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〔4章〕将来
厳つい恋人。
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その人と、通路で鉢合わせした私は…身震いした。
おじさんはにたりと笑い近づいてきて…通路そばにあった流しで洗い物をしていたのだろう、腰に巻いたエプロンで手を拭いて静かに立ち去ろうとした私の前に立ちふさがった。
人気のない出口に繋がる夜の通路は薄暗く、すぐ先の出口には警備の人がいるのだけど、壁の角に引っ張られ、壁ドン状態に。
黒い鞄からは、スマホが着信を知らせる音楽をならし、私が取り出そうと手を伸ばせばその手首を捕まれ、鞄が落ち…鳴り続けた着信音が途絶えてしまう。
「離してください、なんですか!やめてください!」
「いやあ~、制服姿もいいけど、私服はもっといいね。俺も今仕事終わりなんだよ。ご飯に行かない?」
「行きません!彼氏が待ってるんで。」
私は手を振り払い背を向ける立ち去ろうとしたら、背後から手が伸びて…羽交い締めにされかけてもみ合いに、足を滑らせ尻もちをついたら、面白がるように見下ろすおじさんは気持ち悪くて…
出口側に背を向ける状態で尻もち中の私の足元にしゃがみかけたおじさんが私の後ろなにかを見て固まる。
私は這いつくばり、鞄を広い散らばった荷物をかき集め、後ろに転がったスマホに目をやり拾おうと手を伸ばす。
背後に見なれたおっきな手が伸びてスマホを拾ってくれた人。見上げれば、以前より強面な顔がパワーアップしていて…殺気を放ちおじさんを睨み据える。
「おっさん、何してくれてるんだよ!俺の彼女に!」
「あ、圭樹さん。」
「警備員さーん大変です、来てください!」
「はい?どうしました?」
警備室から二人、出てきた警備員に、圭樹さんはおじさんを指差す。
「彼女襲われたんです、この人に!上の人に言った方がいいんじゃないですか?」
「ちょっと警備室にきてもらえますか?話を。」
おじさんは圭樹さんの睨みに固まったまま、警備室に連れられた。
「彼女にも話を聞けますか?」
「わかりました。」
私は立ちあがり、圭樹さんが鞄を持ってくれ、腰に手を回して支えてくれた。
しばらく警備室に缶詰になり、売り場責任者が呼び出され、おじさんは叱られ、その後の処遇を考えることになった。
何かされなければ警察は動かない。だけど、されてからは遅いのだ。
圭樹さんが見つけてくれて警備の人を呼んでくれた。
おじさんは出禁か何らかの処分をされるだろう。防犯カメラに不鮮明だが残された証拠。
気の迷いで気づかなかったのだろうカメラの存在。
証拠の残らない場所だったらと思うと鳥肌がたつ。
「帰ろ?」
「うん。」
二人仲良く私の小さな住まいに向かった。
おじさんはにたりと笑い近づいてきて…通路そばにあった流しで洗い物をしていたのだろう、腰に巻いたエプロンで手を拭いて静かに立ち去ろうとした私の前に立ちふさがった。
人気のない出口に繋がる夜の通路は薄暗く、すぐ先の出口には警備の人がいるのだけど、壁の角に引っ張られ、壁ドン状態に。
黒い鞄からは、スマホが着信を知らせる音楽をならし、私が取り出そうと手を伸ばせばその手首を捕まれ、鞄が落ち…鳴り続けた着信音が途絶えてしまう。
「離してください、なんですか!やめてください!」
「いやあ~、制服姿もいいけど、私服はもっといいね。俺も今仕事終わりなんだよ。ご飯に行かない?」
「行きません!彼氏が待ってるんで。」
私は手を振り払い背を向ける立ち去ろうとしたら、背後から手が伸びて…羽交い締めにされかけてもみ合いに、足を滑らせ尻もちをついたら、面白がるように見下ろすおじさんは気持ち悪くて…
出口側に背を向ける状態で尻もち中の私の足元にしゃがみかけたおじさんが私の後ろなにかを見て固まる。
私は這いつくばり、鞄を広い散らばった荷物をかき集め、後ろに転がったスマホに目をやり拾おうと手を伸ばす。
背後に見なれたおっきな手が伸びてスマホを拾ってくれた人。見上げれば、以前より強面な顔がパワーアップしていて…殺気を放ちおじさんを睨み据える。
「おっさん、何してくれてるんだよ!俺の彼女に!」
「あ、圭樹さん。」
「警備員さーん大変です、来てください!」
「はい?どうしました?」
警備室から二人、出てきた警備員に、圭樹さんはおじさんを指差す。
「彼女襲われたんです、この人に!上の人に言った方がいいんじゃないですか?」
「ちょっと警備室にきてもらえますか?話を。」
おじさんは圭樹さんの睨みに固まったまま、警備室に連れられた。
「彼女にも話を聞けますか?」
「わかりました。」
私は立ちあがり、圭樹さんが鞄を持ってくれ、腰に手を回して支えてくれた。
しばらく警備室に缶詰になり、売り場責任者が呼び出され、おじさんは叱られ、その後の処遇を考えることになった。
何かされなければ警察は動かない。だけど、されてからは遅いのだ。
圭樹さんが見つけてくれて警備の人を呼んでくれた。
おじさんは出禁か何らかの処分をされるだろう。防犯カメラに不鮮明だが残された証拠。
気の迷いで気づかなかったのだろうカメラの存在。
証拠の残らない場所だったらと思うと鳥肌がたつ。
「帰ろ?」
「うん。」
二人仲良く私の小さな住まいに向かった。
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