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2 *勘違いと喧嘩*
しおりを挟む竜人は竜の儀式を受け人から竜に自在に姿を変えられるようになると私は本で学びました。ただ、人の時より2周り大きな竜になるのが一般的だと…だけど目の前の炎竜は許嫁のカイよりはるかに大きくて、初めて間近に見る竜の存在感に圧倒されて、カイではない別の存在だと私は認識したのでした。
◆
普段私は両親と王都で暮らしています。住む場所がお互い離れているからカイと会えるのは花祭りの時期にお爺様の領地に遊びに行くときだけ。彼が無口で無愛想になったのは『山脈の竜を治めるのが大変だから。』そう感じた私は、彼の役に立ちたくて魔導士になりました。
18歳を迎えた特別な花祭り。私は馬車でお爺様の屋敷につくと、着替えをするために部屋へと案内されました。
桃色のワンピース。黄色と白の花冠と首に掛かるのは紅い大粒の牡丹の花の連なるネックレス。私はカイと特別な発表があるからと華やかに飾られ、外に待つ馬車にのり、お爺様と街にむかったのでした。
街で両親が先に来てまっていて合流し、向かった先の街の中央にある庭園の開けた芝生の広がる場所に燃えるように紅い鱗を纏う強靭な肉体を持つ大きな炎竜が待っていました。
花祭りのこの日、庭園に向かう道の両サイドも花が彩り、空に花火が打ち上がり、その最中にお爺様は言いました。『ルイを嫁に迎えるのもまもなくだね……くんの御披露目であり、ルイの嫁入りの発表でもあるんだよ。』と。
根っからの天然な私は、その時名前が聞き取れず、目の前の想定外のサイズの炎竜にカイを重ねることができずに、彼を前にしてお爺様に訴えました。
「私はカイの許嫁ではないのですか?目の前の炎竜様は彼より遥かに大きいのではないですか?」
お爺様は深くため息をつき、炎竜は私を睨むようにして口から火を吐く勢いで雄叫びをあげたのでした。
「ぐあおぉぉ~!!僕はカイだ!!」
「えっ。」
驚く私を前に炎竜は私に急接近して唸るような声で言いました。
「君は昔から変わらないな。僕は君を嫁に迎えるために守れるように強くなると誓った無邪気に遊んでいたあの頃、君はなんて返したか知ってるか?」
「それは…」
「僕が守ると誓った覚悟を聞き流して、私も強くなる!魔導士になるっ。だから安心しろと言ったよな?」
「うん…」
「守ると誓った僕に何故喜んでくれなかったの?僕が頼りないと思ったの?」
「そういう訳じゃないの。大変だと思ったから…」
「想像だけだろ?」
「会うたびに僕を同情するような目をして、花祭りの貴重な日を楽しみにしていたのに…君はどうしていつもそうなんだあ~!」
ルイは顔を紅くし、小さな自分より遥かに大きな竜に牙を向けるように怒っていた。
「そんなことわからないわよ!私だって役に立ちたいもの!私は弱い人間になりたくないもの!なんでもっと早く言ってくれなかったの?私賢くないからわからないもの!」
私は興奮して自然と魔法を発動し突風を起こして彼の頬を突風が掠めてしまった。
「同情じゃない!あなたが竜人の儀式でこれなかった花祭りの日、山脈を小さな竜が暴れていたのよ!遠くからだから色もわからなかったけど…あんなの目にしたら、カイを心配するでしょ?山脈は竜の巣が何ヵ所もあるんでしょ?守られるだけじゃいられないでしょ!私だって…誰かを守りたい!わたしを否定しないでよ!」
私は泣きながら何発か突風を発動し、彼の頬を一発掠め、2発目はもろに鼻を直撃し、カイは目を丸くしていた。
私はその場に丸くなるように座り込み顔を伏せ泣きじゃくった。
「カイくんすまないね、ルイはカイくんがここまで強くあるために竜体を鍛えたことを知らないようなんだ、悪く思わないでおくれ。ルイは勉強熱心でね、18歳の竜人の竜体サイズを本で読んで記憶していたのだよ。カイくんはそれより遥かに大きくなった。どうやらルイは…規格外のサイズに現実を受け入れられなくなったのかもしれない。カイくん、ルイは君と共にあるために強くなろうと両親と同じ魔導士になった事はきっと君の負担を減らすことになる。助けになるはず…どうか、ルイの気持ちを受け止めてはくれないかね。」
「…わかりました。」
カイはそう、小さな声で絞り出すようにお爺様に答えたのでした。
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