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〔1章〕好きの始まり。
待ってましたよ深雪さん。
しおりを挟む夜の9時、スマホを睨み10分経過。
私は勇気を振り絞り発信ボタンを押した。
発信音に耳を澄ませ深呼吸。直後に彼の声がスマホから聞こえた。
「もしもーし、坂津深雪さぁん。」
「あ、坂津です。戸山さんお、お久しぶりです。」
「僕、嫌われたかと思いましたよ。」
戸山さんはスマホの向こうで笑っているよう。あの笑顔が思い浮かび胸が熱くなってくる。
「嫌いじゃないです…むしろ…、」
わっ、まずっ!告白しそうだったよ!こんな早々にショックを受けたくない。なにから話そう、なに聞こう。
「戸山さんはもう帰宅されてるんですか?周りに雑音がしないから…家?」
「今日は早く帰れたからゲームしてましたよ。坂津さんはどうしたんですか~?」
「あ、聞きたいことあります。戸山さんに私が電話しても大丈夫かどうかなんですけど…交際してる人が見えるならわたし、電話しない方がいいかと思うんですが…」
「ああ。いませんよ。いつでも電話ください、まあ、仕事中は困りますけど…」
「そうなんですね、良かった。あの、たまには一緒に食事に行きませんか?仕事後とか。」
「深雪さん、明日はどうです?」
え、今、名前普通に呼ばれたんですけど…なんで?
「はい。」
私は短く答えると、戸山さんが聞いてきた。
「深雪さんって呼びますね、彼氏とかいたりします?いるならしたの名前で呼ばない方がいいかな?ハハッ」
「いません!私は何て呼べば?」
「圭でも圭樹でもいいよ。」
「誤解されたりしませんか?」
「固いね、深雪さん。お互いフリーなんだから気にしないで。」
「はい。」
そのあとは段々と近況やら話せるようになって、一時間は話し込んだかもしれない。
こんなに打ち解ける異性なんて私には今まで巡り会えなかったから新鮮で。うれしい。
…明日がたのしみだ。
電話を切り部屋の明かりを消す。
私は布団をかぶり、にやけがおで就寝したのでした。
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