
止めるんだ、満をーー。
☆
「よくここがわかりましたね」
カツンと響いた足音にレイラが目を向ける。
「なんで生きてるの?満が殺したと言ってたのに」
「あなたならなんとなくはわかっているでしょう?だからここに来た」
「確信はなかったよ」
ぐるりと研究所を見回す。と、そこに見知った顔を見つけ雫は駆け寄った。
「彼も望んだんです」
「クローンになることを?」
「人間を救うために、と。あと、あなたを助けるために、と」
「……あたしのため、に?」
ゆらゆらと雫の瞳が揺れる。
「あなたがここに来たということは、心を決めたのですね?」
「満を止めようと思う。大切に思うからこそ酷いことをさせたくないんだ」
「よく決心してくれました。クローンの彼をあなたに託します。今度こそ道を違えないで」
羊水が排出され、ごぼりと口から吐き出される。一糸纏わぬ白い身体を抱き止める。ゆるゆると目が開き、大好きだったアメジスト色の瞳が見えた。
「……し……ずく……?」
「雫だよ。長い間待たせてごめん」
「……僕は……死んだんだね…?」
「今の香月はクローンだよ」
「……そっか……レイラ、ありがとう」
「いえ。いろいろと背負わせてしまってすみません」
「僕が望んだことだから大丈夫です」
「後は頼みました。私はもう口を出すだけで、自由に動けません。満は私が死んだと思っています。あなたが生きているとも思っていません。隙をつくチャンスです。あなたと雫ならきっとうまくいきますよ」
「真澄はどうしていますか?」
「あなたの遺言を叶えようと私の元を去りました」
「僕の遺言……?」
「雫を助けて、と。私は正直に言いますが雫を消す決断をしていたんです」
気まずそうに話すレイラに雫は気にしないでと返す。
「香月、まずは真澄に会いに行く?」
「ううん。目的は満だろう?目指す先が同じならまた出会える。満たちの行動は?」
「“鍵”を迎えに行ってる」
「まずはそれを阻止だ。確か秋が一緒にいるんだよね。連絡は取れるのかな?」
「秋があれを外してなければ可能だよ」
じゃあ連絡してみると香月が動く。
『ーー秋、聞こえる?時雨を奪いに満が動いてる。そこから逃げるんだ』
『え……その声は香月、なの?』
『そうだよ。詳しくは合流してから話すよ。場所は地図を添付するから。急いで』
『……っ!わかった!』
「レイラ、行ってくる」
「あんた、あたしに迷いがあると知って真澄を近づけたな?」
「さて、どうでしょうね。ただ真澄の純粋さの前では嘘はつけなくなりますが」
「食えない奴」
「それはお互い様です」
「香月。一緒に行こう!」
「うん!うん!」
涙ぐむ香月に雫が笑っていた。
「血液の検査が終わった。香澄の情報と医学的な情報をあわせて謎を解いていく」
「なぁ、それって俺の仲間にも聞かせて大丈夫なやつ?」
「大丈夫だ。むしろ知りたいんじゃないかな」
真澄は頷くと仲間たちへと連絡を繋げた。
『こちら真澄。みんな今どうしてる?元気にしてる?聞いて欲しい話があるんだ』
『こちら秋。俺は無事だよ。時雨を満たちから逃がすために動いてるけど、話を聞く分には問題ない』
『こちら大樹。鏡夜と共にいるよ。話を聞きたい』
『こちらレイラ。話を聞かせてほしい』
返事があることが嬉しくて、へへと真澄は笑う。
『みなさん、はじめまして。真澄の協力者の時任香澄です。情報を調べさせてもらいました』
『同じく協力者の相楽心です。俺は研究者だから知ってる人もいるかもしれません。香澄の情報と俺の知識から導きだした答えを今から話します』
ふうと心は息をつく。
『珍しい双子がいました。生まれつき特殊なウイルスを持っており、彼らを生んだ母親が感染し、そこにいた医師や看護師、父親を殺しました。母親もウイルスに犯され命を落としました。両親を失った不吉な双子を引き取る親族はおらず、孤児となりました。ふたりの名前は神代結羽と神代結希。弟のほうは現在、立花秋と名乗っています。引き取り手も見つからず、不気味なふたりは安楽死をさせられようとしていました。そこに目をつけたのが立花研究所でした。困っていた病院はすぐさま研究所に双子を引き渡しました。血を詳しく調べてみると双子でも血の性質が違うことがわかりました。