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しおりを挟む数日後。リシアとガイアは謁見の間の小さな空間ではなく、お城の中でも特別な儀式に使われる広間に呼ばれていた。
ガイアは正装し、いつくもの勲章を胸につけて胸を張って立つ姿は気迫に満ち、集まった獣人貴族たちはその姿に息をのんだ。隣に立つ一人の人間の少女リシアは小柄だが、ピンクのレースが縁取る白いドレスを身に着け白いベールに顔を隠していた。
「これより、第4王子ガイアとマナ国の第2王女リシアの婚礼の儀を執り行う。」
リシアはベール越しにガイアを見上げながら、数日前の事を思い出していた。
* *
リュアンとアースの話を聞いた日、アースから大事な話だと聞かされた。
『パドン家はリシア王女の暗殺をしようとした。今回ガイアとの仲がはっきりして…更に危険にさらされるだろう。そこで…あなたが人質として今いる現状を良き方へ変えるため…形だけの仮の婚礼を、執り行いたいと思うのだが…どうだろうか。婚約からすぐにガイアの籍に入ることになるが…リシア王女が妻となれば、パドン家は手出しはできない。王に反旗をひるがえすことになるからね。』
『そうですか。花嫁になるのは私の夢でありますが…急すぎて心の準備が…。』
『安心したまえ、公の場で二人が夫婦になった事を知らせる儀式をするだけだからね、すぐに終わる。』
『そう言われるのでしたら…、よろしくお願いします。』
* *
<現実に戻り>
リシアとガイアは、広間の玉座の背に祀られた獅子の石像に夫婦の誓いをたてた。
「聖獣レオに誓いを立てた今正式に二人を夫婦と認める。」
「「ありがとうございます。」」
ガイアとリシアがそう告げ頭を下げると同時に、広間の重厚感のある大きな扉が大きな影により勢いよく開け放たれた。
「殿下は騙されてるのよ!人間なんて!人間なんてぇ~グアアァ~!!」
広間にあつまる獣人たちは逃げまどい、巨体の熊の獣人令嬢が興奮状態MAXの狂化状態で暴れながらリシアめがけ突進。
ガイアは腰に下げた柄を握り剣を抜いた。リシアを後ろに隠し俊敏に動き斬りつけ、それでも向かう熊の獣人令嬢は突進、隙をみて、ガイアの背後のリシアに手を伸ばすと…突如現れた魔法陣のシールドに弾かれてしまった。
「私にお任せください。」
光沢のある滑らかで白く長い毛皮に覆われ、緋色のぱっちりした瞳が愛らしい長身の猫の獣人ユーアが颯爽と現れ、リシアのすぐ隣で手を翳しシールドを発動していた。
「冷静におなりなさい…聖獣召喚!裁きの引っ掻き!」
シールドとなっている魔法陣から巨体の金色の獅子の上半身が出現、ぽんっと全身か飛び出し、太く力強い前足を…弧を描くように振り下ろした。
引っかかれた熊の令嬢は金色の光に包まれ次の瞬間失神し、集まった兵士たちに抱えられ撤収された。
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