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恩返し編

7話・猫から一旦魔女で居ます。

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 リュイが動揺している最中、戦いは始まってしまった。狼族の兵達は強靭な肉体で俊敏に動き討伐隊は苦戦していた。

 ダクラはハリスの剣の一振りに拳で応戦し、剣を片手で握り睨みあいが続いた。

「くそう。」
「しぶとい奴だな。だが油断したな。」

ダクラがハリスの剣を受けたまま空いているてを伸ばせばハリスも空いている手でダクラの手を掴み、腕の痛みで負傷していたことを思い出したが、あとに引けず痛みに耐える様子に、ダクラはニタリと笑みをこぼすとその口を大きく開けた。

「隊長ー奴の挑発にのっては行けません!隊長ー!」

 ハリスの後ろにいた討伐隊の一人がハリスを案じて叫んでいた。

「愚かな人間よ。俺の武器はまだここにもあるんだよ?」

ダクラは牙を向き大きく口を開け、片腕を負傷しているハリスは逃げようとその手を離そうともがくなか、ダクラの牙は首もとへと勢いよく接近する、しかし同時に金色の光に辺りは包まれ、ハリスはスッとダクラの手から消えた。



リュイは脳裏に浮かぶ居心地のよい日々を振り返った。
(私は猫のままでいたかったけどやるしかない。魔王様の敵になるかもしれないけど恩人様を失うのは…嫌だ。)

 魔王様、ごめんなさい。

 ※

 金色の光の中から現れたのは銀色の長い髪を靡かせる金色の瞳をした、ノースリーブのグレーのワンピースドレスの魔女リュイの姿だった。

 その伸ばされた手は、ダクラの顔を平手打ちし、ハリスはリュイに押されるようにダクラから引き離されていた。

「お前!生きてたのか?」
「久し振り、ダクラ。私はラプスに斬られて池に落とされたの。ラプスから聞いたかしら?」

「ラプスは死んだ。人間に抹消されて、ラプスの配下が魔王様にラプスのもってた剣を返して…それがわかった。怪我をしたわりには元気そうだな。」
「ええ。魔力を奪われて猫になってしまってこの人が私を介抱してくれたの。」

「お前、人間に色仕掛けを?」
「話、聞いていたかしら?猫になっていたの。愛嬌は振り撒いたわよ?色仕掛けには程遠いけれど。」

 緊張感が緩み、ダクラと終始和んでいたが、ダクラとリュイは今の状況を思いだし、険しい表情になり対峙した。

「馬鹿かお前!人間に媚びを売りやがって!」
「ダクラ、私がお前の相手をする!私が勝てば、この場から退け!」

ハリスとダクラの間に現れた、リュイは風を纏へば前髪は靡き、額の四つ葉は金色に輝いていた。

 リュイは躊躇い無く、前髪をかきあげ、額を露にした。伸ばされたその手は、なにもない空間、ダクラに向け文字を描き、攻撃魔法を発動させた。

「勝負よダクラ!火炎かえん竜!」

リュイの手から発動された炎の渦はダクラを飲み込みダクラは火を払い消し、一部の毛を焦がしながら剣を抜いた。

「俺に嚇しは効かない!倒す気なら手加減するな!」

リュイは唇を噛みしめ、針のように細く長い剣を手から出現させると、ステップするようにダクラの手元へ向け剣を振り翳せば、リュイの俊敏な動きに怯んだダクラは剣を持つ手にリュイの剣先がプスリと刺さり、ダクラは柄から剣を離して落としてしまった。

ダクラの剣は地面に刺さるように落下し、ダクラは負傷したその手を抑え地面に膝をつき、リュイの前に項垂れた。

「リュイ、これで別れだ。魔王様にはお前が裏切ったと伝えておく。まあ、我々に不必要な正義感を持つお前に魔王様は悩まされていたから、これで心おきなくお前を倒せるってわけだ。」
「ダクラ様!」

 狼族の1人がダクラに駆け寄り、ダクラは立ち上がると遠吠えのように叫んだ。

「長居はするな!強敵が現れ負傷した、撤退!!」

「ダクラ、どう言うことだ!」
「まだ気がつかないのか?魔王様がお前を遠ざけるようになった理由を?」

 リュイは剣を手の内へと消し、ダクラに詰め寄れば、ダクラはリュイを突き飛ばすように押し退け、小さく呟く。

「その額の光は何故魔王様に嫌われる?何故魔女の印が我らの嫌う光を放つか…それがお前の正体だ。」

リュイは絶句し、立ち尽くすなか、ダクラは群れを率いて撤退。四つん這いになった彼らは地を蹴り軽やかに走り去った。

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