特に結羽の血は恐ろしい性質ーーウイルスの活性化をもち、活性化したMIPVを持っていました。研究所たちは恐る恐るそのウイルスを調べますが感染して研究者同士の殺しあいとなり、怖くなった彼らはまだ幼い結羽を捨てました。残された秋の血はあらゆるウイルスに抗体を作れるという、新薬を開発できる可能性のあるものでした。だが、研究者たちは忘れていた、いや、失念していたのです。結羽と秋は一緒に生まれています。秋もMIPVに感染しており、自分の血の力により発症を抑えているのでした。少しずつ広がる感染の中、秋を引き取りたいと願い出た研究者がいました。彼女の名前は雨宮雫。彼女についていき、秋はどんどん人間らしくなっていきました。それと同時にMIPVもじわじわと感染していったのです。なんの因果か結羽は雫の兄である湊に秘密裏に拾われ、こちらも感染が進んでいました』
『ーーつまり彼らに関わる人間は感染者だったんだね』
雫の声に何人かが息を飲む気配がした。
『お久しぶりです、雫さん。感染に気づいていましたよね?』
心の言葉に雫はうんと頷いた。
『MIPVの感染ルートは血を主にする体液です。HIVと非常によく似ています。ただ違うのはMIPVは酸素に触れても生きることができ、感染率が高いのです。おそらく最初の感染者は雫さんと満さんです。結羽さんと秋さんは元々ウイルスを持っているので感染者とは別の扱いです』
『その通りだね。最初の感染者はあたしたちだ。症状は酷いものだった。お互いを殺そうと何回したことか』
『彼らが無事でいられたのは、ひとえに研究者だったからでしょう。持ち前の才能で抗体を作り出し、ウイルスを克服しました。そこでこう考えるんです。“こんなウイルスが広まったら一体どれくらいの人間が殺せるんだろう”、と』
息を飲む音が聞こえてくる。
『心はまるでみてきたように語るね。その考えに辿り着いたあたしたちはウイルスを改良した。より感染しやすいように』
『二種類作ったでしょう?ばらまく用と、実験用と。どこにばらまいたのか考えました。誰もが使い、最も効率が良いもの』
『その答えは?』
『水道です。水は料理に使う。料理をしない人でもお風呂に使ったり、顔を洗ったりする。強くなったウイルスは生き残り、傷口から侵入し感染するんです』
『当たりだよ。βはじわじわと感染させるタイプにしたから発症までが遅い。発症しても穏やかで、殺人にまで至らないこともあるけど人間関係を壊すのにちょうど良い』
『実験用は真澄たちに使ったものですね?特定の相手を狙って感染させるもの。対象の遺伝子を組み込み、狙う』
『αはそう作ったんだよ。発症も激しいものにした』
『最初のターゲットは椿遥人。警察の様子を見る目的と、ターゲットたちと接点を一番持っていたから彼が選ばれました。彼に感染したウイルスには妹である、雨音と関わりのある結羽、雨音の友人である秋、その上司である真澄、香月、鏡夜、大樹、レイラ、遥人の友人である時雨をターゲットとし、作られていました。頃合いを見て、ウイルスを活性化させ彼らに殺しあいをさせ、雨音、香月、鏡夜、時雨を殺しました。イレギュラーで時雨は死にはしなかったですが』
『αはね、人を殺しても死なないんだ。死ぬのはβの方。だから時雨が遥人を殺しても時雨は死ななかった。けれど、生き返ったのはあたしも予想外だった』
『雫さん。あなたは少しずつヒントを残していました。私が気づくくらいの小さな小さなヒントを。……あなたは最初から望んでいたんですね。私があなたを止めることを』
『……そうだよ。人を憎んだことは確かにある。けどね、あたしはそれ以上に人間が好きだから』
『αとβを掛け合わせて、ウイルスを完成させるんでしょう?』
『そうだよ。βは満が、αはあたしが持っている。あたしは満を止めたくて、離れてきたんだ。あと、時雨のイレギュラーが邪魔になる。満から時雨を守らなきゃいけなーーっ!』
雫の声に雑音が混じる。
『君も僕を裏切るのかい?』
凍てついた声が聞こえる。
そこには時雨を追いかけていったはずの満の姿があった。
『雫さん!?大丈夫ですか?しーー』
ガチャンと無線は壊される。
「ねぇ、雫。君は誰の味方なの……?」
