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誘いの森の薬草採取 1/1
しおりを挟む薬草採取をしに…誘いの森へと足を踏み入れた少女が一人。
乳白色の肩まで伸びた髪の右側には猫の顔の形の髪留めが飾られ、衣服は…金糸と白糸で刺繍が施された紺色のワンピースに作業用の深緑のエプロンを身に着けている。
歳は10歳に見えるその少女は採取した草花を、持ってきた篭にせっせと詰め込んでいった。
誘いの森はその名の通り誘い込まれ行方不明になる人が多い森。この森にだけ生息する野草もあり、今では採取しに来る人も減るほど。
「これくらいでいいかな。」
少女は摘み終えた草花でいっぱいになった篭をてに立ち上がると、もと来た道を引き返そうと歩き始めた。
「母さんに持ってゆくのと、商会から依頼受けた分、これだけあれはいいよね。」
すると突然霧が辺を覆いはじめ、茂みから魔獣が現れた。
『見つけた…美味しそうな人間。』
「あっ…お邪魔してます森の番人様。」
少女は怯える様子もなく、巨体の狼姿の魔獣を前に立ち止まり、ワンピースの裾をつまみ小さくお辞儀した。
『我が怖くないのか。』
「はい…私の中で一番怖いのは怒った時の母さんなので。」
『んなっ』
すると、鳥の囀りがあたりに響き渡り、少女の前に金色に光る星を描く魔法陣が出現した。
「も~お目付け役の鳥さんがお母さんに報告しちゃったのね。」
魔法陣から黒い霧の塊が現れ霧が消えると、そこには白いマントを羽織る白銀の長い髪の女性が現れた。
「まだ何もおきてないのに…」
「リゼ…あなたが危ないと知らせが来たのよ、お母さんが来て当然でしょ。」
「番人様は挨拶されただけよ。」
「いや…美味しそうな人間だと…精霊さんが教えてくれたのよ。私の大事なリゼを食べる気まんまんでしょ?」
白いマントの女性は少女の前に立ち、魔獣を前に魔力を解放。体内に封じていた魔力が紫色のオーラとなり辺を覆い…魔獣は目を丸くし後退りした。
『我とて森の番人としての誇りがある!退くわけにはいかぬのだ!!』
「お母さん帰ってください。ここは大丈夫ですから。」
「リゼ?」
「後でお母さんの診療所に行くから待ってて。」
少女は白銀の髪の女性を前に背伸びをすると、両手を伸ばし女性の頬を優しく包み込み笑顔を向けた。
「じゃあね。」
「あっ…!」
すると逆再生かのように再び金色に光る魔法陣が現れ、母と呼ばれた女性は黒い霧となり、魔法陣に吸い込まれ…魔法陣は消えたのだった。
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