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〔1章〕好きの始まり。
戸山さんの友達の店。1
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次の日の夜、私は仕事が終わり更衣室を出るところ。
スマホの着信に慌てて出れば、元カレの声が電話越しに聞こえてくる。
画面をちゃんと確認してれば、出ないはずの着信。嫌なことばかりが頭をめぐる。
着替えは済ませていたが…
「久しぶり、こんやどぉ?」
軽すぎる発言に行くわけがないこと、そして今日は大事なようを控えてるからと一方的に電話を切った。
気持ちはどんより、重たい足取りで、目の前にある裏口から出れば…
裏口側の柱の影から、ひょっこり現れたのは戸山さん。
笑顔じゃなくてただ見下ろされただけなのに、目から涙がじんわり。
涙顔が見せれなくて下を向けば、戸山さんが私の背中を押して静かに歩き始めた。
私は下を向いたまま、彼が私のてを引いて、なにも聞かず…
「店は僕の友人が板前してる和食やさんですよ~美味しいもの食べれば元気が出ますよ、きっと。」
「…はい。」
もしかしたら、会話…聞こえていたのかな?だったら恥ずかしい。
あの距離だ、聞こえてないはずがない。ああ~!何してんだ私は!
つい、戸山さんが引いてくれるその手に力を込め、彼が握り返してくれた。
偶然が必然か…
だけどなぜだか体が熱くて…必然であってほしいと願い、空いた手で涙をぬぐい、前を向く。
心配そうにちらりとこちらを向く戸山さんの優しさが嬉かった。
「着いたよ!」
促されて手を繋いだまま店に入れば、店長さんと戸山さんが手を振り奥の座敷に案内された。
こうして私たちは座敷にあがり、食事をした。
スマホの着信に慌てて出れば、元カレの声が電話越しに聞こえてくる。
画面をちゃんと確認してれば、出ないはずの着信。嫌なことばかりが頭をめぐる。
着替えは済ませていたが…
「久しぶり、こんやどぉ?」
軽すぎる発言に行くわけがないこと、そして今日は大事なようを控えてるからと一方的に電話を切った。
気持ちはどんより、重たい足取りで、目の前にある裏口から出れば…
裏口側の柱の影から、ひょっこり現れたのは戸山さん。
笑顔じゃなくてただ見下ろされただけなのに、目から涙がじんわり。
涙顔が見せれなくて下を向けば、戸山さんが私の背中を押して静かに歩き始めた。
私は下を向いたまま、彼が私のてを引いて、なにも聞かず…
「店は僕の友人が板前してる和食やさんですよ~美味しいもの食べれば元気が出ますよ、きっと。」
「…はい。」
もしかしたら、会話…聞こえていたのかな?だったら恥ずかしい。
あの距離だ、聞こえてないはずがない。ああ~!何してんだ私は!
つい、戸山さんが引いてくれるその手に力を込め、彼が握り返してくれた。
偶然が必然か…
だけどなぜだか体が熱くて…必然であってほしいと願い、空いた手で涙をぬぐい、前を向く。
心配そうにちらりとこちらを向く戸山さんの優しさが嬉かった。
「着いたよ!」
促されて手を繋いだまま店に入れば、店長さんと戸山さんが手を振り奥の座敷に案内された。
こうして私たちは座敷にあがり、食事をした。
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