凍りついた瞳がゆっくりと雫にナイフを振り下ろし、避けることを拒んだ身体から血がぼたぼたと落ちた。
「どうして避けないの……?」
傷つけた本人のほうが痛そうな顔をしていた。
「だって、これが満があたしに伝えたかったことなんでしょ?」
「何を言ってるの?バカなの?軽傷じゃないよ?死んじゃったらどうするつもりなの?」
「あたし、満になら殺されてもいいよ」
だらだらと出血は止まらない。
「本当はお互いに気づいていたよね。同じ未来を見ていないって、わかってたよね。お互いを傷つけるのが怖くて、側にいられなくなることが怖くて、知らないふりをしてた。好きだからって言い訳して進むことをしなかった。あたしは満が裏で何をしていたかも知ってたよ。あたしの心変わりを防ごうと秋や香月を殺そうとしてた」
止血をしようとする満を雫は拒む。それどころか自らの手で更に傷を深くする。
「あたしは誰の味方かって聞いたよね。あたしは昔も今も未来もずっと、生まれ変わったとしても満の味方だよ」
くらりと眩暈がし、香月がその身体を支える。
「味方だからこそ、愛してるからこそ、間違いを正そうと思った。ぶつかることはわかってた。でも、ぶつかって、お互いの醜い本音聞いて、それで良くなるならそうしたいと思った。今回は譲らない。もう終わりにしよう。憎しみは何も生まない。ねぇ、満。今の自分の生き方を姉さんに見せられる?姉さんが笑ってくれると思う?姉さんが願ってくれた幸せの形はこんなんじゃない、絶対に」
熱く感じていた身体が寒くなってくる。おそらく血を失いすぎているせいだ。
「選んでよ。あたしの命か、復讐か」
「……お前はずるい!死にそうな雫を僕が放っておけるわけないだろ!」
「じゃあβを渡して」
のろのろと差し出された小瓶が渡された。瓶を受け取ると雫はニッと笑う。すぐさま、止血が行われる。レイラと香月がすぐ輸血の準備をする。満は服が血で汚れることも気にせずに、ここに雫がいるのを確かめるように抱き締めた。
カツカツと靴音が響き、雫に襲いかかる。
揃った瓶を嬉しそうに眺め、にやりと笑う。
「ーーままごとは終わりましたか?」
愛だの何だの下らないと嗤う声がした。
え、とその場が凍りつく。
「甘いんですよ、雫さん。私の過去を知りながら私が人間側につくと思っていたんですか?満さんもどんどん雫さんに絆されていって、正直期待外れでしたよ」
睨み付ける香月に結羽は笑う。
「私を怪しんでいたのはあなただけでしたね」
「えぇ。あれだけ設備や知識がありながら何も結果を出さなかった。有能なあなたらしくありませんでしたよ」
「香月を手放したのがあなたたちの敗因です」
スッと結羽は後ろに下がり、窓を飛び出す。落ちる結羽を捕まえたのは大樹だった。
「命!瓶を奪い返せ!結羽と大樹を追いかけろ!」
その言葉ひとつに命は頷き、窓の外に消える。
「雫はここにいて。満さん、雫をよろしくお願いします。今度こそ僕は雫を守ります。満さんのことも守ってみせます」
壊れていない無線機を手に香月は窓の外へと消えていく。
『ーー久しぶり、真澄。時雨を助けに行こう』
「日狩満だよ」
「時期は?」
「雨宮雫が死んだと公表される少し前さ。彼女の死のほうが印象が強くて、ほとんどの人は認知してないだろうね。さ、これは故意なのか偶然なのか」
「日狩は優秀だ。故意で間違いないだろうね」
「俺はレイラから聞いたよ」
「レイラ、か。彼女も有名だね」
「調べたけどびっくりするくらい何も出てこなかった。普通はもっと情報があるはずなんだけど、いろいろ隠してた」
「何を隠してた?」
「人が隠したがる物は、後ろ暗いものと相場は決まってるんだよ」
ずらりと広げられる資料に3人は目を落とす。
「レイラ・ホワイト3rd……?」
「3rdってなんだ?」
「普通なら三世って意味になるけど、そうじゃない。三人目のレーヴェンってことだよ」
「三人目……?」
わからないと首を傾げる真澄とは正反対に心は理解したようで絶句している。
「……技術的には可能なんだ。倫理的に問題なだけで。真澄の知るレーヴェンは3番目のクローンだ」
☆
レイラはふぅと息を吐く。
まんまとしてやられた。
満の力を正直侮っていた。こんな自分の命を武器としてくる人間がいるとは思いはしなかった。
