~黒炎の騎士の愛玩魔女~

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2・騎士との再会

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《ジルマ国王とその家族が住む宮殿》


 ガゼラ・ジルマは父の書斎に呼ばれていた。

「お呼びでしょうか。」

黒い鎧を身に付けた騎士ガゼラは赤い革張りの椅子に腰掛ける銀色の髪の青く瞳を持つ国王の前にいた。

「遠征から戻ったようだな。」
「はい。」
「宰相が身内からの手紙の内容を自慢げに話してきたぞ。森の魔女リュウは知っているか?」
「彼女は命の恩人です。」
「宰相がその魔女を近日中に王都へ迎えるそうだ。ガゼラ、日にちが決まり次第教えるよう宰相に伝えてある。魔女にドレスを贈ったそうだな…ドレスを着てくるそうだ見に行ってはどうだ?」

 ガゼラは驚き、思わず目を潤ませ、動揺し口角があがっているのを隠すように黒い革手袋をしたその手で口を覆った。

 治療を終え帰還したその日に街の貴族の御用達の店へと足を運び、きっと似合うと思い選んだドレス。それを着たリュウの姿を思い浮かべ、直にその姿がみたいと強く思った。

.*.゚*。*.・..*.゚*。*.・..*.゚*。*.・.

 その日はあっとゆうまに訪れた。

《宰相の屋敷》

 昼過ぎ、街を抜け、富裕層の邸宅が並ぶ区域にやって来た馬車はバイゼン邸の門前に止まり御者が門番に声をかければ門は開かれ、馬車は広い庭園の中央にある道を走り、屋敷の正面入り口前に止まれば、燕尾服のバイゼン邸の執事にてを引かれて幼いながらに華やで可愛らしい少女が現れ、屋敷の中へと姿を消した。

  *  *  *  *

 宰相の屋敷に訪問したガゼラは今、庭園のお茶会に招かれていた。

 テーブルには宰相と、リュウとガゼラの三人が席につき、執事と侍女一人がカップにハーブティーを注いでいた。

 ガゼラは幼いリュウのドレス姿に目を奪われた。

(なんて可愛いんだ!幼女なのに…笑顔も可愛い。こんな美しくて可愛い子は見たことない!)

 リュウは熱い視線に不思議そうに首をかしげ、ガゼラに笑顔を向けた。

「ガゼ、素敵なドレスをありがとう。でも…治療の報酬はもらいすぎなので、お返しをさせてください。」

リュウはポーチから袋を取り出すと、席をたち、ガゼラの隣にくると、その袋を手渡した。

「これは?」
「開けてみてください。」

 袋から出てきたのは銀色の毛を束ね尻尾のようになった物だった。

「剣の柄につけるストラップです。この毛は、魔力を高める作用があるそうです。飾りにもなるからどうかと…」

 リュウはガゼラの顔色をうかがうように上目使いに見上げれば、ガゼラはリュウの掌ごとぎゅっと両手で握りしめた。

「ありがとうございます。」

ガゼラは思わず握ったてをパッと離し幼い姿のリュウに抱いたドキドキに戸惑い、ハーブティーの入るカップに口をつけた。

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