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第1章・婚約

19.

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 数日休暇をとったルルは、両親とエイト国へ馬車でむかった。

 エイト国の王都にヒカリの住まいがあり、父ラパスと母クランと共にルルは屋敷の門をくぐると馬車は止まった。

「ルルはお嫁に行くのね。」

 馬車のなかで母クランは寂しそうに告げ…ルルはゴニョゴニョと口を開いた。

「母様…エイト国に住まなくても良いそうです…転移の魔法があるから…」

「あら、素晴らしいわぁ!エイト国は魔法の国だと聞いたことがあります。皆さんにお会いするのが楽しみね。ふふふ。」

(母様は年を重ねていても…少女みたいで可愛らしい。私は将来どんな風に年を重ねていくんだろう…想像できない…ハハハ。)

「住まいや結婚を何時にするかはこれから先方としっかり話し合うことにしよう。」

 父ラパスは威厳たっぷりに…眉に皺を寄せて…強がって見せていた。

(例え竜ビトだろうが軟弱な奴なら反対してやる!)

 そんなことを考えていた。

 馬車が止まり屋敷に入れば…王族と地位が近い一族なのだろう…エイト国の椿の模様が壁一面に広がっていた。

 レイス一族の家長は父親がなき今、ヒカリがなっていた。

 出迎えた執事に部屋を案内された。

「ようこそレイス家へ。ルル・クラシン様とご両親様ですね?」

「あ、ああ。」

 ラパスは元はナクシス国の第三王子で、結婚当初…子供たちが小さい頃まではナクシスの家名を語っていた。

この国の慣習で王太子に男子が生まれ…太子が王位を継承した。

 太子以外の兄弟は名を変えるのが決まりとなっていて…現在は家名をクラシンと改名したため…未だなれずにいたのだった。

 執事が、背を向け歩く姿には違和感があった。

人間にはない、竜の尻尾が揺れていたからだ。

 三人は客間に通され、出されたお茶をのみながらヒカリたちが現れるのを待っていた。

 窓の外を見れば、上空を竜が飛び交い…クランとラパスは未知の世界に足を踏み入れたようで…ソワソワと落ち着けずにいたのだった。
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