「君を死なせるわけにはいきません。私にはかわりがいる。でも、君はそうじゃない。君は君。たったひとつの命を生きている」
レイラは命に解毒薬を飲ませ、膝をつく。
呼吸が苦しくなり、身体が動かなくなっていく。
「……これで君に生きる理由ができた。私から奪った時間だけでも生きなさい。命の重みを知りなさい」
満。私を殺しても無駄だ。殺しても次の“レイラ”が作られるだけで、何も変わらない。
満が“死”に囚われているのだとしたら、レイラは“生”に囚われている。
銃口が額に当てられる。
「苦しまないように殺してくれるのかい?」
「……毒は苦しい、から」
「……君は優しいね。最期に名前を聞いてもいいかい?」
「佐々羅命」
「“命”か。良い名前だね」
ありがとうと唇が動き、引き金が引かれた。
☆
あの日のことは今でもよく覚えている。
美しい金色の髪がキラキラと輝いていた。
いつも偉そうな湊が頭を下げていた。
珍しいこともあるもんだと思ってじっと見ていた。
「ーー生きていることは辛いかい?」
「辛くはないよ。楽しくもないけどね」
「覚えいて。私は君やほかの子たちが
自由に生きられる世界にするよ、絶対に」
綺麗事を言うやつだと思っていた。
それがレイラとの出会いだった。
レイラは何度も訪れた。
外の面白い話を手土産に。
「僕の勝ちだね。どうか安らかな“死”があなたを少しでも癒しますようにーー」
違う形で出会っていたらきっと友人になれていたであろう彼女のことを思いながら、満は黙祷を捧げた。
ーー3rdの死亡を確認。4thの作成を開始します。
パソコンや機械に囲まれた無機質な部屋に電子音声が告げる。
「お疲れさまでした。今回もありがとう」
彼女は黙祷し、四人目の姿を見上げた。
レイラは病のため床に伏している。
酷いことをしていると思う。クローンだって命があり、したいことがあるだろう。
それをねじ曲げ、自分は好き勝手にしている。それでも守りたいものがあった。
「今度は少し趣旨を変えてみましょうか。私が死んでいたほうが満を騙せるでしょうし」
カタカタとプログラムを書き換えていく。
本人には了承済みだから問題はないがきっとこれは彼女の気に障るだろう。
「ーーおかえり、××」
久しぶりに姿を見た彼にレイラは笑う。彼はまだ形ができたばかりで人工羊水の中で目を閉じている。
ーーもし僕が死んだら、あなたと同じようにしてください。倫理に背いても叶えたい願いがあるんです。あなたの痛みを分けてください、レイラーー。
☆
「レイラを殺してきました」
そっと告げる命に満はにこりと笑う。
「弱点は効いたみたいだね?」
「はい。驚くほど効果的でした」
「レイラは優しすぎるんだよ。それを利用されるのは気の毒ではあるけどね」
カタリと部屋のドアで物が落ちる音がした。
「レイラを殺したの?ねぇ、満。その子は誰……?」
「そんなところにいないでこっちにおいでよ、雫」
「……質問に答えて!」
「……僕は下がったほうが良いでしょうか?」
「君はこのままいて」
雫は満へと近づいていく。
「彼は佐々羅命。立花研究所で拾ってきた僕の部下だよ。表立って動けない仕事を任せてきた子だよ」
「あたしが動くって言った!」
「そうだね。でも、雫は誰も殺せない。違うとは言わせないよ。雫の能力ならとっくに政府の奴らを全滅にできてる」
「……そんなこと!」
「ない、とは言えないでしょう?別に責めてるわけじゃないんだ。雫ができないなら他の人がすれば良いだけのことだよ」
「レイラが死んだってのは本当?」
「本当だよ。今回の仕事はレイラを殺すことだったから。もう後戻りはできないよ。雫、君は本当に人を殺せるかい?無理強いはしない。無理だと言うなら、一足先に二人で暮らすための家を用意してあるからそこで待っていて欲しいんだ」
ぎゅうと満は雫を抱き締める。
「雫に悲しい思いはさせたくない。だからゆっくり考えて。雫が決めた答えを僕は責めたりしないし、否定もしないから」
愛しそうに満は雫にキスの雨を降らせ、離れる。
「命、行くよ」
「はい」
「どこに行くの?」
「“鍵”を連れてくるんだよ。ちょうど揃っているみたいだからね」
去っていく背中に手を伸ばそうとする。
でも、今の自分に何ができる?
