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1・森の奥の薬屋
<1>
しおりを挟む薬を作る部屋の隅にはカーテンで仕切られたベッドがあり、リュウは背負っていた青年をトスンとベッドに寝かせて魔法を解除した。
ベッドの上に軽いものが乗っているようで皺ひとつないシーツは次の瞬間、敷き布団に体がわずかに沈みシーツに皺が寄っていた。
「まずは治療だね。」
リュウはせっせと青年の鎧や服を脱がして上半身は裸。下半身は下着姿。
リュウは骨の形を探るように青年の足をペタペタと触り、骨折や腫れを調べ、軽そうだったので腫れが引くクリームを塗り、薄地の布団をかけ、上半身の治療に取りかかり始めた。
「酷い。魔法を使って傷を最小限に…」
リュウはベッドの横から手を伸ばし、魔力を込めて青年の傷口に向け伸ばしたてから金色の光の粒が傷口に落ちて皮膚へと染み込む。
奏功して1時間、リュウは魔力を使い、体力の消耗から眠気に襲われながら、傷を早く治すためのクリームを塗りガーゼを当て包帯を巻いて、巻ききったところで、青年の肩を枕にパタンと倒れて眠り始めた。
薬品のびっしりならぶ棚、大きなテーブルにはすり鉢と棒、大きな瓶に詰め込まれた薬草がある。
窓からはカーテン越しに、木漏れ日が射し室内を照らしていた。
仕切りのカーテンはリュウが、青年への治療作業中に触れたためか、めくれており、室内に射す光が仕切りのカーテンの隙間から二人を照らした。
リュウは栗色の肩まで伸びる髪を乱し青年にしがみついて眠っていると、青年が先に目を覚ました。
「ん…これは、生きてる。」
青年はムクリと上半身をおこし、ドサッと膝に落ちるリュウは眠たい目を擦り起き上がる。
「いってぇー。」
青年は胸の辺りに走る痛みに前屈みになり、リュウはあくびをしながら一旦起き上がると掛け布団越しに青年の膝にまたがる。
「後2週間はここにいてください。命に関わる傷はもうないですが、完全ではないので、あとは自然治癒力で治す必要があります!敷地内の散策をするのはいいけど、2階は両親の部屋だからいっちゃダメです。」
リュウは体重をかけるように抱きつき、強制的に再び寝かせた。
窓から差し込む光がリュウの顔を照らし、その瞳は赤い宝石のように輝いていた。
「私はここで薬屋を営む魔女のリュウ!こう見えても大人です!だから子供扱いしないでくださいね。」
リュウは膝に股がったまま、胸を張り威張ってみせると、青年はクスリと笑った。
「助けてくださりありがとうございます。僕はジルマ国の騎士。黒炎の騎士と呼ばれている。名は、ガゼラ・ジルマ、ガゼと呼んでください。」
「国へは知らせをしますか?明日なら国からの使者が来るから、手紙渡せますよ?後で紙と筆、用意しますね。」
リュウはぴょんぴょんとベッドから飛び降りるとパタパタと素足で室内を走り部屋の奥にある小さなキッチンでなにやら作業を始めた。
「おとなしくしててくださいね。今スープ用意してるんで、待っててください。」
「…はい。」
青年ガゼはベッドに横になったまま仕切りのカーテン越しに部屋を見回すなか、漂い始めた食欲がそそるスープの匂いに胃の辺りが匂いに反応してきゅる、と音をたて、生きているのだと実感した。
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