誇りと傷痕

yu-kie

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 私…坂梨サカナシ 津香咲ツカサ当時6歳、小学校の帰り道だった。

 集団下校で並んで歩いて帰る途中、歩道橋を超えると右側にはスイミングスクールの建物、左側には建設中の建物。

 左側に向かうのはこの集団の中では列の前の方を歩く私と列の最後尾の方を歩く男子が一人。私は皆と別れ左側に向かって歩いた。

 その先には3歳くらいの可愛い女の子がお母さんらしき大人と歩いていて、女の子は突然走りだした。

 ふわふわ揺れるワンピースのツインテールの女の子にみとれていたら、その子は私の後ろを歩く男の子に向かって走り出して、私の目の前で躓いて私は思わずキャッチした。

 そこは丁度、柵に囲まれた建設中の建物の横。建設現場の柵から伸びるクレーンがみえる。鉄骨を吊り下げたクレーンが突風を受け鉄骨は揺れから不安定に傾き落下した。

 私は女の子の手を引っ張ってそこから逃げようとしたけど、女の子は泣き出して動かなくて、私はこの子に被さるようにした。鉄骨の端が私の背中をかすめた。

 背中に強烈な電流が流れたみたいに激しい痛みが全身を駆け巡り、私はその場に倒れた。

「わあ~ん!お姉ちゃあ~ん」
「「きゃあ~!」」

 駆け寄る無数の足音。

 私の間近に感じる沢山の人のざわめきと悲鳴。

「女の子は…大丈夫?」

 駆け寄った同級生の男子に私は聞いた。

「妹は怪我してない。」
「そう…なん…だ。」

 私は安心したら視界が真っ暗に。

 そのまま私は意識を手放した…。

 駆けつけた母と一緒に私は救急車で病院へ。

 退院してからも女の子の名前も、男子の名前も…誰かもわからないまま会うことも無かった。

 長い年月が過ぎ

 私は高校を卒業し

 今年デパートに就職した。

 背中に長く伸びる傷痕は消えず、母は一時期可哀想だと泣いたけど…

 私には名誉の負傷であの可愛い女の子を守った誇らしい傷痕なのです。

 私の社会人生活は始まったばかり。職場の皆と仲良くしてゆけたらなっ。

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