何も出来ない。
殺す覚悟も殺される覚悟もない。
ベッドに身体を投げ出す。
涙がぼろぼろと溢れる。
満。
ねぇ、大好きだよ。
ふたりでいたいと思うよ。
でもね、思うんだ。
すべての人間が悪いわけじゃないんだ。
だから。
あたしは誰も殺したくないし、満にも殺してほしくないんだよ。
なら。
自分がすることはひとつ。
好きだから。
大好きだからこそ。
止めるんだ、満をーー。
☆
「よくここがわかりましたね」
カツンと響いた足音にレイラが目を向ける。
「なんで生きてるの?満が殺したと言ってたのに」
「あなたならなんとなくはわかっているでしょう?だからここに来た」
「確信はなかったよ」
ぐるりと研究所を見回す。と、そこに見知った顔を見つけ雫は駆け寄った。
「彼も望んだんです」
「クローンになることを?」
「人間を救うために、と。あと、あなたを助けるために、と」
「……あたしのため、に?」
ゆらゆらと雫の瞳が揺れる。
「あなたがここに来たということは、心を決めたのですね?」
「満を止めようと思う。大切に思うからこそ酷いことをさせたくないんだ」
「よく決心してくれました。クローンの彼をあなたに託します。今度こそ道を違えないで」
羊水が排出され、ごぼりと口から吐き出される。一糸纏わぬ白い身体を抱き止める。ゆるゆると目が開き、大好きだったアメジスト色の瞳が見えた。
「……し……ずく……?」
「雫だよ。長い間待たせてごめん」
「……僕は……死んだんだね…?」
「今の香月はクローンだよ」
「……そっか……レイラ、ありがとう」
「いえ。いろいろと背負わせてしまってすみません」
「僕が望んだことだから大丈夫です」
「後は頼みました。私はもう口を出すだけで、自由に動けません。満は私が死んだと思っています。あなたが生きているとも思っていません。隙をつくチャンスです。あなたと雫ならきっとうまくいきますよ」
「真澄はどうしていますか?」
「あなたの遺言を叶えようと私の元を去りました」
「僕の遺言……?」
「雫を助けて、と。私は正直に言いますが雫を消す決断をしていたんです」
気まずそうに話すレイラに雫は気にしないでと返す。
「香月、まずは真澄に会いに行く?」
「ううん。目的は満だろう?目指す先が同じならまた出会える。満たちの行動は?」
「“鍵”を迎えに行ってる」
「まずはそれを阻止だ。確か秋が一緒にいるんだよね。連絡は取れるのかな?」
「秋があれを外してなければ可能だよ」
じゃあ連絡してみると香月が動く。
『ーー秋、聞こえる?時雨を奪いに満が動いてる。そこから逃げるんだ』
『え……その声は香月、なの?』
『そうだよ。詳しくは合流してから話すよ。場所は地図を添付するから。急いで』
『……っ!わかった!』
「レイラ、行ってくる」
「あんた、あたしに迷いがあると知って真澄を近づけたな?」
「さて、どうでしょうね。ただ真澄の純粋さの前では嘘はつけなくなりますが」
「食えない奴」
「それはお互い様です」
「香月。一緒に行こう!」
「うん!うん!」
涙ぐむ香月に雫が笑っていた。
「血液の検査が終わった。香澄の情報と医学的な情報をあわせて謎を解いていく」
「なぁ、それって俺の仲間にも聞かせて大丈夫なやつ?」
「大丈夫だ。むしろ知りたいんじゃないかな」
真澄は頷くと仲間たちへと連絡を繋げた。
『こちら真澄。みんな今どうしてる?元気にしてる?聞いて欲しい話があるんだ』
『こちら秋。俺は無事だよ。時雨を満たちから逃がすために動いてるけど、話を聞く分には問題ない』
『こちら大樹。鏡夜と共にいるよ。話を聞きたい』
『こちらレイラ。話を聞かせてほしい』
返事があることが嬉しくて、へへと真澄は笑う。
『みなさん、はじめまして。真澄の協力者の時任香澄です。情報を調べさせてもらいました』
『同じく協力者の相楽心です。俺は研究者だから知ってる人もいるかもしれません。香澄の情報と俺の知識から導きだした答えを今から話します』
ふうと心は息をつく。
『珍しい双子がいました。生まれつき特殊なウイルスを持っており、彼らを生んだ母親が感染し、そこにいた医師や看護師、父親を殺しました。母親もウイルスに犯され命を落としました。両親を失った不吉な双子を引き取る親族はおらず、孤児となりました。ふたりの名前は神代結羽と神代結希。弟のほうは現在、立花秋と名乗っています。引き取り手も見つからず、不気味なふたりは安楽死をさせられようとしていました。そこに目をつけたのが立花研究所でした。困っていた病院はすぐさま研究所に双子を引き渡しました。血を詳しく調べてみると双子でも血の性質が違うことがわかりました。特に結羽の血は恐ろしい性質ーーウイルスの活性化をもち、活性化したMIPVを持っていました。研究所たちは恐る恐るそのウイルスを調べますが感染して研究者同士の殺しあいとなり、怖くなった彼らはまだ幼い結羽を捨てました。残された秋の血はあらゆるウイルスに抗体を作れるという、新薬を開発できる可能性のあるものでした。だが、研究者たちは忘れていた、いや、失念していたのです。結羽と秋は一緒に生まれています。秋もMIPVに感染しており、自分の血の力により発症を抑えているのでした。少しずつ広がる感染の中、秋を引き取りたいと願い出た研究者がいました。彼女の名前は雨宮雫。彼女についていき、秋はどんどん人間らしくなっていきました。それと同時にMIPVもじわじわと感染していったのです。なんの因果か結羽は雫の兄である湊に秘密裏に拾われ、こちらも感染が進んでいました』
『ーーつまり彼らに関わる人間は感染者だったんだね』
雫の声に何人かが息を飲む気配がした。
『お久しぶりです、雫さん。感染に気づいていましたよね?』
心の言葉に雫はうんと頷いた。
『MIPVの感染ルートは血を主にする体液です。HIVと非常によく似ています。ただ違うのはMIPVは酸素に触れても生きることができ、感染率が高いのです。おそらく最初の感染者は雫さんと満さんです。結羽さんと秋さんは元々ウイルスを持っているので感染者とは別の扱いです』
『その通りだね。最初の感染者はあたしたちだ。症状は酷いものだった。お互いを殺そうと何回したことか』
『彼らが無事でいられたのは、ひとえに研究者だったからでしょう。持ち前の才能で抗体を作り出し、ウイルスを克服しました。そこでこう考えるんです。“こんなウイルスが広まったら一体どれくらいの人間が殺せるんだろう”、と』
息を飲む音が聞こえてくる。
『心はまるでみてきたように語るね。その考えに辿り着いたあたしたちはウイルスを改良した。より感染しやすいように』
『二種類作ったでしょう?ばらまく用と、実験用と。どこにばらまいたのか考えました。誰もが使い、最も効率が良いもの』
『その答えは?』
『水道です。水は料理に使う。料理をしない人でもお風呂に使ったり、顔を洗ったりする。強くなったウイルスは生き残り、傷口から侵入し感染するんです』
『当たりだよ。βはじわじわと感染させるタイプにしたから発症までが遅い。発症しても穏やかで、殺人にまで至らないこともあるけど人間関係を壊すのにちょうど良い』
『実験用は真澄たちに使ったものですね?特定の相手を狙って感染させるもの。対象の遺伝子を組み込み、狙う』
『αはそう作ったんだよ。発症も激しいものにした』
『最初のターゲットは椿遥人。警察の様子を見る目的と、ターゲットたちと接点を一番持っていたから彼が選ばれました。彼に感染したウイルスには妹である、雨音と関わりのある結羽、雨音の友人である秋、その上司である真澄、香月、鏡夜、大樹、レイラ、遥人の友人である時雨をターゲットとし、作られていました。頃合いを見て、ウイルスを活性化させ彼らに殺しあいをさせ、雨音、香月、鏡夜、時雨を殺しました。イレギュラーで時雨は死にはしなかったですが』
『αはね、人を殺しても死なないんだ。死ぬのはβの方。だから時雨が遥人を殺しても時雨は死ななかった。けれど、生き返ったのはあたしも予想外だった』
『雫さん。あなたは少しずつヒントを残していました。私が気づくくらいの小さな小さなヒントを。……あなたは最初から望んでいたんですね。私があなたを止めることを』
『……そうだよ。人を憎んだことは確かにある。けどね、あたしはそれ以上に人間が好きだから』
『αとβを掛け合わせて、ウイルスを完成させるんでしょう?』
『そうだよ。βは満が、αはあたしが持っている。あたしは満を止めたくて、離れてきたんだ。あと、時雨のイレギュラーが邪魔になる。満から時雨を守らなきゃいけなーーっ!』
雫の声に雑音が混じる。
『君も僕を裏切るのかい?』
凍てついた声が聞こえる。
そこには時雨を追いかけていったはずの満の姿があった。
『雫さん!?大丈夫ですか?しーー』
ガチャンと無線は壊される。
「ねぇ、雫。君は誰の味方なの……?」
凍りついた瞳がゆっくりと雫にナイフを振り下ろし、避けることを拒んだ身体から血がぼたぼたと落ちた。
「どうして避けないの……?」
傷つけた本人のほうが痛そうな顔をしていた。
「だって、これが満があたしに伝えたかったことなんでしょ?」
「何を言ってるの?バカなの?軽傷じゃないよ?死んじゃったらどうするつもりなの?」
「あたし、満になら殺されてもいいよ」
だらだらと出血は止まらない。
「本当はお互いに気づいていたよね。同じ未来を見ていないって、わかってたよね。お互いを傷つけるのが怖くて、側にいられなくなることが怖くて、知らないふりをしてた。好きだからって言い訳して進むことをしなかった。あたしは満が裏で何をしていたかも知ってたよ。あたしの心変わりを防ごうと秋や香月を殺そうとしてた」
止血をしようとする満を雫は拒む。それどころか自らの手で更に傷を深くする。
「あたしは誰の味方かって聞いたよね。あたしは昔も今も未来もずっと、生まれ変わったとしても満の味方だよ」
くらりと眩暈がし、香月がその身体を支える。
「味方だからこそ、愛してるからこそ、間違いを正そうと思った。ぶつかることはわかってた。でも、ぶつかって、お互いの醜い本音聞いて、それで良くなるならそうしたいと思った。今回は譲らない。もう終わりにしよう。憎しみは何も生まない。ねぇ、満。今の自分の生き方を姉さんに見せられる?姉さんが笑ってくれると思う?姉さんが願ってくれた幸せの形はこんなんじゃない、絶対に」
熱く感じていた身体が寒くなってくる。おそらく血を失いすぎているせいだ。
「選んでよ。あたしの命か、復讐か」
「……お前はずるい!死にそうな雫を僕が放っておけるわけないだろ!」
「じゃあβを渡して」
のろのろと差し出された小瓶が渡された。瓶を受け取ると雫はニッと笑う。すぐさま、止血が行われる。レイラと香月がすぐ輸血の準備をする。満は服が血で汚れることも気にせずに、ここに雫がいるのを確かめるように抱き締めた。
カツカツと靴音が響き、雫に襲いかかる。
揃った瓶を嬉しそうに眺め、にやりと笑う。
「ーーままごとは終わりましたか?」
愛だの何だの下らないと嗤う声がした。
え、とその場が凍りつく。
「甘いんですよ、雫さん。私の過去を知りながら私が人間側につくと思っていたんですか?満さんもどんどん雫さんに絆されていって、正直期待外れでしたよ」
睨み付ける香月に結羽は笑う。
「私を怪しんでいたのはあなただけでしたね」
「えぇ。あれだけ設備や知識がありながら何も結果を出さなかった。有能なあなたらしくありませんでしたよ」
「香月を手放したのがあなたたちの敗因です」
スッと結羽は後ろに下がり、窓を飛び出す。落ちる結羽を捕まえたのは大樹だった。
「命!瓶を奪い返せ!結羽と大樹を追いかけろ!」
その言葉ひとつに命は頷き、窓の外に消える。
「雫はここにいて。満さん、雫をよろしくお願いします。今度こそ僕は雫を守ります。満さんのことも守ってみせます」
壊れていない無線機を手に香月は窓の外へと消えていく。
『ーー久しぶり、真澄。時雨を助けに行こう』
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